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第6章 移ろう魂編
カーンゴルムへ 8
<セレスティーヌ視点>
「あと1刻もすれば国境ですよ」
「そうなのですね」
ヴァーンさんの言葉に思わず頬が緩んでしまう。
こんなに早くレザンジュに入れるとは思っていなかったから……。
みんなには無理をしてもらったけれど、旅を急いで本当によかった。
「セレスさん、もう少しです」
「はい」
初日の夜、魔物に襲われるというトラブルがあったあの夜。
無事に黒都に到着できるのか不安に思ってしまった。
でも、その後は大きな問題もなく、こうしてここまで辿り着くことができた。
これも全てみんなのおかげ。
「……」
2日目以降の道中で遭遇した魔物も、この5人の手にかかれば造作もないものだった。
私は後ろでそれを見ているだけ。
本当に頼りになる5人。
そんな仲間が私を助けてくれる。
ありがたいこと。
心からそう思う。
「検問所が問題ですが……。まあ問題ないでしょ」
「本当に大丈夫でしょうか?」
ヴァーンさんはそう言ってくれるけど、私の髪と肌は目立ってしまうから。
「馬車の中でフードを被っていれば問題ないと思いますよ。レザンジュとキュベリッツの関係は良好ですし、検問も厳しくありませんからね。この馬車なら、簡単に通過できるはずです」
「……」
「セレス様、私も問題ないかと思います」
「シアもそう思うのね」
「はい。レザンジュ側もこの検問所をセレス様が通るとは思っていないでしょうし、出入国する者の多いこの検問所では審査もおざなりだと聞いておりますので」
「セレス様、心配要りませんよ」
「ありがとう、シア、アル」
「まっ、俺たちの前に検問所を通過する者の様子を見て問題がありそうなら、一度戻ればいいですしね」
「……分かりました。ヴァーンさん、よろしくお願いします」
「了解。では、国境まではゆっくりしていてください」
「はい」
そのまま馬車に揺られ半刻程過ぎた頃。
「止まれ、止まれ!」
外から大きな声が聞こえてきたと思ったら、馬車が急停車。
馬車の窓から見えるのは、数人の武装した兵士たち。
何が起こっているの?
「おれが見てくる」
「アル?」
「セレス様、大丈夫ですよ」
「そうです。我々がついております」
「ええ、そうね」
でも、何なの?
まだ検問所までは距離があるというのに。
外から何か聞こえてくる。
御者をしてくれているヴァーンさんとアルが兵士と話をしている声。
悪いことが起こらなければいいなと考えていると、アルが戻って来て……。
「セレス様、ここから先は通行止めみたいです」
「えっ?」
「アル、どういうことなの?」
「姉さん、おれにも分かんないよ。でも、あいつらがこの先には通せないって言うからさ」
レザンジュに入ることができない?
「わたくしも見てまいります」
「ディアナ、お願いします」
戻って来たディアナによると、ここから検問所までの間の道はしばらく封鎖されるとのこと。
おそらく1刻から2刻程度で封鎖は解除されるので、それまではここで待機する必要がある。
そういうことらしい。
「他の馬車も待機しておりました」
確かに、窓からも複数の馬車が目に入ってくる。
「王命なら仕方ないですね」
「そうでもないですよ。あいつら詔書どころか命令書も見せませんでしたから。この封鎖もキュベリッツ王家の命令かどうか、あやしいもんです」
御者席を離れ、こちらにやって来たヴァーンさん。
納得がいかないといった顔をしている。
「とはいえ、無理に突破することもできんだろう」
「ああ、ディアナの言う通りだ。封鎖自体はあやしいものだが、すぐに解除されるのなら、おとなしく従った方がいい。いいですか、セレスさん」
「……はい、ここで待機しましょう」
それから四半刻が経過した頃。
前方から、とても大きな音が!
しかも、断続的に続いて。
「何が起こっているのでしょうか?」
「これは戦闘音ですね。封鎖した先で戦闘が行われているのだと思います」
「剣と魔法による戦闘が行われているようですね」
「魔物か?」
「ヴァーンさん?」
「……今のところ魔物の声は聞こえてきません。それに剣がぶつかり合う音が聞こえますので、おそらくは対人の戦闘かと」
「……」
「詳しくは分かりませんが、こうして封鎖までしているとなると厄介事でしょうね」
「では、もうしばらくここで」
「ええ、待機ですね」
**************
ベッドに横たわっている幸奈。
その呼吸を確認しただけで……。
狭くなっていた視野が戻り、余裕が生まれてくる。
冷静になれる。
そうすると見えてくるものも。
「武志……」
眼の下には大きな隈、顔色も悪い。
明らかに心労が見てとれる。
「遅れて、すまなかった」
「……もういいから。こっち来いよ」
「ああ」
ベッド脇に立ち、眺める幸奈は……。
穏やかな呼吸、顔色も悪くない。
何事もなかったかのように、幸奈が俺の手の届く距離で眠っている。
「幸奈……」
手を握り、その温もりを感じると。
安堵と悔恨が入り混じってしまう。
「姉さんの命に別状はないそうだ」
「じゃあ、今は眠っているだけなんだな?」
「そういうことになっている」
そういうこと?
