30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
298 / 1,640
第4章 異能編

和見武志 1


<和見武志視点>


 このままじゃ駄目だ。

 姉さんが壊れる。
 壊れてしまう。

 どんな手を使っても、それだけは避けないと!

「……」

 姉さんを助けるには、家を出る必要がある。
 あの地獄のような家を脱出しなきゃいけない。
 できるだけ早く。
 可能なら年内に。

 それなのに、もし僕が捕まったら?
 今ですら限界に近い姉さんは?

「……」

 姉さんは本当に良く頑張っている。
 頑張り過ぎるくらい頑張っている。

 もう充分。
 これ以上は必要ない。
 姉さんは家を出るべきなんだ。

 けど、姉さんは和見家から離れようとしない。
 もう大学生なんだから、可能なのに。
 あんなに辛い目にあって、いつも苦しい表情をしているのに。
 どうして?

 姉さんに理由を聞いても僕には教えてくれない。
 ただ静かに微笑んで、家を出ることはできないと答えるだけ。

 和見家で、もう何年も酷い扱いを受け続けているのに。

「……」

 だから。
 僕が助ける!

 姉さんが自分で家を出ないというのなら。
 僕が連れ出してやる!
 それだけだ。

 ただ……。

 そう決意しても、僕には力もお金もなかった。
 姉さんを助ける術なんて何も持っていなかった。

 この異能を手にする前までは!

「……」


 あの家に歯向かうのは簡単なことじゃない。

 とんでもなくいびつで歪んでいる和見家。
 それでも、持っている力は絶大だ。
 和見家の資産や権力は並じゃない。

 そんな大きな力を持つ和見家の当主である父さんに、高校生の僕がどうやって立ち向かうというのか。

 僕ができることなんて……。

 そう思い嘆いている間にも、姉さんの状況は悪くなるばかり。
 僕は自分の無力さに押しつぶされてばかり。

 そんな日々を送っていたある日。
 僕に天からの恩恵が与えられたんだ。

 それは異能。
 結界を使いこなす力。

 最初は……。
 異能なんてものの存在を知らなかった僕は、ただ戸惑うだけだった。
 わけの分からない力を手にしてしまった自分に怯え、戸惑い、閉じこもる毎日だった。

 そんな僕を救ってくれたのが橘さん。
 橘さんが僕に新しい世界を見せてくれた。

 異能とは何なのか、その使い方、価値、日本における異能者の立場。
 それらを橘さんは僕に教えてくれた。
 想像もできないような話だったけれど、橘さんの話を聞いて色々と納得したし自信を持つこともできた。

 そして、何より。

 今の僕なら姉さんを助けることができる。
 この力はそのためのもの。
 そう確信できたんだ!

「……」

 もうすぐ姉さんを助けることができる。
 あの家から救い出せる。
 そう思っていたのに……。


 そんな僕が今捕まってしまったら?
 想像しただけでも、恐ろしくなってしまう。


 駄目だ!
 僕が弱気になってどうする。
 僕以外誰も姉さんを助けることなんてできないんだぞ。

 そうだ。
 やるしかない。
 次は勝つしかない。

「……」


 あいつが……。
 あいつが姉さんを助けてくれていれば……。

 よそう。
 今さら考えても、どうしようもない。

 僕にできるのはこの異能を使うことだけ。
 今度こそは上手くやってやる。




**********




 廃墟ビルで異能戦が行われた翌日。

 一晩経っても頭の中は変わらない。
 幸奈のこと、そして武志のことばかり。

「……」

 ついつい考え込んでしまう。
 思い悩んでしまう。

 けど、そんなことをしても何も得ることなんてできない。
 悩む暇があったら動くべき。
 そうやって俺は生きてきたんだろ。

 なら、どうする?

 武志の行方を探るしかない。
 とにかく動くんだ。


 まずは武志の通う高校とその周辺に足を向ける。
 さらに、以前の武志がよく立ち寄っていた場所を回り、廃墟ビルやあの公園なども捜索してみる。

 一日かけて歩き回ったものの、成果はなし。
 それも想定内だ。

 翌日以降も、思いつく限り幾つもの場所を回ってみる。
 時間を置いて、同じ場所に複数回足を運ぶ。

 それでも、武志の姿もその痕跡も全く見つけることができなかった。

 こうなると……。
 またぞろ無駄な思索がぶり返してくる。
 足が止まりそうになる。

「……」

 駄目だ。
 今は動きを止めちゃいけない。
 やれることをやり続けるのみ。

 続けて、続けて、武志を見つけ出してやる。
 橘の下から連れ戻してやる!


 とまあ、そんな毎日を過ごしているわけだが。
 やはり、オルドウのことも気になってしまう。

 なので、日本時間の深夜にオルドウに移動し、朝に戻ってくるという生活を送ることにしたんだ。
 これなら、オルドウに着いてすぐ仮眠をとったとしても7、8時間はあちらで活動できる。
 その後に日本に戻れば問題もないだろう。

 異世界間移動の時間差は、こういう時に助かるな。
 オルドウで12時間過ごしたとしても、日本では6時間しか経過していないのだから。


 というわけで、久々のオルドウ。
 まずはセレス様の様子を見るため、シアとアルがセレス様に用意した家に足を向けることにした。
感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。