30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
362 / 1,640
第5章 王都編

王都 1

 なんとか閉門前に着くことができた。
 これで、ようやく人心地つける。

 と、思ったのだが……。

 エリシティア様たちと門兵の話がなかなか終わらない。
 多数の賊を引き連れているため、手続きに時間がかかるようだ。

 そんなわけで、エリシティア様たちとは城門を入った所で別れることになった。


「時間がかかるものなのですね」

「そのようです。今回は賊の身柄を預かるのですから、仕方ないことですが」

 隣国の王族であっても時間がかかる。
 そういうものなんだな。

「それで、コーキにジンクよ。此度こたびのこと礼をしたいのだが、王都にはしばらく滞在するのか?」

「そうですね、オレは王都で暮らしてますから」

「私は数日後には王都を出る予定です」

 ウィルさん次第で日程は変わるものの、王都に長期滞在することはないだろう。

「ふむ。ならば、早い方が良いな。ウォーライル、明日はどうだ?」

「明日は午前に式典があり、午餐会、小舞踏会と続きます。その後は休憩をはさんで晩餐会となりますので、難しいかと」

「休憩時に館に戻ることはできんのか?」

「さすがに、それは……」

「襲撃された直後だというのに、厄介なことだな」

「……いっそ、すべてキャンセルいたしましょうか?」

「式典も舞踏会もすべてか」

「はい。襲撃後ですので、それも可能かと」

「元気な姿を門兵に見られておるぞ」

「……」

「すべてのキャンセルというのは、キュベリッツに迷惑も掛かるであろう」

「……はい」

「明日は、予定通り式典に付き合うとしよう。それで、明後日はどうだ?」

「午後からでしたら」

「コーキ、ジンク、明後日の午後は空いておるか?」

「オレは大丈夫ですよ」

「私も空いております」

「では、決まりだな」

 ということで、明後日の午後に決定。
 あまり王女様に関わるつもりはなかったのだが、これは仕方ないだろう。




「中央通りから西にひとつ入った通り沿いにある『煉瓦と煙亭』だから、間違えんなよ」

「分かっていますよ」

 エリシティア様たちと別れた後。
 王都の家に帰るジンクとも別れることに。

「腹を空かせて来るんだぞ」

「了解です。では、また明後日に」

 そのジンクが、明後日の昼に親が経営するレストランで俺とウィルさんに昼食を御馳走してくれるらしい。それも、自らが腕を振るってくれると。

 ジンクが料理人というのは本当なんだな……。

「おう! ふたりとも王都を楽しんでくれよ」

「はい」

「ええ、そのつもりです」

「じゃあ、また明後日だ」

 そう言って、軽い足取りで去って行った。

「私たちも宿を探しましょうか」

「そうですね。もう遅いですから、早めに探しましょう」

 既に夜のとばりが下りている時間だ。
 早く宿に入った方がいい。

 そう思って急ぐ王都の大通り。

 やっぱり、オルドウとは違うな。
 通りに設置された多くの街灯が煌々と道を照らし出している。

「想像以上に明るいですね」

「ええ、本当に」

 オルドウの街にも魔道具による灯は存在していたが、これほど多くはなかった。
 それに、一つひとつの明るさも違う。

 この明るさなら、夜の街でもそれなりに観光気分で眺めることができそうだな。
 とはいえ、色々と見て回るのは明日以降か。

「あちらが多くの宿が存在する区画みたいですね。コーキさん行きましょう」




 キュベリッツ王国の王都キュベルリア。
 白都とも称されるキュベルリアは美しく巨大な都市だ。

 30万余りの市民が暮らすこの都市は、10メートル以上の高さがある城壁に四方を囲まれた堅牢な城塞都市としても有名で、キュベリッツ王国の繁栄の象徴として国内外に知られているらしい。

 都市の中心部には、外壁よりひとまわり低い内壁で囲われた貴族の居住区があり、さらにその中心には白亜宮と呼ばれる壮麗な宮城が燦然とそびえ立っている。

 この王都キュベルリアは緩やかな高台に位置しているのだが、宮城周辺が最も高地となっているため貴族区域外にいても白亜宮の威容をはっきりと眺めることができる。
 
 そのため、キュベルリアを初めて訪れる者は城門をくぐった際に、先に見える宮城に見惚れて立ち止まってしまうという。

 その正門に名付けられた名前が『時忘門』。

 文字通り、時を忘れて白亜宮に見入ってしまうのは初見の訪問者に限らないとも言われている。その奇跡の扉を開くのが『時忘門』だ。

 『時忘門』の先に広がるのは、白を基調とした街並み、前方にそびえる純白の白亜宮。
 白の全てが陽光に輝き、キュベルリアを訪問する者の心をつかんで離さない。

 まさに美しき白の都、白都キュベルリア。


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…