367 / 1,640
第5章 王都編
王都 6
剣姫?
彼女が剣姫?
あの高名な剣姫だって?
「……」
風になびく濃紺の艶やかな長髪。
貴族を前にしても、微塵の揺るぎも見せない蒼眼。
この凛々しい女性が?
「……」
確かに、群衆の中を駆け抜ける動きは並ではなかった。
今もそう。
恐らくは抑えつけているのであろうが、その身から漏れる気が普通じゃない。
尋常ならざる剣気を纏っている。
「剣姫だって?」
「本当に?」
「でも、あの姿は確かに……」
「間違いない、剣姫だ」
「ああ、俺も見たことがある。あれは本物の剣姫だ」
静まりかえっていた群衆の口々から漏れ出す囁き。
「……」
やはり、そうなんだな。
ギリオンやヴァーンがよく口にしていた最強と言われる剣士。
この20歳くらいの女性が剣姫。
「一介の冒険者が貴族に指図するとは無礼であろう!」
「貴公は私のことを知っているようだが、冒険者については詳しくないようだな」
「……どういうことだ?」
「1級冒険者は、陛下から爵位を賜ることになっている」
「……」
「つまり、1級冒険者である私は冒険士の身分を持つ貴族だということだ」
「……」
「爵位を持たぬ子爵家の次男である貴公より上の身分になるな」
「っ!」
「コルドゥラ様、まずいですよ」
「ここはもう……」
完全に空気が変わっている。
「さて、もう一度だけ問おう。ここで引き下がるか、それとも、無礼討ちを強行するか?」
「……」
「貴顕として判断をくだすが好い」
「……ちっ! 興が醒めたわ。お前ら、行くぞ」
こちらには目を向けることもなく、広場から去ろうとするコルドゥラ。
けど、ちょっと待て。
「貴公、鞘を忘れているぞ」
そう、これを返さないとな。
「ちっ!」
苛立ちを抑えきれない様子で鞘を受け取り、急ぎ足で広場を後にするコルドゥラ。
取り巻きも彼に従うように去って行く。
「「「「「「「「「「「うおぉぉ!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「わあぁぁ!!!」」」」」」」」」」
途端、周囲から爆発するような歓声が湧きあがった。
「兄さん、良くやったぁ!」
「いいぞ、剣姫!」
「さすが、剣姫イリサヴィア様!」
「あいつ、ざまあみろだぜ」
「ああ、いい気味だ!」
「すっきりしたわ」
「ほんと、いい気分」
さっきまでは、嫌悪の表情や心配そうな表情を浮かべながらも距離を取っていた周りの人たち。
心中では貴族の横暴に我慢がならなかったのだろう。
口々に叫ぶ内容は、こちらに好意的な言葉ばかりだ。
鳴りやまぬ歓声の中。
「イリサヴィア様、ありがとうございました」
まずは、しっかりと感謝の言葉を伝えないとな。
「礼は必要ない。その者たちを助けようとした君こそ、称賛に値する」
「イリサヴィア様も駆けつけていたではないですか」
「……動いたのは君だ。私は何もしていない」
何もしていないわけがない。
「私は剣を受け止めただけです。最後はイリサヴィア様に助けていただきました」
「私が助けずとも、君なら上手くやっていたはず。あの男など何程のこともないだろ」
「いえ、貴族の方が相手ですから……」
「確かに、その点では厄介か」
「はい、イリサヴィア様だからこそ上手く収めることができたのだと思います」
「……」
そんなやり取りをしている、俺たちの後ろから。
「今回のことは、お二方のおかげです。この度は本当にありがとうございました」
カデルの民である父親が謝礼の言葉を述べてくれる。
「ありがとうございました」
「ありがと、ございました」
父親の謝礼につづき、揃って頭を下げる兄妹。
「頭を上げてくれ。今回のことはコルドゥラに非があるのだからな」
「……」
「……」
「……」
「とはいえだ。貴族相手に迂闊なことはしない方がよい。今後は気をつけるように」
「はい、倅も私も肝に銘じます」
「であれば好し」
剣姫イリサヴィア。
彼女自身が語ったように、冒険士という貴族の身分を持つ冒険者なのだが。
どうにも、生粋の貴族のように見えてしまう。
外見や言動は全く違うものの、彼女の気品はレザンジュの王女エリシティア様や辺境伯爵令嬢であるセレス様のそれに近いような……。
「……」
彼女、貴族出身の冒険者なのかもしれない。
「君、何か?」
ああ、ひとつ確認しないとな。
「イリサヴィア様、先ほどの方が今後この3人に害をなすようなことはありませんでしょうか?」
「……十分に考えられることだ。それについては、私が何とかしておこう」
冒険者ギルドを使って、または、貴族の伝手を使って手を打ってくれると?
いずれにしても、ありがたい。
カデルの民の親子も安堵の息をついている。
「よろしくお願いします」
「うむ」
鷹揚に頷く様は、まさに上位者のそれ。
「……」
様になっているどころじゃないな。
やはり、貴族家の出身か。
「君たち親子も安心して仕事を続けると良い」
「……よろしいのですか?」
「問題など、ひとつもない」
「本当に、本当に、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「……」
これで、今回の騒動も無事決着かな。
彼女が剣姫?
