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第4章 異能編
魂を揺らす者 2
橘の仲間じゃないと話していた壬生少年。
実際、前回も今回も橘に加勢しなかったという事実もある。
こいつは、本当に敵なのか?
「ぼくの希望はひとつだけです」
「……それは?」
「有馬さんに、ぼくの仲間になってもらいたいんですよ。そして、力を貸してほしいんです」
そう言って口の端を上げる。
どこまでもふてぶてしい態度を崩さない年齢不詳の壬生少年。
「鷹郷さんや古野白さんと離れて、橘たちと手を組めと?」
「いえいえ、さっきも言ったように橘はどうでもいいんですよ。それに、そちらの方々もどうでもいい。彼らとは関係なく、ぼくに力を貸していただければと」
「橘の面倒を見ていたんじゃないのか?」
「そうですね。でも、有馬さんと橘なら有馬さんを選びますので。だから、どうです?」
「……」
「そもそも、ぼくは有馬さんの不利益になるような事してませんよね。ビルの屋上でも公園でも、ぼくは何も手を出してませんよ」
確かにその通り。
俺に対しても鷹郷さんたちに対しても、こいつは直接何もしていない。
つまり、敵対する意思はないと?
「ぼくに力を貸してくださいよ」
「俺は異能者じゃないぞ。どうして、そこまで評価しているんだ?」
「異能云々は、この際問題じゃないです」
「普通人である俺より、瞬間移動の異能を持つ橘の方が手を組む価値があるんじゃないのか?」
「普通人とか異能者とかいう定義はですね、この国が勝手に決めたものです。そんなものどうでもいい。ぼくは有馬さん自身を評価しているんですよ。まっ、何らかの力は持っているんでしょうけど」
「……」
「今は話さなくていいですよ。でも、いつかぼくのことを信じてくれたら、話してくださいね」
「そんな未来は来ないと思うぞ」
「はは、そんなことないですって」
「大した自信だな」
「ええ、自信はありますね」
「……」
自分の持つ異能に自信があるってことか。
それにしても、ここまで俺にこだわる理由が分からない。
壬生少年の前では身体強化こそ見せたものの、あからさまな魔法は全く使っていないのに。
「……」
まさか、魂移で俺の身体を狙っている?
いや、それはないか。
鑑定によると、自我の確立前の身体にしか移れないはずだから。
それとも、何か抜け道が……。
「その沈黙は、ぼくに手を貸そうと考えてくれているんですか」
「違うな」
「残念。まっ、今はしょうがないのかなぁ」
「それで……俺を仲間にして何をするつもりだ?」
「うーん、まだ話せないですねぇ。だって、有馬さんも秘密だらけですし」
「……」
「有馬さんが話してくれたら、ぼくも話しますけど」
それは無理な相談だ。
ただ。
「目的が分からないと、そもそも考慮すらできないぞ」
「なるほど。それは困りますねぇ……。では、少しだけ」
少しなら話せるのか?
「まずは、この近辺の異能者たちを従えましょうか。放っておくと厄介ですからねぇ」
「そうすると、鷹郷さんたちとも対立することになるが」
「素直に従ってくれるなら対立しませんよ」
「従わないなら?」
「はは、そんなの従わせるだけです」
こいつ、ここでも自信満々なのか。
「まあ、彼らは従ってくれると思いますけど」
「……今回の襲撃は、その野望の第一歩というわけだな」
「違いますよぉ。これは橘たちが計画したことですって。ぼくは関係ないですね」
廃墟ビルの件も、今日の襲撃も自分は関与していない。
その主張は変わらない、と。
「いずれにせよ、鷹郷さんたちとは対立するってことだ」
「だからぁ、従ってくれたら対立しませんって」
そんなわけないだろ。
「君の考えは理解した」
「そうですか。嬉しいなぁ」
「勘違いするなよ」
「勘違い、ですか?」
「ああ。君に手を貸すことはできない。決裂だ」
「うーん、結論を出すのが早いのでは?」
「いや、対立するに決まっているからな」
こいつの言葉は信用ならない。
それに、今この時点で既に揺魂を使っている可能性すらある。
少しずつ感情や思考が誘導されている可能性も。
「この話はここまでだ」
「悲しいなぁ」
茶番はもういいだろ。
「問題がないようなら解放してやるが、とりあえず拘束させてもらうぞ」
この異能抑制具を使ってな。
「はぁ~~。仕方ないですねぇ」
その嘆息を無視して傍らまで接近……できない?
身体が重い!?
いや、違う。
身体が押し戻される!
前に進むのを押しとどめようと何らかの力が俺に働いているんだ。
あいつの異能か?
人体を止めるほどの念動力を使えると?
