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第4章 異能編
魂を揺らす者 5
意志に反して止まってしまった右手。
壬生少年の腕を掴んだ左手も動かない。
映像も浮かんでいないのに体が止まって!
と!?
さっきとは比べ物にならないような震えが襲ってきた!!
「今のは本当に危なかったですよ」
急激に襲って来た震えで体に力が入らない。
「でも、もう動けないでしょ」
動かないが動けないに変わっていく。
手も足も、すべてが……。
「くっ!」
これは、まずい。
震えがきつすぎる。
力の抜けた俺の左手から壬生少年の腕が離れる。
もう一度捕まえようと思っても。
手が伸ばせない。
あまりの震えのため、身体が言うことをきかない。
ゴトン。
異能抑制具が右手から、こぼれ落ちる。
腰を折り、身を屈めてしまう。
「ぅぅ……」
駄目だ。
動けない。
震えが止まらない。
「……」
これも揺魂なのか?
「もう感嘆の言葉もないですよ。これを受けて倒れないなんて、ホント」
「な、な、んだ?」
「その上、喋ることもできる」
「……い、の、うか?」
「ええ。震えが止まらないでしょ」
「……」
映像はない。
恐怖もない。
もちろん、寒くもない。
それなのに、震えが止まらない。
これも揺魂の力……。
「ぼくの異能は揺魂と言いましてね。魂に働きかけることができるんですよ。効果は様々あるんですけどね。今の有馬さんのように魂に直接恐怖を与えてやると、大抵は震えで動けなくなります。中には、すぐに失神する者もいますし」
魂に直接恐怖を?
俺自身全く恐怖など感じていないのに、魂が恐怖を感じていると?
「……お、お、し、えて、いい、のか」
「有馬さんは特別ですよ。まっ、ぼくの異能を知ったところで対処なんてできないでしょうから、問題はないですし」
「……」
その通りだ。
すぐ目の前にいるというのに、何もできない。
「ぅぅぅ……」
これ以上、立っていられない。
我慢しきれず膝をついてしまう。
「まだ膝立ちで耐えるんですね。うーん、恐ろしいなぁ」
「……」
「でも、どうです。そろそろ、ぼくに手を貸す気になりましたか?」
「そ、んな、わけ、な、い」
「そうですか」
壬生少年が震える俺のもとから離れていく。
「こういうの趣味じゃないんだけど」
鷹郷さんたちのもとに歩を進めている。
「強情な有馬さんが悪いんですよ」
「な、にを」
「それと、手を出してきたのは有馬さんが先ですから。許してくださいね」
「な、に、する?」
「うん? 脅すんですよ。有馬さんを」
橘の投げたナイフを拾い、古野白さんに近づく壬生少年。
「こういうことです」
そのナイフを古野白さんの首筋に押しあてた。
「!!」
拾ったナイフを古野白さんの首にあてたまま壬生が口を開く。
「有馬さんが仲間になってくれないというのなら、この美しい肌に傷がついちゃいますよぉ」
「そ、んな、こと、し、てみろ」
「ぼくはこの人たちに興味はありませんし、そもそも有馬さんに恨まれたくはないので、ホント、こういうことしたくないんです」
「……」
「でも、有馬さんがぼくの話を聞き入れてくれませんから」
お前の仲間になどなれるはずないだろ。
「それとも、聞き入れてくれるのかな?」
「……」
「残念だなぁ。これはもうね、有馬さんの責任ということで」
「や、めろ!」
「そう言われてもねぇ」
ナイフが薄く首をなでる。
そして……。
にじみ出た鮮血が古野白さんの首を伝う。
「!?」
「ああ、大丈夫ですよ。薄皮一枚切っただけですから」
こいつ……。
けど、古野白さんは、どうして目覚めない?
あれくらいの傷じゃ駄目なのか?
「気持ちは変わりましたか?」
「……」
俺を仲間に引き入れたいという壬生少年。
それを考えての行動だとするなら……。
俺の心証を害することを避けるため、過度な行動は取らないはず。
なら、古野白さんの命を奪うことまではしない、はず。
だが……。
「まだ足りないようですねぇ」
「……」
どうする?
まだ動けないのに。
震えが止まらないのに。
「ぅぅ……」
古野白さんを傷つけられたくない。
それに、それだけで済まないかもしれない。
あとで治癒魔法で治せる程度ならまだしも、それ以上なら……。
「では、今度はこの綺麗な顔に傷がつきますよ。それとも、他の2人にしましょうか?」
「ま、て!」
さっきから気と魔力を体内で循環させようとしているが……。
震えで集中できない。
こんな状態では、動けるまで回復するのにまだまだ時間がかかる。
回復したとしても、直後に再度揺魂を使われたら……。
また同じことが起きるのか?
「ぼくが聞きたいのは、そんな言葉じゃないんですよ」
「……」
この状況を打開するためには?
「……」
もう……。
露見を心配している場合じゃないな。
その段階は過ぎている。
ならば、覚悟を。
覚悟を決めるしかない!