あの高名な剣姫だって?
「……」
風になびく濃紺の艶やかな長髪。
貴族を前にしても、微塵の揺るぎも見せない蒼眼。
この凛々しい女性が?
「……」
確かに、群衆の中を駆け抜ける動きは並ではなかった。
今もそう。
恐らくは抑えつけているのであろうが、その身から漏れる気が普通じゃない。
尋常ならざる剣気を纏っている。
「剣姫だって?」
「本当に?」
「でも、あの姿は確かに……」
「間違いない、剣姫だ」
「ああ、俺も見たことがある。あれは本物の剣姫だ」
静まりかえっていた群衆の口々から漏れ出す囁き。
「……」
やはり、そうなんだな。
ギリオンやヴァーンがよく口にしていた最強と言われる剣士。
この20歳くらいの女性が剣姫。
「一介の冒険者が貴族に指図するとは無礼であろう!」
「貴公は私のことを知っているようだが、冒険者については詳しくないようだな」
「……どういうことだ?」
「1級冒険者は、陛下から爵位を賜ることになっている」
「……」
「つまり、1級冒険者である私は冒険士の身分を持つ貴族だということだ」
「……」
「爵位を持たぬ子爵家の次男である貴公より上の身分になるな」
「っ!」
「コルドゥラ様、まずいですよ」
「ここはもう……」
完全に空気が変わっている。
「さて、もう一度だけ問おう。ここで引き下がるか、それとも、無礼討ちを強行するか?」
「……」
「貴顕として判断をくだすが好い」
「……ちっ! 興が醒めたわ。お前ら、行くぞ」
こちらには目を向けることもなく、広場から去ろうとするコルドゥラ。
けど、ちょっと待て。
「貴公、鞘を忘れているぞ」
そう、これを返さないとな。
「ちっ!」
苛立ちを抑えきれない様子で鞘を受け取り、急ぎ足で広場を後にするコルドゥラ。
取り巻きも彼に従うように去って行く。
「「「「「「「「「「「うおぉぉ!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「わあぁぁ!!!」」」」」」」」」」
途端、周囲から爆発するような歓声が湧きあがった。
「兄さん、良くやったぁ!」
「いいぞ、剣姫!」
「さすが、剣姫イリサヴィア様!」
「あいつ、ざまあみろだぜ」
「ああ、いい気味だ!」
「すっきりしたわ」
「ほんと、いい気分」
さっきまでは、嫌悪の表情や心配そうな表情を浮かべながらも距離を取っていた周りの人たち。
心中では貴族の横暴に我慢がならなかったのだろう。
口々に叫ぶ内容は、こちらに好意的な言葉ばかりだ。
鳴りやまぬ歓声の中。
「イリサヴィア様、ありがとうございました」
まずは、しっかりと感謝の言葉を伝えないとな。
「礼は必要ない。その者たちを助けようとした君こそ、称賛に値する」
「イリサヴィア様も駆けつけていたではないですか」
「……動いたのは君だ。私は何もしていない」
何もしていないわけがない。
「私は剣を受け止めただけです。最後はイリサヴィア様に助けていただきました」
「私が助けずとも、君なら上手くやっていたはず。あの男など何程のこともないだろ」
「いえ、貴族の方が相手ですから……」
「確かに、その点では厄介か」
「はい、イリサヴィア様だからこそ上手く収めることができたのだと思います」
「……」
そんなやり取りをしている、俺たちの後ろから。
「今回のことは、お二方のおかげです。この度は本当にありがとうございました」
カデルの民である父親が謝礼の言葉を述べてくれる。
「ありがとうございました」
「ありがと、ございました」
父親の謝礼につづき、揃って頭を下げる兄妹。
「頭を上げてくれ。今回のことはコルドゥラに非があるのだからな」
「……」
「……」
「……」
「とはいえだ。貴族相手に迂闊なことはしない方がよい。今後は気をつけるように」
「はい、倅も私も肝に銘じます」
「であれば好し」
剣姫イリサヴィア。
彼女自身が語ったように、冒険士という貴族の身分を持つ冒険者なのだが。
どうにも、生粋の貴族のように見えてしまう。
外見や言動は全く違うものの、彼女の気品はレザンジュの王女エリシティア様や辺境伯爵令嬢であるセレス様のそれに近いような……。
「……」
彼女、貴族出身の冒険者なのかもしれない。
「君、何か?」
ああ、ひとつ確認しないとな。
「イリサヴィア様、先ほどの方が今後この3人に害をなすようなことはありませんでしょうか?」
「……十分に考えられることだ。それについては、私が何とかしておこう」
冒険者ギルドを使って、または、貴族の伝手を使って手を打ってくれると?
いずれにしても、ありがたい。
カデルの民の親子も安堵の息をついている。
「よろしくお願いします」
「うむ」
鷹揚に頷く様は、まさに上位者のそれ。
「……」
様になっているどころじゃないな。
やはり、貴族家の出身か。
「君たち親子も安心して仕事を続けると良い」
「……よろしいのですか?」
「問題など、ひとつもない」
「本当に、本当に、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「……」
これで、今回の騒動も無事決着かな。
あなたにおすすめの小説
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…