30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
404 / 1,640
第5章 王都編

迎撃 6

 俺の体調は万全じゃない。
 マリスダリスの刻宝の影響も残っている。

 それでも、魔落での修業のおかげで、剣を振るうことができた。
 何とか倒すことができた。

「……」

 倒せたのは俺の力だけじゃないな。

 オルセーが油断していたから。
 宝具を使ったことで、俺が動けないと侮っていたから。
 だから、この身体でも一撃で。


「オルセー様!?」
「オルセー様がやられた!」

「そんな馬鹿な……」

「宝具を使ったのに」
「マリスダリスの刻宝が効かないなんて……」


 あっけないような。
 長かったような、短かったような。
 自分でも名状しがたい感情が浮かび上がってくる。

 そんな中、予想通り生まれたのがひとつの思い。

「……」

 一対一の戦闘、しかも剣で相手を手にかけてしまった。
 ついに剣で人を……。

 ……。

 ……。

 なのに、どうしてだろう?
 思っていたほど心が動かない。

 それに、この奇妙な感覚?

 覚悟していたからか?
 体調が悪いからなのか?
 分からない。

 分からないが、悪くないぞ。
 これなら、平常心で戦闘を続けることができる!

「……」

 手に力を入れ、剣を握り直す。

 よし!
 剣を振るえる!


「やられたのか、オルセー」

「でかした!」

 俺のすぐ傍にはヴァルターさんと相手のバシモス。
 戦いの手を止め、こちらを眺めている。

「さすがだな」

「まあ、なんとか」

 残りの連中はオルセーが倒された驚きで呆然と立ち尽くしたまま。

「残りの者は私が相手しますので、ヴァルターさんはそちらをお願いします」

「それは助かるが……顔色が良くないぞ。まだ戦えるのか?」

「やってみますよ」

 やるしかないだろ。

 オルセーの後ろに控えていた武装兵に向け、足を運ぶ。
 少しふらつくが、それはやむを得ないこと。
 体調不良に加え、マリスダリスの刻宝を使われたのだから。

「くっ!?」

「相手はひとりだ」

「オルセー様の仇を取るぞ!」

 数名が自失状態から立ち直ったみたいだ。

「かかれ!」

「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」

 まだ動けない者もいるが、その大半が怒号を上げて向かってくる。
 対するこちらは数歩後退。
 狭隘地で応戦させてもらおう。

「「「「「「「「オオォ!!」」」」」」」」

 殺到してくる武装兵。

 けど、残念だったな。
 ここには多人数が剣を振るう余裕などない。
 せいぜい2、3人がいいところなんだよ。

「「「オオォ!」」」

 先陣として突っ込んできたのは3人。
 後ろには5人が控えている。
 その中には魔法の準備をしている者もいるな。

 なら、まずは。
 後ろの5人に対して。

「雷波!」

 身体の自由を奪う程度の威力を持った一撃を放つ。

「ギャァ!」
「ウグッ!」
「ウゥゥ」
「アッ」
「……」

 その場に崩れ落ちる5人。
 それを見つめる残りの者たちの動きも瞬時に止まってしまう。
 先陣の3人も背後を振り返ったまま。

 そんな隙を見逃してやる必要はない。

「雷波!」

「「「ウッ!」」」

 今度は、その3人がこちらに背を向けたまま地に沈んだ。

 よーし!
 これで残っているレンヌ家の兵士は10人程度。

 しかも、まだ動きを止めている。
 これなら、あと数撃で終われそうだぞ。

 続けて雷波を撃とうとしたところで。

「!?」

 立っていられないほどの目眩が急に襲いかかってきた。
 身体に力も入らない。
 これまでの疲労では経験のない感覚!

「くっ!」

 耐えきれず、片手と片膝を地面につけてしまう。

 まずい。
 まだ戦闘中なのに。

「……」

 すぐには立ち上がれない。
 雷波を放つこともできない。
 他の魔法も……。

 無理だ!

 まずいぞ。

 足音が近づいてくる。
 このままじゃ、なす術がない。

「チャンスだ! かかれぇ!!」

「「「「「オオォ!!」」」」」

「コーキさん!」

 まずい、まずい!

「っ!」

 まだ動けない。
 なら!

「来い!!」

 俺の言葉に呼応するように、目の前の空間に黒い霧が溢れ出す。




感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…