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第5章 王都編
手合わせ 4
<キュベリッツ王国王太子視点>
「おお! 凄いじゃないか」
幻影ヴァルターとアリマ青年の勝負。
想像していた以上の素晴らしい戦いになっている。
「……」
「君の言葉通りだ!」
彼女の言葉を聞いても、いい勝負になるとは思えなかった。
ヴァルターは胸を貸すだけ。
力の差は明らか。
そう思っていたのに。
「むしろ、アリマ青年が押している!」
「……そうね」
「このまま彼が勝つんじゃないか」
この勢いを見ていると、アリマ青年の勝利を想像してしまう。
本当に驚きの展開だよ。
「幻影ヴァルターも年齢には勝てないということかな」
「年齢もそうだけど、師匠は現役を退いているから。動きもあまり良くないわ」
「冒険者は現役でいてこそ、なんだろうね」
「ええ。ただ、それでも、あの青年の動きは……」
*******************************
次の一合で勝負!
一撃に全てを賭けるつもりか!
おもしろい。
やっぱり、ヴァルターさんとの剣戟は面白い。
撃ち合わせる剣の手応え、駆け引き。
静かなる対峙。
その全てに心が躍ってしまう。
剣が好きだという純粋な気持ちを思い出させてくれる。
手合わせを受けて良かった。
今は心からそう思うよ。
ただ、ひとつ。
気になるのは……。
ヴァルターさんの右腕の状態だ。
いくら強靭な筋肉で覆われているとはいえ、右腕にはそれなりの痛みが残っているはず。
その腕で勝負の一撃を放てるのか?
決着の剣撃を?
どうしても、心配してしまうが。
ヴァルターさんの目に揺るぎは見られない。
抑えきれない程の闘志が溢れ出ている。
消していた剣気が漏れ出している。
「……」
ああ、そうだな。
余計なお世話だ。
ヴァルターさんは俺の実年齢より年を重ねた熟練の剣士。
自分の腕の状態を把握できないわけがない。
実際……。
ここにきて、肌に感じる圧力が増している。
今日最大のプレッシャーを感じる。
はは、凄いな。
さすがだよ。
自然と笑みがこぼれてしまう。
「……」
今回の手合わせで、何度も感じたこの感覚。
次の一合で終わってしまうのが残念なくらいだ。
「準備はいいか」
「ええ」
「好し!」
また剣気が消えた。
ヴァルターさん、勝負の一手はやはり無拍子か。
「……」
「……」
静かな正眼の構え。
水の構えとも呼ばれるこの体勢は、全ての攻撃、防御へと変化可能な基本の中段構え。
奇をてらうことのない真っ向勝負。
無拍子での正面からの一撃なんだな。
そういうことなら、こちらも……。
剣先を前に向け、中段に構える。
「……」
「……」
ヴァルターさんの静の空気と俺の剣気が交錯する。
何度目かの静寂が、場を包み込む。
「……」
「……」
お互いの剣先は離れているのに、繋がっているような感覚。
全てがひとつになっていくような異状な体感。
ヴァルターさんの空気は静かで柔らかなまま。
ただ、その高まりは明らか。
つまり……。
決着は近い。
「……」
最後は、ヴァルターさんの一撃を迎え撃つ。
最高の一撃を返し撃ってこそ、意味があるんだ。
「……」
真剣の勝負では勝利優先の戦い方になることが多い。
けど、こんな戦いで真っ向勝負を避けるなんてあり得ないだろ。
そんなもったいないこと、俺にはできない。
だから、返し撃つ。
後の先狙い。
「……」
「……」
ヴァルターさんは完全に弛緩しているように見える。
木剣を正眼に構えているというのに、そう思わせる境地。
確かな研鑽があってこそ辿り着ける領域。
しかし、これは……。
さっきの無拍子より数段上だ。
完璧な無拍子が見られるかもしれないぞ。
となると、こっちもさらに集中する必要がある。
いや……違うか。
相手がこの境地に至っているのなら、単純な集中では対応できない。
過度な集中は、むしろ逆効果だ。
「……」
高ぶった心を抑え、凪いでいく。
静心。
意識を分散させ、全体を捉える。
「……」
「……」
場内は静まり返ったまま。
屋外からは虫の音が聞こえる。
湿った風が頬を撫でる。
汗が頬を伝う。
「……」
「……」
ヴァルターさんの息遣い。
「……」
「……!」
くる!?
全く予備動作がない!
初動を感じさせない完全なる無拍子!
正眼の位置から、最短の距離でこちらの胸に向かってくる静かな一突!!
来ると分かっていても、無拍子を理解していても、今のこの状態でも。
それでもなお、僅かに遅れを取ってしまう。
「っ!」
間に合え!
全速で剣を振るう。
迫る木剣の軌道を逸らすべく、その剣身にこちらの剣身を合わせる!
カシッ!
鈍い音。
芯でとらえることができなかった。
逸らしきれなかった剣先が迫る!
