30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
400 / 1,640
第5章 王都編

迎撃 2

 こっちにも護衛としての準備がある。
 必要な情報は教えてもらわないと、適切な対処ができなくなるんだ。
 最悪、命に関わってくる。
 今回なんかは特にそう。
 襲撃の可能性だけでも教えてほしかった。

「コーキさん、ごめんなさい」

「さっきも言ったが、口止めしたのはオレだ。すまん」

 深く頭を下げるふたり。

「コーキさんには伝えたいとウィル様は言ってたんだよ。それをウチのがね。本当に申し訳なかったよ」

 カロリナさんも横に並んで頭を下げてくる。

「本当に申し訳ない」

「……」

 冒険者ギルドの教官であるヴァルターさんが取った選択なんだ。
 当然、考えはあったんだろう。
 それは理解できる。
 ただ、困った事態に違いはない。
 
 とはいえ、今は。

「……分かりました。もういいですから、頭を上げてください」

「コーキさん……」

 謝罪なんかより、対策だろ。

「ウィルさん、今は襲撃に備えましょう」

「……はい」

「悪い。あとで、きっちり詫びを入れさせてもらう」

「いいですよ、もう」

 ヴァルターさんの詫びって、恐ろしそうだしな。

「それで、どうするんです? この先で待ち伏せされているんですよね?」

「……そうだ」

「迂回できないんですか?」

「迂回しても無駄だろう」

「どのみち追ってくると?」

「ああ。あっちも既に気付いているだろうからな」

「……」

 御者席に出て先を見てみると。

 ……検問所の前にいるな。

 ここから目視できるのだから、あちらも当然気付いているはず。
 つまり、今は様子見といったところか。

「遅かれ早かれ戦いになるということですね」

「そういうことだ」

 退こうが進もうが、戦いにはなる。
 それでも、待ち伏せされているということは罠が設置されている可能性も……。

「少し戻って迎撃しませんか?」

「オレもそれがいいと思う。けど、身体は大丈夫なのか?」

「……ええ、戦えますよ」

 多分、戦えるだろう。
 ただ、思っていた以上に身体が重いんだ。
 記憶の中にある疲労症状より、かなりきつい。

 これ、本当にただの疲労なんだよな?

「無理はしなくていいぞ」

「ここは、無理をする場面でしょ」

「……」

「さあ、行きましょう」

 馬車が進路を逆にとる。

 さて、相手がどう出るか?
 馬車の中から気配を探り続ける、と。

「……」

 こっちが少し移動したところで。

「敵が動き出しましたよ」

 俺が離れた敵の気配を察知できることはヴァルターさんも既に知っている。

「そうか、なら、あそこで待ち伏せるとしよう」

 岩場に囲まれた狭隘きょうあい地。
 迎撃に適した空間が近くにある。

「了解」



 さっきの場所から少し戻った地点にあるこの狭隘地。
 大きな岩に囲まれているおかげで左右の道幅は4メートルもない。

 ヴァルターさんと俺がその狭隘地で待ち構え、ウィルさんとカロリナさんを乗せた馬車は20メートル程後ろに停車している。

 ウィルさんは戦えないだろうが、カロリナさんは元冒険者なので今でもそれなりに戦えるらしい。それに、御者の彼はヴァルターさんの弟子でもある。

 何より、ノワールがいるんだ。
 今となっては、ほんと心強い味方だよ。

 さて、彼らにウィルさんを護ってもらうとして、こちらは迎撃に専念しよう。

「来たぞ!」

「ええ」

「本当に平気なのか?」

「やるしかないでしょ」

「……悪いな」

 ヴァルターさん、今日は謝ってばかりだぞ。

「大丈夫ですよ、戦えますから」

「……」


 ゆっくりとこちらに進んでくる、その数は20人。
 2人が騎乗しており残りは徒歩。
 全員が軽く武装している、か。

「ほぅ、やっぱりあなたもいますか」

 騎乗している1人が話しかけてきた。

「懲りない人ですねぇ」

 それはこっちのセリフだ。

「久しぶりだな、オルセー」


 オルセー。
 夕連亭で俺が倒したあのオルセーが目の前にいる。

 夕連亭での一件は処理が済んでいると聞いていたのに、こうしてオルセーがウィルさんの前に再び現れるとは。

「……」

 ヴァルターさんの話の中で、レンヌ家のオルセーという名前を耳にした時に嫌な予感はしていたんだが、その予感が的中したと。

 おっ、ヴァルターさんが俺の前に。

「これは何の真似だ。レンヌ家の意向なのか?」

「当然でしょう。さあ、ウィルミネアをこちらに渡しなさい。そうすれば、あなたたちは助けてあげますよ」

「そんなことをすると思うのか」

「いいえ、全く思いませんね」

「……」

「確認してあげたのは一族のよしみとでも言いますか。まっ、私の温情ですよ」

「勝手なことばかりしておきながら、よく言えたもんだな」

「心外ですねぇ。勝手なことをしているのはあなた方、コルヌ家でしょうに」

「……どういうことだ?」

「ウィルミネアの件は風根衆の総意ということですよ」

「出まかせを、レンヌ家の考えだろうが」

「いえ、いえ、衆門の総意です。コルヌはそれも知らぬようですね。いや、知らぬのはあなた方だけかな」

「……」

 これは、風向きが良くないんじゃないのか。


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。