30年待たされた異世界転移

明之 想

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第5章 王都編

迎撃 7

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「来い!!」

 俺の言葉に呼応するように、目の前の空間に黒い霧が溢れ出してくる。
 その霧が球状に集まり、闇色の繭を作り出す。

 そして、闇の中から……。

「オォーン!!」

 顕現したのは漆黒の雄姿!

「オオォーーン!!」

 ノワールだ。

「あいつらの相手を頼む」

 俺の言葉に駆け出すノワール。

「うわぁぁぁ! 何だ、これは?」

 間に合ったか。

「化物だ!」
「こいつは、ダブルヘッド!?」

 本来の身体に戻ったノワールなら、この相手でも問題ないはず。
 時間を稼いでくれるだろう。

 こっちは、その間に簡易治療を。
 収納から取り出した回復薬を口に含み、目眩が若干治まってきたところで治癒魔法を全身にかけてやる。

 これはマリスダリスの刻宝の影響だけじゃない。
 疲労によるものが大きい。

 なら、これで少しは良くなるはず。


「グオォォォ!!」

「駄目だ、攻撃が効かない」
「アッ、アアァ!
「助けてくれ!」

 狭隘地に悲鳴が響き渡っている。

「……」

 ノワールには時間を稼いでもらうつもりだったんだが……。
 レンヌ家の兵士たちを蹂躙している?

 やっぱり、強いな。
 その上、美しく、格好いい。

「コーキさん、大丈夫か?」

 ん?

「……はい、少し休めば大丈夫です」

 ヴァルターさんの方は、まだ決着がついていないようだ。

「そうか! で、あいつ、いつの間に馬車から出て?」

 もちろん、ノワールについてはヴァルターさんとカロリナさんに説明済みだが、俺のもとに転移可能だとは伝えていない。

 そう、今のノワールは俺の下とトトメリウス様の神域の二点間を転移できるだけじゃないんだよ。
 ある程度の距離内なら、どこにいても俺の傍らに呼び出すことができる。

「ノワールは素早いですからね」

「素早いって……」

「ということで、こっちは大丈夫です」

「お、おう」

 微妙な顔でバシモスとの戦いに戻るヴァルターさん。

 さてと。
 
 今回の身体の重さ、体調不良に宝具の効果が重なったからか、ただの疲労とは到底思えない程のものだったが……。

 もうすぐ動けるはず。
 回復薬と治癒魔法の効果で、身体に力が戻りつつあるんだ。
 あと少しの間、ノワール頼むぞ。



 キン、キン、キン!

「グゥオオォォォ!」

「うわぁ」
「もう駄目だ!」
「俺は逃げるぞ」

「待て!」
「戦うんだ!」

 俺の後ろではヴァルターさんとバシモスの戦闘、激しい剣戟の音が聞こえてくる。
 前方ではノワールの蹂躙。

 俺は……。

 そろそろ動けるか?
 両脚に力を入れて立ち上がるが……大丈夫だ。
 剣も、振るえる。

 よし!
 問題ないぞ。
 なら、参戦だ。

 と、剣を手に立ち上がった俺の目の前には。
 ノワールによって作り出された惨状が……。

「ああぁぁ」

「た、助けてくれぇぇ」

 まだ立っているレンヌ家の兵士は2人だけ。
 その2人も、今まさにノワールによって捕えられようとしている。
 残りの者は、皆地面に倒れているといった状況。

「……」

 これは、ちょっと想像以上だぞ。

「オオォォーーン!」

 勝利の雄叫びまで!
 ノワール……。


 さあ、こうなると。
 残る敵はバシモスのみ。
 そっちは、ヴァルターさんが苦戦している、か?

「……」

 鑑定でステータスを確認したところ。
 総合的な能力値はヴァルターさんの方が勝っている。
 剣の腕もヴァルターさんの方が上だろう。

 ただ、相性があまり良くない。

 ヴァルターさんは、攻撃としては剣一辺倒。
 対するバシモスは、攻撃も防御もバランスが取れている上に道具類も並じゃない。
 剣も鎧も一級品。
 さらには、魔法も使えるみたいだ。

 そんなふたりの戦いは……。

 一見するとヴァルターさんが腕力と剣技で優勢に戦っているように見える。
 が、その実、いいように攻めさせられているだけとも考えられる。

 その証拠に、いくら剣で押しても有効な一撃は決まっていない。
 無拍子もバシモスは良く理解しているようで、ヴァルターさんがその体勢に入った時点で大きく距離を取って間合いから離れてしまう。

 そうして距離を取ると、魔法攻撃が繰り出される。

 結果、ヴァルターさんは攻め続けてはいるものの決め手に欠けている状態。

 もちろん、バシモスの剣の腕もかなりのもの。
 そうじゃなきゃ、あのヴァルターさんの剣に対応なんてできない。

 これは……。
 時間がかかりそうだぞ。

「……」

 やはり、助勢すべきか?

 とはいえ、そう簡単でもないな。
 バシモスの軽装鎧には対魔法防御が付与されているようなので、こっちの魔法の効果は期待できない。

 しかも、この狭い空間。
 戦いづらそうだ。

 そんなことを考えながら、参戦のタイミングを計っていると。

「「「「「「「「「「オオォォォ!!」」」」」」」」」」

 背後から喊声かんせいが。

 何だ!?

 しまった!
 かなりの数の兵士がウィルさんの乗る馬車に迫っている!



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