30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

黒都カーンゴルム

 オルセーたちとの戦闘後、国境付近の宿でゆっくりと休んだ翌日。

 目覚めてみると、昨日とは比べ物にならないくらい体調が良くなっていた。
 これなら、もう大丈夫だ。

 ということで、早朝から外に出て動きを確認。
 特に問題もなかったので、そのまま軽い鍛錬へと移ったところ。
 ウィルさんとカロリナさんに止められてしまった。

 もう平気だと言い張ったものの、病み上がりの身体に説得力はないようで……。
 結局、今日も午前中は休むことに。

 たまに体を休めるのも悪くない。
 今はそう思うしかないな。




 レザンジュ王国は、エストラル大陸の中でもキュベリッツ王国と並び称されるほどの大国だ。
 そんな大国なのだから、主要な街道はもちろん整備されている。

 特に王都カーンゴルムへ繋がるこの街道は、ちょっと信じられないくらいに立派なもので。
 こうして馬車に乗っていても、ほとんど揺れることがない。

 晴天の街道の上を揺れることなく進む馬車は、ただただ心地良いばかり。


「のどかですね」

「ほんとに」

 国境を越えてからの旅路は、ずっと穏やかなまま。

 魔物には遭遇せず、野盗も現れず、追手の姿も全く見えない。
 平穏そのものの道行。
 入国前とは大違いだよ。

 ありがたいな。




 そんな穏やかな旅の後に到着したレザンジュの王都カーンゴルム。
 馬車の窓からは、王都の様々な姿が目に入ってくる。

「黒い街並み……」

 思わず声が漏れてしまう。

「白都キュベルリアとは対照的ですね」

「ええ」

 カーンゴルムが黒都と呼ばれる理由が良く分かるな。

「これはこれで壮麗ですけど、でも、ちょっと威圧感ありませんか?」

「黒は、どうしてもそんな感じがしますから。とはいえ、やはり見事なものですよ」

 黒都カーンゴルムは、キュベルリアとは雰囲気こそ違うものの、城壁、大通り、そこに立ち並ぶ建造物と、全てが訪れる者の目を奪うくらい素晴らしい。

 カーンゴルムに入ってまだ少しの時間しか経っていないのに、それでもこちらを魅了するものが随所に見られる。

 サイラスさんとウォーライルさんが称賛するだけのことはあるな。
 白都キュベルリアに劣らないくらいの魅力がある都だよ。

「……」

「……」

 白都キュベルリアに黒都カーンゴルム。
 2つの王都。
 ほんと、対照的だ。

 白都キュベルリアは繊細で絢爛華麗な美しい都。
 黒都カーンゴルムは威風堂々とした力強く雄壮な都。
 どちらも一見の価値、いや必見の価値があるな。

「……」

 当初の予定にはなかった、今回のカーンゴルム訪問。
 こうして訪れることができて良かったと、今は心からそう思えるよ。


 おっ!
 あれが、カーンゴルムの宮城か!

 黒水晶のような漆黒の石で造られた雄大な宮城。
 見上げるこちらを圧倒する空気を放っている!

 なるほど。
 これは威圧感を覚えてしまうな。
 ウィルさんの感想も、納得だ。

 などと考えながら、馬車の窓から外を眺めていると。

 大勢の人で賑わう大通りの中、異質な一団が目に入ってきた。
 今は汗ばむほどの暑さなのに、全員が頭からすっぽりとフードを被っている集団だ。
 かなり目立っているぞ。

 ただ……。

 彼らは、この世界の巡礼者かもしれない。
 そう思い、目を外しかけた時。

 ひとりのフードが風に吹かれ、隠れていた髪が露わに!

「!?」

 限りなく純白に近い白銀の髪。
 それに……。

 風に吹かれて乱れた髪が顔を隠したため、はっきりとは見えなかったけれど。
 まさか、セレス様?

 彼女と共に歩いている者たちの中の何人かも、見覚えのある姿をしているような……。
 そんな気もする。

「……」

 いや、さすがにセレス様ではないか。

 カーンゴルムは、彼女にとっては敵地と言っても過言じゃない。
 当然、安全な場所でもない。
 
 そんな場所にセレス様がいるわけないよな。

 ただ、あの新雪を思わせる髪と肌は、そうそう見られるものじゃ……。


「コーキさん、どうかしましたか?」

「……すみません。ちょっと馬車を停めてもらってもいいですか?」

 迷うなら、確かめればいい。

「どうしたんだ?」

「通りの向こうに、知り合いの姿が見えたんです」

 御者席のヴァルターさんに停車をお願いする。

「そうか、分かった」

 停止した馬車を下り、フードの一団のもとに歩を進めようとしたものの。

 いない。
 見失ってしまった?


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