426 / 1,640
第6章 移ろう魂編
病室 2
この翠緑の玉石は、契りの宝珠という名の魔道具。
生命力(HP)と魔力(MP)を宝珠に込めると透明度が増し、それが抜けると濁ってしまう性質を持つ。
もちろん、その価値は透明度にあるわけじゃない。
透明な状態の宝珠は、持ち主の生命が危機に瀕した際に効力を発揮する。
つまり、宝珠に込められた生命力を持ち主に注ぐことができると。
そういうことらしい。
とはいえ、宝珠の効果は大したものじゃない。
保存できる生命力が僅かなものだからだ。
宝珠内の生命力では、持ち主の命を助けるには少なすぎる。
お守り程度の効果しかないってこと。
そう考えると、些細な効果しかない魔道具に思えるが、実はそうじゃない。
もうひとつの隠された効能があるからだ。
俺はその効能を鑑定で見つけることができたから、購入したんだよ。
2つ目の効能。
それは、宝珠と俺との間に経路を繋ぐことで効果を発揮する。
経路で繋がっていると、俺と宝珠の距離がどれだけ離れていようと宝珠の中の失われた生命力を一定時間補充し続けることができるんだ。
「……」
幸奈が睡眠薬の過剰摂取で意識を失った時、生命の危機に瀕した時。
まず宝珠内の生命力が使われ、それでは不足していたために俺から生命力を吸い取ったと。
吸い取り続けたと。
そういうことなんだろう。
オルセーと戦う直前に感じていた疲労と発熱の原因は、この契りの宝珠の影響だったんだな。
あの時は辛かったけれど、今のこの状況を考えれば何てことはない。
良かった!
よくぞ、異世界にいた俺から生命力を汲み取ってくれた。
本当に……。
「……」
この宝珠。
こちらの世界の魔力を持たない人間に効果があるのかは不明だった。
異なる世界を渡って俺の生命力が届くかなんて、あやしいものだった。
正直、期待なんてしていなかった。
それでも美しい石ではあったし、お守り代わりに幸奈に持ってもらうのも悪くないと思ってプレゼントしたんだ。
あの時、この契りの宝珠をプレゼントしておいて良かった。
心からそう思う。
「……」
幸奈……。
お前のこと何も分かっていなかった俺だけど、少しは助けになったかな。
「……」
これからは、もっと助けてやるからな。
そう、まずは治癒魔法だ。
ん、幸奈の腕がベッドから落ちかけている。
腕を取ってベッドの上に……。
「!?」
幸奈の腕の内側。
そこには無数の!
痛々しい……。
……。
……。
幸奈……。
そうだったのか……。
今回だけじゃなかったんだな。
「……」
ごめん。
ごめんな、幸奈。
俺は本当に何も分かっていなかった。
ごめん。
本当にごめん。
「っ……」
情けなくて、悔しくて!
悲しくて、情けなくて、情けなくて……。
自分が嫌になる!
ベッドの上で穏やかに横たわる幸奈の姿。
正視できない。
「……」
幸奈……。
だから、幸奈はいつも長袖を。
傷痕を見られたくなかったから。
なのに、俺はいつも無神経に……。
暑くないのか?
半袖にしろよって。
幸奈の気持ちも知らずに。
何も知らずに。
ずっと苦しんでいたなんて知らずに。
「……」
何度も口にしてしまった。
そんな俺に、幸奈はいつも笑顔で返してくれた。
あぁ……。
……。
……。
ごめん。
ごめんな、幸奈。
***********************
<セレスティーヌ視点>
国境にある検問所にもうすぐ到着できるというところで足止めをされてしまった私たちの馬車。
そのすぐ近くで、人の争う声が聞こえてきた。
「また何か起こっているみたいですね」
窓から外を覗いてみると、商人のような姿をした者と兵士たちが揉めている。
「あの商人、封鎖を無視して通ろうとしているみたいですよ」
「そんなことを?」
危険では?