廃墟ビルで異能者が使っていた念動力とは比べ物にならない!
「なかなか効くでしょ」
「……そうだな」
実際、前回も今回も橘に加勢しなかったという事実もある。
こいつは、本当に敵なのか?
「ぼくの希望はひとつだけです」
「……それは?」
「有馬さんに、ぼくの仲間になってもらいたいんですよ。そして、力を貸してほしいんです」
そう言って口の端を上げる。
どこまでもふてぶてしい態度を崩さない年齢不詳の壬生少年。
「鷹郷さんや古野白さんと離れて、橘たちと手を組めと?」
「いえいえ、さっきも言ったように橘はどうでもいいんですよ。それに、そちらの方々もどうでもいい。彼らとは関係なく、ぼくに力を貸していただければと」
「橘の面倒を見ていたんじゃないのか?」
「そうですね。でも、有馬さんと橘なら有馬さんを選びますので。だから、どうです?」
「……」
「そもそも、ぼくは有馬さんの不利益になるような事してませんよね。ビルの屋上でも公園でも、ぼくは何も手を出してませんよ」
確かにその通り。
俺に対しても鷹郷さんたちに対しても、こいつは直接何もしていない。
つまり、敵対する意思はないと?
「ぼくに力を貸してくださいよ」
「俺は異能者じゃないぞ。どうして、そこまで評価しているんだ?」
「異能云々は、この際問題じゃないです」
「普通人である俺より、瞬間移動の異能を持つ橘の方が手を組む価値があるんじゃないのか?」
「普通人とか異能者とかいう定義はですね、この国が勝手に決めたものです。そんなものどうでもいい。ぼくは有馬さん自身を評価しているんですよ。まっ、何らかの力は持っているんでしょうけど」
「……」
「今は話さなくていいですよ。でも、いつかぼくのことを信じてくれたら、話してくださいね」
「そんな未来は来ないと思うぞ」
「はは、そんなことないですって」
「大した自信だな」
「ええ、自信はありますね」
「……」
自分の持つ異能に自信があるってことか。
それにしても、ここまで俺にこだわる理由が分からない。
壬生少年の前では身体強化こそ見せたものの、あからさまな魔法は全く使っていないのに。
「……」
まさか、魂移で俺の身体を狙っている?
いや、それはないか。
鑑定によると、自我の確立前の身体にしか移れないはずだから。
それとも、何か抜け道が……。
「その沈黙は、ぼくに手を貸そうと考えてくれているんですか」
「違うな」
「残念。まっ、今はしょうがないのかなぁ」
「それで……俺を仲間にして何をするつもりだ?」
「うーん、まだ話せないですねぇ。だって、有馬さんも秘密だらけですし」
「……」
「有馬さんが話してくれたら、ぼくも話しますけど」
それは無理な相談だ。
ただ。
「目的が分からないと、そもそも考慮すらできないぞ」
「なるほど。それは困りますねぇ……。では、少しだけ」
少しなら話せるのか?
「まずは、この近辺の異能者たちを従えましょうか。放っておくと厄介ですからねぇ」
「そうすると、鷹郷さんたちとも対立することになるが」
「素直に従ってくれるなら対立しませんよ」
「従わないなら?」
「はは、そんなの従わせるだけです」
こいつ、ここでも自信満々なのか。
「まあ、彼らは従ってくれると思いますけど」
「……今回の襲撃は、その野望の第一歩というわけだな」
「違いますよぉ。これは橘たちが計画したことですって。ぼくは関係ないですね」
廃墟ビルの件も、今日の襲撃も自分は関与していない。
その主張は変わらない、と。
「いずれにせよ、鷹郷さんたちとは対立するってことだ」
「だからぁ、従ってくれたら対立しませんって」
そんなわけないだろ。
「君の考えは理解した」
「そうですか。嬉しいなぁ」
「勘違いするなよ」
「勘違い、ですか?」
「ああ。君に手を貸すことはできない。決裂だ」
「うーん、結論を出すのが早いのでは?」
「いや、対立するに決まっているからな」
こいつの言葉は信用ならない。
それに、今この時点で既に揺魂を使っている可能性すらある。
少しずつ感情や思考が誘導されている可能性も。
「この話はここまでだ」
「悲しいなぁ」
茶番はもういいだろ。
「問題がないようなら解放してやるが、とりあえず拘束させてもらうぞ」
この異能抑制具を使ってな。
「はぁ~~。仕方ないですねぇ」
その嘆息を無視して傍らまで接近……できない?
身体が重い!?
いや、違う。
身体が押し戻される!
前に進むのを押しとどめようと何らかの力が俺に働いているんだ。
あいつの異能か?
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「なかなか効くでしょ」
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