30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

和見武志 2

<和見武志視点>



 研究所にいた僕が、どうして車の中に?

「……」

 ついさっき、能力開発研究所とかいうふざけた名前の事務所に侵入したあと。
 途中までは上手くいっていた。
 
 事務員たちを眠らせ。
 あいつらを待ち伏せ、罠にはめて。
 結界に閉じ込めて。
 ガスで眠らせる。

 ここまでは計画通りだった。

 それなのに!

「……」

 また失敗したんだ。
 やられたんだ。

 これで、3度目。
 3度も結界を破られて。
 負けてしまった。

「……」

 情けない。
 自分の力の無さが嫌になる。

 こんな失敗ばかりしていたら、姉さんを助けることなんて……。
 できるわけないだろ!

 ああ……。


「もう話せるかな?」

「……」

 そうだ。
 今は落ち込んでいる場合じゃなかった。

「まだ無理か?」

「……」

 しかし、この状況はいったい?

 車の助手席に座っていることだけでも意味不明なのに、隣には僕の意識を奪った男。
 見覚えのあるあいつが……。

 運転席に座るその顔を横目で覗き見てしまう。

「……」

「どうした?」

「な、何でもない」

「やっと喋ってくれたな」

「……」

 この声も知ってる。
 やっぱり、隣にいるのは!

「どうして……」

「ああ、意識を失っている君を車に乗せただけだ」

 そうじゃない。
 いや、それも知りたかったけど、今知りたいのは……。

 だめだ!
 こんな状況で、僕からは切り出せない。

 だったら、まずは。

「……他のみんなは?」

 捕まったのか?

「去って行ったぞ」

「えっ! 僕を置いて?」

「まあ、そうなるかな」

「そんな……」

 僕を見捨てて逃げた?
 嘘だ。
 信じられない。

 でも……。

 1度ならまだしも、2度も3度も失敗してしまったから。
 僕のことを使えないと判断して……。

「君の身柄は俺が預かることになった。あいつらはもう君には接触してこないだろう」

「預かる……。接触してこない?」

 切り捨てたんだな。

「君に手を出さないように交渉したから、間違いない」

「えっ!」

 交渉した?

「僕のことを? なぜ、僕を?」

「心配だからだ」

「……」

「分かるだろ、武志」

「……」 

「久しぶりだな」

 そういって僕の顔を覗きこんでくるのは……。

 僕と姉さんの幼馴染。
 忘れることのできない幼馴染。

 そして、姉さんの想い人。

「……」

 幼い頃、よく一緒に遊んだ功己兄さん。
 超能力者や魔法使いなんかになりきって一緒に遊んでくれた功己兄さん。
 いつも僕の面倒を見てくれて、助けてくれて。
 優しかった功己兄さん。

 あの頃と同じ優しい顔で、今も僕のことを……。

「……」

 でも、でも!

 兄さんは変わってしまったじゃないか!
 僕と姉さんから離れていったじゃないか!

 何より。
 姉さんの手を振り払ったんだ!

 姉さんが助けを求めていたのに。
 一番信頼している相手だったのに。
 何も気づかずに、こいつは! 

 そのせいで姉さんは……。

 もう、こいつに姉さんを任せることはできない。
 姉さんを助けることができるのは僕だけなんだ。
 あの時以来、ずっとそう思ってる。

 なのに。
 よりによって、こんな形で再会するなんて。


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