30年待たされた異世界転移

明之 想

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第5章 王都編

襲撃 4

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「ぎゃあぁ!?」
「ああぁぁぁ!」
「あばばば!」

 街道にこだまする絶叫。
 その叫びが収まると……。

 街道には崩れ落ちた10人の襲撃者。
 意識を失うか痙攣した状態で倒れ伏している。

「……」

 思っていたより効果があったみたいだ。

「な、何っ!?」

「何が起こった?」

「この魔法は? 何が?」

 街道に立っているのは残りの野盗と姫様たち。
 呆然とした表情で呟いている。

「おいおい、兄さん凄えじゃねえか」

「次はジンクさんの番ですよ。早く撃ってください」

「おお……ファイアウェイヴ!」

 放たれたジンクの魔法は猛火の波。
 いまだ混乱の収まらない野盗たちに向けられた広範囲の魔法攻撃。

「「うわあぁぁ」」

「「ぎゃああ」」

 一瞬で、4人を倒しきった。

「どうだ?」

「素晴らしい魔法ですね」

 姫様の魔法と同等の威力がありそうだ。
 しかも、姫様より余裕のある顔をしている。

「だろ! まっ、兄さんの魔法には敵わないけどな。ってことで、もう一発撃ってくれよ」

「……では」

 現時点で立っている襲撃者は半数もいない。
 これなら、もう魔法を使うまでもないのだが。

「雷波!」

 雷波をもう一発。
 これで、決まりだろ。

「ぎゃぁぁ!」
「あああっ!」
「ぁぁ!」

「……!?」

 おっ、まだ立っている野盗がいるな。



「ウォーライル、これは何事だ?」

「姫様、おそらく……あちらの方々の魔法かと?」

「あちら?」

「あの岩陰です」

「……2人いるな」

「はい」

「あの2人がさきほどの魔法を放ったと?」

「私も魔法を撃つところは見ておりませぬが、状況を考えれば、おそらくは」

「ふむ……」



 俺とジンクの魔法が野盗に炸裂した直後。

 今の状況を忘れたかのように、姫様とその傍に付き従う護衛騎士らしき者がこちらを凝視してくる。
 他の騎士たちも同様だ。

 目の前で強力な魔法を連発されたんだ。
 気持ちも理解できるが、まだ野盗が残っているんだぞ。
 そっちに注力してほしい。

 その野盗の方はというと。
 魔法を受けて立っているのは、リーダーらしき者ともう1人。
 彼らの視線もこちらに釘づけ。


「まさか、あいつらの仕業なのか」

「そのようです」

「2人で、あの魔法を?」

「……」

 倒れ伏す多くの盗賊たちの中、こちらを振り返ったままの体勢。
 これはもう、捕えてくれと言っているようなものだろ。

「ジンクさん」

「ああ、分かってるぜ」

 阿吽の呼吸で岩陰を出て走り出す。

 いまだ立ち尽くしたまま動こうとしない野盗2人。
 その後ろには、馬車を背にこちらを見つめている姫様と騎士たち。

 誰も動こうとしない。

 敵も味方もみんな動きもせず、呆然としている状況だ。
 そんな中を、俺たち2人だけが走って近づくというのも……。

「やりづれえなぁ」

「ええ」

「兄さんの魔法が凄すぎたからだぜ」

「ジンクさんの魔法もでしょ」

「いや、レベルが違うわ」

 喋りながらも、足は止まっていない。
 賊は、もうそこにいる。

「……とりあえず、無駄話は止めて2人を捕えますよ」

「だな。兄さんは、そっちを頼むぜ」

「了解」

 ジンクは目の前にいるリーダー格に、俺はその隣の野盗に向かう。

「なっ! 逃げるぞ!」

「隊長!」

 今さらだ。
 ここで逃げ出しても遅いぞ。

 王都の方向に走り出す野盗を捕まえ。
 首に手刀を叩き込む。

「うっ!」

 意識刈り取りに成功。

 で、ジンクの方は?

「わりぃ」

 ジンクの手を逃れたリーダー格の男がグラスブル方面に走っている。

「追ってくださいよ」

「兄さん、頼むわ」

「どうしたんです?」

 怪我でもしたと?

「ちょっとな。だもんで、頼むぜ」

「……分かりました」

 野盗のリーダー格とは既に20メートルほど離れている。
 なかなかの逃げ足だ。

「追いつけるか?」

「頑張りますよ」

 そっちにはウィルさんの乗った馬車が停まっている。
 行かせるわけにはいかない。

 軽く足を強化してと。
 地面を蹴る!

「!?」

 こっちを振り返り、さらに足を速めるリーダー。
 ただし、その速度じゃあ無理というもの。
 俺から逃げ切ることはできない。
 瞬間移動でもしない限りはな。

「くっ! お前、何者だ?」

 逃走を諦めたのか、足を止めこちらに向き直るリーダー。

「そんなこと、どうでもいい」

「なぜ、あいつらを助ける? お前には関係ないだろ」

「野盗に襲われている人たちを救うのは、当然だと思っているからだよ」

「……」

「それとも、野盗じゃないのか?」

「……」

「野盗に扮して襲ったと?」

 あの統制のとれた動き。
 姫様と呼ばれていた女性。

 こいつら、盗賊なんかじゃないよな。

「……」

 とはいえ、俺が詰問することでもないか。
 むしろ、深く知らない方がいい。

「……ただの野盗だ」

 おお、好い回答だ。
 ただの野盗ということで済むなら。
 この後の対処も楽でいい。

「野盗だというなら、お前を捕まえるだけだな」

「……」

 一種、観念したともとれるリーダーの表情。

「悪いが捕まるわけにはいかん。喰らえ!」

 リーダーの体から魔力が。

「ウインドエッジ!」

 詠唱せずに魔法を?
 いや、既に詠唱を済ませ待機していたのか?

 不可視の風が襲い掛かってくる。

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