「おお! 凄いじゃないか」
幻影ヴァルターとアリマ青年の勝負。
想像していた以上の素晴らしい戦いになっている。
「……」
「君の言葉通りだ!」
彼女の言葉を聞いても、いい勝負になるとは思えなかった。
ヴァルターは胸を貸すだけ。
力の差は明らか。
そう思っていたのに。
「むしろ、アリマ青年が押している!」
「……そうね」
「このまま彼が勝つんじゃないか」
この勢いを見ていると、アリマ青年の勝利を想像してしまう。
本当に驚きの展開だよ。
「幻影ヴァルターも年齢には勝てないということかな」
「年齢もそうだけど、師匠は現役を退いているから。動きもあまり良くないわ」
「冒険者は現役でいてこそ、なんだろうね」
「ええ。ただ、それでも、あの青年の動きは……」
*******************************
次の一合で勝負!
一撃に全てを賭けるつもりか!
おもしろい。
やっぱり、ヴァルターさんとの剣戟は面白い。
撃ち合わせる剣の手応え、駆け引き。
静かなる対峙。
その全てに心が躍ってしまう。
剣が好きだという純粋な気持ちを思い出させてくれる。
手合わせを受けて良かった。
今は心からそう思うよ。
ただ、ひとつ。
気になるのは……。
ヴァルターさんの右腕の状態だ。
いくら強靭な筋肉で覆われているとはいえ、右腕にはそれなりの痛みが残っているはず。
その腕で勝負の一撃を放てるのか?
決着の剣撃を?
どうしても、心配してしまうが。
ヴァルターさんの目に揺るぎは見られない。
抑えきれない程の闘志が溢れ出ている。
消していた剣気が漏れ出している。
「……」
ああ、そうだな。
余計なお世話だ。
ヴァルターさんは俺の実年齢より年を重ねた熟練の剣士。
自分の腕の状態を把握できないわけがない。
実際……。
ここにきて、肌に感じる圧力が増している。
今日最大のプレッシャーを感じる。
はは、凄いな。
さすがだよ。
自然と笑みがこぼれてしまう。
「……」
今回の手合わせで、何度も感じたこの感覚。
次の一合で終わってしまうのが残念なくらいだ。
「準備はいいか」
「ええ」
「好し!」
また剣気が消えた。
ヴァルターさん、勝負の一手はやはり無拍子か。
「……」
「……」
静かな正眼の構え。
水の構えとも呼ばれるこの体勢は、全ての攻撃、防御へと変化可能な基本の中段構え。
奇をてらうことのない真っ向勝負。
無拍子での正面からの一撃なんだな。
そういうことなら、こちらも……。
剣先を前に向け、中段に構える。
「……」
「……」
ヴァルターさんの静の空気と俺の剣気が交錯する。
何度目かの静寂が、場を包み込む。
「……」
「……」
お互いの剣先は離れているのに、繋がっているような感覚。
全てがひとつになっていくような異状な体感。
ヴァルターさんの空気は静かで柔らかなまま。
ただ、その高まりは明らか。
つまり……。
決着は近い。
「……」
最後は、ヴァルターさんの一撃を迎え撃つ。
最高の一撃を返し撃ってこそ、意味があるんだ。
「……」
真剣の勝負では勝利優先の戦い方になることが多い。
けど、こんな戦いで真っ向勝負を避けるなんてあり得ないだろ。
そんなもったいないこと、俺にはできない。
だから、返し撃つ。
後の先狙い。
「……」
「……」
ヴァルターさんは完全に弛緩しているように見える。
木剣を正眼に構えているというのに、そう思わせる境地。
確かな研鑽があってこそ辿り着ける領域。
しかし、これは……。
さっきの無拍子より数段上だ。
完璧な無拍子が見られるかもしれないぞ。
となると、こっちもさらに集中する必要がある。
いや……違うか。
相手がこの境地に至っているのなら、単純な集中では対応できない。
過度な集中は、むしろ逆効果だ。
「……」
高ぶった心を抑え、凪いでいく。
静心。
意識を分散させ、全体を捉える。
「……」
「……」
場内は静まり返ったまま。
屋外からは虫の音が聞こえる。
湿った風が頬を撫でる。
汗が頬を伝う。
「……」
「……」
ヴァルターさんの息遣い。
「……」
「……!」
くる!?
全く予備動作がない!
初動を感じさせない完全なる無拍子!
正眼の位置から、最短の距離でこちらの胸に向かってくる静かな一突!!
来ると分かっていても、無拍子を理解していても、今のこの状態でも。
それでもなお、僅かに遅れを取ってしまう。
「っ!」
間に合え!
全速で剣を振るう。
迫る木剣の軌道を逸らすべく、その剣身にこちらの剣身を合わせる!
カシッ!
鈍い音。
芯でとらえることができなかった。
逸らしきれなかった剣先が迫る!
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