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第4章 異能編
和見武志 1
<和見武志視点>
このままじゃ駄目だ。
姉さんが壊れる。
壊れてしまう。
どんな手を使っても、それだけは避けないと!
「……」
姉さんを助けるには、家を出る必要がある。
あの地獄のような家を脱出しなきゃいけない。
できるだけ早く。
可能なら年内に。
それなのに、もし僕が捕まったら?
今ですら限界に近い姉さんは?
「……」
姉さんは本当に良く頑張っている。
頑張り過ぎるくらい頑張っている。
もう充分。
これ以上は必要ない。
姉さんは家を出るべきなんだ。
けど、姉さんは和見家から離れようとしない。
もう大学生なんだから、可能なのに。
あんなに辛い目にあって、いつも苦しい表情をしているのに。
どうして?
姉さんに理由を聞いても僕には教えてくれない。
ただ静かに微笑んで、家を出ることはできないと答えるだけ。
和見家で、もう何年も酷い扱いを受け続けているのに。
「……」
だから。
僕が助ける!
姉さんが自分で家を出ないというのなら。
僕が連れ出してやる!
それだけだ。
ただ……。
そう決意しても、僕には力もお金もなかった。
姉さんを助ける術なんて何も持っていなかった。
この異能を手にする前までは!
「……」
あの家に歯向かうのは簡単なことじゃない。
とんでもなくいびつで歪んでいる和見家。
それでも、持っている力は絶大だ。
和見家の資産や権力は並じゃない。
そんな大きな力を持つ和見家の当主である父さんに、高校生の僕がどうやって立ち向かうというのか。
僕ができることなんて……。
そう思い嘆いている間にも、姉さんの状況は悪くなるばかり。
僕は自分の無力さに押しつぶされてばかり。
そんな日々を送っていたある日。
僕に天からの恩恵が与えられたんだ。
それは異能。
結界を使いこなす力。
最初は……。
異能なんてものの存在を知らなかった僕は、ただ戸惑うだけだった。
わけの分からない力を手にしてしまった自分に怯え、戸惑い、閉じこもる毎日だった。
そんな僕を救ってくれたのが橘さん。
橘さんが僕に新しい世界を見せてくれた。
異能とは何なのか、その使い方、価値、日本における異能者の立場。
それらを橘さんは僕に教えてくれた。
想像もできないような話だったけれど、橘さんの話を聞いて色々と納得したし自信を持つこともできた。
そして、何より。
今の僕なら姉さんを助けることができる。
この力はそのためのもの。
そう確信できたんだ!
「……」
もうすぐ姉さんを助けることができる。
あの家から救い出せる。
そう思っていたのに……。
そんな僕が今捕まってしまったら?
想像しただけでも、恐ろしくなってしまう。
駄目だ!
僕が弱気になってどうする。
僕以外誰も姉さんを助けることなんてできないんだぞ。
そうだ。
やるしかない。
次は勝つしかない。
「……」
あいつが……。
あいつが姉さんを助けてくれていれば……。
よそう。
今さら考えても、どうしようもない。
僕にできるのはこの異能を使うことだけ。
今度こそは上手くやってやる。
**********
廃墟ビルで異能戦が行われた翌日。
一晩経っても頭の中は変わらない。
幸奈のこと、そして武志のことばかり。
「……」
ついつい考え込んでしまう。
思い悩んでしまう。
けど、そんなことをしても何も得ることなんてできない。
悩む暇があったら動くべき。
そうやって俺は生きてきたんだろ。
なら、どうする?
武志の行方を探るしかない。
とにかく動くんだ。
まずは武志の通う高校とその周辺に足を向ける。
さらに、以前の武志がよく立ち寄っていた場所を回り、廃墟ビルやあの公園なども捜索してみる。
一日かけて歩き回ったものの、成果はなし。
それも想定内だ。
翌日以降も、思いつく限り幾つもの場所を回ってみる。
時間を置いて、同じ場所に複数回足を運ぶ。
それでも、武志の姿もその痕跡も全く見つけることができなかった。
こうなると……。
またぞろ無駄な思索がぶり返してくる。
足が止まりそうになる。
「……」
駄目だ。
今は動きを止めちゃいけない。
やれることをやり続けるのみ。
続けて、続けて、武志を見つけ出してやる。
橘の下から連れ戻してやる!
とまあ、そんな毎日を過ごしているわけだが。
やはり、オルドウのことも気になってしまう。
なので、日本時間の深夜にオルドウに移動し、朝に戻ってくるという生活を送ることにしたんだ。
これなら、オルドウに着いてすぐ仮眠をとったとしても7、8時間はあちらで活動できる。
その後に日本に戻れば問題もないだろう。
異世界間移動の時間差は、こういう時に助かるな。
オルドウで12時間過ごしたとしても、日本では6時間しか経過していないのだから。
というわけで、久々のオルドウ。
まずはセレス様の様子を見るため、シアとアルがセレス様に用意した家に足を向けることにした。
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