「あと1刻もすれば国境ですよ」
「そうなのですね」
ヴァーンさんの言葉に思わず頬が緩んでしまう。
こんなに早くレザンジュに入れるとは思っていなかったから……。
みんなには無理をしてもらったけれど、旅を急いで本当によかった。
「セレスさん、もう少しです」
「はい」
初日の夜、魔物に襲われるというトラブルがあったあの夜。
無事に黒都に到着できるのか不安に思ってしまった。
でも、その後は大きな問題もなく、こうしてここまで辿り着くことができた。
これも全てみんなのおかげ。
「……」
2日目以降の道中で遭遇した魔物も、この5人の手にかかれば造作もないものだった。
私は後ろでそれを見ているだけ。
本当に頼りになる5人。
そんな仲間が私を助けてくれる。
ありがたいこと。
心からそう思う。
「検問所が問題ですが……。まあ問題ないでしょ」
「本当に大丈夫でしょうか?」
ヴァーンさんはそう言ってくれるけど、私の髪と肌は目立ってしまうから。
「馬車の中でフードを被っていれば問題ないと思いますよ。レザンジュとキュベリッツの関係は良好ですし、検問も厳しくありませんからね。この馬車なら、簡単に通過できるはずです」
「……」
「セレス様、私も問題ないかと思います」
「シアもそう思うのね」
「はい。レザンジュ側もこの検問所をセレス様が通るとは思っていないでしょうし、出入国する者の多いこの検問所では審査もおざなりだと聞いておりますので」
「セレス様、心配要りませんよ」
「ありがとう、シア、アル」
「まっ、俺たちの前に検問所を通過する者の様子を見て問題がありそうなら、一度戻ればいいですしね」
「……分かりました。ヴァーンさん、よろしくお願いします」
「了解。では、国境まではゆっくりしていてください」
「はい」
そのまま馬車に揺られ半刻程過ぎた頃。
「止まれ、止まれ!」
外から大きな声が聞こえてきたと思ったら、馬車が急停車。
馬車の窓から見えるのは、数人の武装した兵士たち。
何が起こっているの?
「おれが見てくる」
「アル?」
「セレス様、大丈夫ですよ」
「そうです。我々がついております」
「ええ、そうね」
でも、何なの?
まだ検問所までは距離があるというのに。
外から何か聞こえてくる。
御者をしてくれているヴァーンさんとアルが兵士と話をしている声。
悪いことが起こらなければいいなと考えていると、アルが戻って来て……。
「セレス様、ここから先は通行止めみたいです」
「えっ?」
「アル、どういうことなの?」
「姉さん、おれにも分かんないよ。でも、あいつらがこの先には通せないって言うからさ」
レザンジュに入ることができない?
「わたくしも見てまいります」
「ディアナ、お願いします」
戻って来たディアナによると、ここから検問所までの間の道はしばらく封鎖されるとのこと。
おそらく1刻から2刻程度で封鎖は解除されるので、それまではここで待機する必要がある。
そういうことらしい。
「他の馬車も待機しておりました」
確かに、窓からも複数の馬車が目に入ってくる。
「王命なら仕方ないですね」
「そうでもないですよ。あいつら詔書どころか命令書も見せませんでしたから。この封鎖もキュベリッツ王家の命令かどうか、あやしいもんです」
御者席を離れ、こちらにやって来たヴァーンさん。
納得がいかないといった顔をしている。
「とはいえ、無理に突破することもできんだろう」
「ああ、ディアナの言う通りだ。封鎖自体はあやしいものだが、すぐに解除されるのなら、おとなしく従った方がいい。いいですか、セレスさん」
「……はい、ここで待機しましょう」
それから四半刻が経過した頃。
前方から、とても大きな音が!
しかも、断続的に続いて。
「何が起こっているのでしょうか?」
「これは戦闘音ですね。封鎖した先で戦闘が行われているのだと思います」
「剣と魔法による戦闘が行われているようですね」
「魔物か?」
「ヴァーンさん?」
「……今のところ魔物の声は聞こえてきません。それに剣がぶつかり合う音が聞こえますので、おそらくは対人の戦闘かと」
「……」
「詳しくは分かりませんが、こうして封鎖までしているとなると厄介事でしょうね」
「では、もうしばらくここで」
「ええ、待機ですね」
**************
ベッドに横たわっている幸奈。
その呼吸を確認しただけで……。
狭くなっていた視野が戻り、余裕が生まれてくる。
冷静になれる。
そうすると見えてくるものも。
「武志……」
眼の下には大きな隈、顔色も悪い。
明らかに心労が見てとれる。
「遅れて、すまなかった」
「……もういいから。こっち来いよ」
「ああ」
ベッド脇に立ち、眺める幸奈は……。
穏やかな呼吸、顔色も悪くない。
何事もなかったかのように、幸奈が俺の手の届く距離で眠っている。
「幸奈……」
手を握り、その温もりを感じると。
安堵と悔恨が入り混じってしまう。
「姉さんの命に別状はないそうだ」
「じゃあ、今は眠っているだけなんだな?」
「そういうことになっている」
そういうこと?
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