生命力(HP)と魔力(MP)を宝珠に込めると透明度が増し、それが抜けると濁ってしまう性質を持つ。
もちろん、その価値は透明度にあるわけじゃない。
透明な状態の宝珠は、持ち主の生命が危機に瀕した際に効力を発揮する。
つまり、宝珠に込められた生命力を持ち主に注ぐことができると。
そういうことらしい。
とはいえ、宝珠の効果は大したものじゃない。
保存できる生命力が僅かなものだからだ。
宝珠内の生命力では、持ち主の命を助けるには少なすぎる。
お守り程度の効果しかないってこと。
そう考えると、些細な効果しかない魔道具に思えるが、実はそうじゃない。
もうひとつの隠された効能があるからだ。
俺はその効能を鑑定で見つけることができたから、購入したんだよ。
2つ目の効能。
それは、宝珠と俺との間に経路を繋ぐことで効果を発揮する。
経路で繋がっていると、俺と宝珠の距離がどれだけ離れていようと宝珠の中の失われた生命力を一定時間補充し続けることができるんだ。
「……」
幸奈が睡眠薬の過剰摂取で意識を失った時、生命の危機に瀕した時。
まず宝珠内の生命力が使われ、それでは不足していたために俺から生命力を吸い取ったと。
吸い取り続けたと。
そういうことなんだろう。
オルセーと戦う直前に感じていた疲労と発熱の原因は、この契りの宝珠の影響だったんだな。
あの時は辛かったけれど、今のこの状況を考えれば何てことはない。
良かった!
よくぞ、異世界にいた俺から生命力を汲み取ってくれた。
本当に……。
「……」
この宝珠。
こちらの世界の魔力を持たない人間に効果があるのかは不明だった。
異なる世界を渡って俺の生命力が届くかなんて、あやしいものだった。
正直、期待なんてしていなかった。
それでも美しい石ではあったし、お守り代わりに幸奈に持ってもらうのも悪くないと思ってプレゼントしたんだ。
あの時、この契りの宝珠をプレゼントしておいて良かった。
心からそう思う。
「……」
幸奈……。
お前のこと何も分かっていなかった俺だけど、少しは助けになったかな。
「……」
これからは、もっと助けてやるからな。
そう、まずは治癒魔法だ。
ん、幸奈の腕がベッドから落ちかけている。
腕を取ってベッドの上に……。
「!?」
幸奈の腕の内側。
そこには無数の!
痛々しい……。
……。
……。
幸奈……。
そうだったのか……。
今回だけじゃなかったんだな。
「……」
ごめん。
ごめんな、幸奈。
俺は本当に何も分かっていなかった。
ごめん。
本当にごめん。
「っ……」
情けなくて、悔しくて!
悲しくて、情けなくて、情けなくて……。
自分が嫌になる!
ベッドの上で穏やかに横たわる幸奈の姿。
正視できない。
「……」
幸奈……。
だから、幸奈はいつも長袖を。
傷痕を見られたくなかったから。
なのに、俺はいつも無神経に……。
暑くないのか?
半袖にしろよって。
幸奈の気持ちも知らずに。
何も知らずに。
ずっと苦しんでいたなんて知らずに。
「……」
何度も口にしてしまった。
そんな俺に、幸奈はいつも笑顔で返してくれた。
あぁ……。
……。
……。
ごめん。
ごめんな、幸奈。
***********************
<セレスティーヌ視点>
国境にある検問所にもうすぐ到着できるというところで足止めをされてしまった私たちの馬車。
そのすぐ近くで、人の争う声が聞こえてきた。
「また何か起こっているみたいですね」
窓から外を覗いてみると、商人のような姿をした者と兵士たちが揉めている。
「あの商人、封鎖を無視して通ろうとしているみたいですよ」
「そんなことを?」
危険では?
あなたにおすすめの小説
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…