30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

能力開発研究所 2

「受け取ってもらえるかな?」

 そう言って俺と里村の目の前に差し出されたのは、2封の封筒。
 俺が普段使うような安物ではない、見るからに高級そうな封筒だ。

「これ、何ですか?」

 興味津々の里村。

「見れば分かるよ、どうぞ」

 促された俺たちが、各々封筒を開封すると。
 中に入っていたのは。

 1万円札が新札で10枚と、名前が記されたカードのようなもの。

「まず、その現金は迷惑料だと思って受け取ってもらいたい。金額については思うところがあるかもしれないが、今回はこれで納得してもらえないだろうか」

「これ国からですよね。こんなの貰ってもいいのかなぁ?」

 俺もそう思う。
 現金なんかもらいたくない。
 可能なら、遠慮したいくらいだ。

「厳密に言うと国からではないのだが、まあ、それはいいだろう」

 国からじゃない?
 ということは……。

「何も問題はないので、遠慮なく受け取ってほしい」

「……」

「ふたりとも、受け取ってもらえるかな」

 鷹郷さんの口調。
 横にいる古野白さんの表情。

 これは、断れないか。

「……分かりました」

「ボクも分かりました」

「助かるよ」

「正直、ボクも助かります」

 10万円は里村のような学生にとっては、少なくない金額だからな。
 助かるというのも、良く分かる。

「次に、このカード。これは我々の機関が発行している身分証明用のカードで、本来は職員と我々の監督下にある異能者だけに与えられるものなんだが……」

「それを私たちに?」

「そういうことだ?」

「いいんですか?」

「ああ。稀に当機関の協力者に発行する場合もあるんだよ」

「今回が稀なケースだと?」

 迷いない眼差しで、強く頷く鷹郷さん。

「これも受け取ってもらいたい」

 現金に身分証明用のカード。
 面倒なことになりそうな予感でいっぱいだぞ。

 まいったな。

「……」

 鷹郷さん、譲る気はなさそうだ。

 はぁぁ。
 仕方ない。

「……ありがたく、いただきます」

「ボクも、ありがとうございます」

「ああ」

 満足したように頷く鷹郷さん。
 隣の古野白さんも、ほっとしたような表情。

「そのカードは身分証であると同時に、様々な特典が付与されている。また、異能関係においても大いに効力を発揮するものだから、なくさずに持っていてもらいたい」

 様々な特典を普通人である俺たちが受け取ることができる?

「……」

 なるべく使わないようにしよう。

「はい、分かりましたぁ!」

 こいつ、使いそうだな。

「特典については、あとで古野白君から詳しく聞くといい」

「はい。楓季ちゃん、あとでよろしくね」

「里村君!」

「ごめん、ごめん。でも、あとでよろしくね」

「……分かっているわ」

「さて、ここからは少し腹を割って話をしたいと思うんだが。いいかな?」

 腹を割って話す、か。

 これはつまり、ある程度のことは話せ、と。
 そういうことなんだろう。
 
「……」

 許されるなら、ここで帰りたいよ。

「まずは、当研究所について簡単に説明したいと思う」


 それから鷹郷さんが話してくれた内容を要約すると。

 能力開発研究所とは国によって設立された異能関係の様々な業務を行う機関ではあるが、現在は一部を除き民間の団体として活動しているらしい。

 この事務所は全国に複数ある出張所の1つ。古野白さんや俺たちが通う大学周辺の地域はこの事務所の管轄下にあるそうだ。

 研究所では異能者たちの保護と指導を行っており、保護下にある一部の異能者は研究所の依頼を遂行することで報酬を受け取っているとのこと。要するに、研究所と嘱託所員のような関係を結んでいるってことだ。

 その中において、古野白さんと武上からなる異能者のグループは、鷹郷さんが統括する複数のグループの1つで、通常は割り当てられた地域の異能関係の業務を請け負っているらしい。橘や武志の一件はまさに担当地域での異能者の取り締まり業務にあたると。


「こんなところよ。何か質問あるかしら」

 鷹郷さんに促され、古野白さんが俺たちに訊ねてくる。

「あのぅ、こちらの業務って他に何があるんですか?」

「里村君、それは……。色々ね」

「色々って……」

「色々な業務があるのよ」

「……」

「古野白君、私が話そう」

「……はい」

「簡単に言うとだね……様々な脅威の排除のために動いているといったところかな」

「脅威ですか?」

「ああ、脅威だ」

「それは、どんなものなんです?」

「……警察などの手に負えないようなものだね」

「例えば?」

 おいおい。
 容赦なく追及しているぞ。
 里村、すごいな。

「……」

「……」

「教えてもらえないんですか?」

 この空気にも屈しないなんて、恐れ入るよ。

「はぁ。これは、ここだけの話にしてもらえるかな」

「はい、もちろんです」

 ちょっと待て。

「そういうことなら、私は席を外しますので」

 そんなもの聞いたら面倒しか残らない。

「いや、有馬君にも聞いてもらおう」

「……遠慮したいのですが」

「そう言わず、まあ座りなさい」

「……」

「それで、脅威って何なのですか?」

 里村ぁ……。

「……常ならざるもの、怪異、異形だ」

「異形?」

「簡単に言うと化け物よ」




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