壬生少年の腕を掴んだ左手も動かない。
映像も浮かんでいないのに体が止まって!
と!?
さっきとは比べ物にならないような震えが襲ってきた!!
「今のは本当に危なかったですよ」
急激に襲って来た震えで体に力が入らない。
「でも、もう動けないでしょ」
動かないが動けないに変わっていく。
手も足も、すべてが……。
「くっ!」
これは、まずい。
震えがきつすぎる。
力の抜けた俺の左手から壬生少年の腕が離れる。
もう一度捕まえようと思っても。
手が伸ばせない。
あまりの震えのため、身体が言うことをきかない。
ゴトン。
異能抑制具が右手から、こぼれ落ちる。
腰を折り、身を屈めてしまう。
「ぅぅ……」
駄目だ。
動けない。
震えが止まらない。
「……」
これも揺魂なのか?
「もう感嘆の言葉もないですよ。これを受けて倒れないなんて、ホント」
「な、な、んだ?」
「その上、喋ることもできる」
「……い、の、うか?」
「ええ。震えが止まらないでしょ」
「……」
映像はない。
恐怖もない。
もちろん、寒くもない。
それなのに、震えが止まらない。
これも揺魂の力……。
「ぼくの異能は揺魂と言いましてね。魂に働きかけることができるんですよ。効果は様々あるんですけどね。今の有馬さんのように魂に直接恐怖を与えてやると、大抵は震えで動けなくなります。中には、すぐに失神する者もいますし」
魂に直接恐怖を?
俺自身全く恐怖など感じていないのに、魂が恐怖を感じていると?
「……お、お、し、えて、いい、のか」
「有馬さんは特別ですよ。まっ、ぼくの異能を知ったところで対処なんてできないでしょうから、問題はないですし」
「……」
その通りだ。
すぐ目の前にいるというのに、何もできない。
「ぅぅぅ……」
これ以上、立っていられない。
我慢しきれず膝をついてしまう。
「まだ膝立ちで耐えるんですね。うーん、恐ろしいなぁ」
「……」
「でも、どうです。そろそろ、ぼくに手を貸す気になりましたか?」
「そ、んな、わけ、な、い」
「そうですか」
壬生少年が震える俺のもとから離れていく。
「こういうの趣味じゃないんだけど」
鷹郷さんたちのもとに歩を進めている。
「強情な有馬さんが悪いんですよ」
「な、にを」
「それと、手を出してきたのは有馬さんが先ですから。許してくださいね」
「な、に、する?」
「うん? 脅すんですよ。有馬さんを」
橘の投げたナイフを拾い、古野白さんに近づく壬生少年。
「こういうことです」
そのナイフを古野白さんの首筋に押しあてた。
「!!」
拾ったナイフを古野白さんの首にあてたまま壬生が口を開く。
「有馬さんが仲間になってくれないというのなら、この美しい肌に傷がついちゃいますよぉ」
「そ、んな、こと、し、てみろ」
「ぼくはこの人たちに興味はありませんし、そもそも有馬さんに恨まれたくはないので、ホント、こういうことしたくないんです」
「……」
「でも、有馬さんがぼくの話を聞き入れてくれませんから」
お前の仲間になどなれるはずないだろ。
「それとも、聞き入れてくれるのかな?」
「……」
「残念だなぁ。これはもうね、有馬さんの責任ということで」
「や、めろ!」
「そう言われてもねぇ」
ナイフが薄く首をなでる。
そして……。
にじみ出た鮮血が古野白さんの首を伝う。
「!?」
「ああ、大丈夫ですよ。薄皮一枚切っただけですから」
こいつ……。
けど、古野白さんは、どうして目覚めない?
あれくらいの傷じゃ駄目なのか?
「気持ちは変わりましたか?」
「……」
俺を仲間に引き入れたいという壬生少年。
それを考えての行動だとするなら……。
俺の心証を害することを避けるため、過度な行動は取らないはず。
なら、古野白さんの命を奪うことまではしない、はず。
だが……。
「まだ足りないようですねぇ」
「……」
どうする?
まだ動けないのに。
震えが止まらないのに。
「ぅぅ……」
古野白さんを傷つけられたくない。
それに、それだけで済まないかもしれない。
あとで治癒魔法で治せる程度ならまだしも、それ以上なら……。
「では、今度はこの綺麗な顔に傷がつきますよ。それとも、他の2人にしましょうか?」
「ま、て!」
さっきから気と魔力を体内で循環させようとしているが……。
震えで集中できない。
こんな状態では、動けるまで回復するのにまだまだ時間がかかる。
回復したとしても、直後に再度揺魂を使われたら……。
また同じことが起きるのか?
「ぼくが聞きたいのは、そんな言葉じゃないんですよ」
「……」
この状況を打開するためには?
「……」
もう……。
露見を心配している場合じゃないな。
その段階は過ぎている。
ならば、覚悟を。
覚悟を決めるしかない!
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