438 / 1,640
第6章 移ろう魂編
急転 6
<セレスティーヌ視点>
「セレス様……」
「がっかりさせて、ごめんなさい」
「いえ、そんな! 謝らないでください。思い出されただけで、わたしは嬉しいですから」
「わたくしもそう思います。それに、こうして思い出されたのですから、少しずつセレスティーヌ様の記憶も完全なものに戻っていくはずです」
「ディアナの言う通りですよ。きっとすぐに戻りますって」
「……」
シアさん、ディアナさん、ヴァーンさんの気遣いがありがたくて。
でもやっぱり、申し訳ない気持ちが生まれてしまう。
「ところで、セレスさん。その話し方やめませんか。なんか調子狂っちまうんで」
「ヴァーン!」
「きさま!」
「シアもディアナもそう思ってんだろ。それに、こういうのは形からってのが大事なんだぜ」
「……」
「セレスさんが前の口調で話せば、きっちり記憶も戻るんじゃねえのか」
ヴァーンさんの言う通りかもしれない。
「あの、すぐには難しいですけど、少しずつ以前のかたちに戻していきますね」
前の話し方はよく思い出せない。
ただ、ここは自分から動かないと。
「セレス様……無理はなさらないでくださいね」
「シアさん、ありがとう。それで……」
まだ実感はないのだけれど、気になることが。
「父は無事なのでしょうか?」
「はい。かなり疲弊されてはいましたが、ご無事です」
「では、今は元気にこちらで?」
「それが……。セレス様がお眠りになられている間に、先にワディンの方に戻られまして。今はその旅路の途中かと」
「……そうだったのですね」
「はい」
ここにはいない。
それでも、無事なら。
「ところで、セレスティーヌ様。今後のことですが」
「ディアナさん、その話は後にしませんか」
「いや、可能な時に話だけでもしておいた方がいい」
「セレス様は本調子ではないのですよ」
「……」
「後にしましょう」
シアさんがわたしの体調を気遣って、話を止めてくれる。
でも。
「シアさん、わたしは平気です」
「ですが」
「大丈夫ですから。ディアナさん、話してください」
「……はい。実は問題がありまして」
「問題とは何でしょうか?」
「この村の安全性です。今はまだ安全ですが、それもいつまで保つか分かりません。レザンジュ側も動き出していますので」
「……」
「ですので、できるだけ早くワディンに向けて移動していただければと」
「いつ出発すれば?」
「明日にでも」
ディアナさんの話によると、眠ったままの状態でもわたしを移動させるべきだと考えていたらしい。こうして意識が戻ったのなら、なおさらということだ。
「セレス様……」
シアさんをはじめ、全員がわたしの言葉を待っている。
「分かりました。明日、ここを発ちましょう」
まだ知識も情報も曖昧な状態で、事を判断するなんてできないわたし。
それなら、皆さんが良いと考えていることに従うだけ。
「ディアナさん、出発はセレス様の明日の容態次第ですよ」
「もちろんだ、シア殿」
わたしの体調次第ではあるけれど、明日の朝にこの村を発って故郷であるワディンの地へと出発することが決定した。
******************
幸奈の病室を初めて訪れた日。
不甲斐なくて、情けなくて、心が痛くて……。
どうしようもなく、自分のことが嫌になったあの日。
あの日以来、自分を許せないまま。
それでも、毎日幸奈のもとに通っている。
「……」
そんな俺の目の前にいる幸奈。
初日から全く変化は見られず。
目を覚ます素振りもない。
だから……。
俺は自分にできる全ての治療を試し、あとはただ。
ただ、幸奈のそばで座っているだけ。
「兄さん、どうしたんだ?」
「ああ、少し考え事をな」
幸奈の病室では、武志とふたりになることが多い。
必然、武志と話をする時間も多くなる。
なので、武志とは色々な話をした。
お互いの知らないことも。
とにかく、たくさんの話を……。
そのおかげか、ここ数日で武志との距離はかなり縮まったと思う。
疎遠だった数年の時間も少しは取り戻すことができたかな。
「身体、大丈夫なのか?」
「問題ない。武志こそ、無理しすぎるなよ」
「それ、こっちのセリフだって」
「……」
とにかく、日本での俺は病室と自室で過ごすばかり。
ただ時間だけが過ぎていく日々だ。
あちらの世界、ウィルさんの方はというと……。
病室を訪れる合間に一度だけカーンゴルムに戻り、ウィルさんに護衛契約の解除を許してもらった。
急用ができたので今すぐオルドウに戻りたいと話をしたところ、詳しい事情も聞かず快く許可してくれたウィルさん。
突然のことだったのに、こちらの心配までしてくれた。
オルドウの夕連亭に戻るまで護衛をする約束だったのに……。
本当にありがたい。
そして、申し訳ない。
けど、今は。
今は幸奈のもとを離れたくないんだ!
「セレス様……」
「がっかりさせて、ごめんなさい」
「いえ、そんな! 謝らないでください。思い出されただけで、わたしは嬉しいですから」
「わたくしもそう思います。それに、こうして思い出されたのですから、少しずつセレスティーヌ様の記憶も完全なものに戻っていくはずです」
「ディアナの言う通りですよ。きっとすぐに戻りますって」
「……」
シアさん、ディアナさん、ヴァーンさんの気遣いがありがたくて。
でもやっぱり、申し訳ない気持ちが生まれてしまう。
「ところで、セレスさん。その話し方やめませんか。なんか調子狂っちまうんで」
「ヴァーン!」
「きさま!」
「シアもディアナもそう思ってんだろ。それに、こういうのは形からってのが大事なんだぜ」
「……」
「セレスさんが前の口調で話せば、きっちり記憶も戻るんじゃねえのか」
ヴァーンさんの言う通りかもしれない。
「あの、すぐには難しいですけど、少しずつ以前のかたちに戻していきますね」
前の話し方はよく思い出せない。
ただ、ここは自分から動かないと。
「セレス様……無理はなさらないでくださいね」
「シアさん、ありがとう。それで……」
まだ実感はないのだけれど、気になることが。
「父は無事なのでしょうか?」
「はい。かなり疲弊されてはいましたが、ご無事です」
「では、今は元気にこちらで?」
「それが……。セレス様がお眠りになられている間に、先にワディンの方に戻られまして。今はその旅路の途中かと」
「……そうだったのですね」
「はい」
ここにはいない。
それでも、無事なら。
「ところで、セレスティーヌ様。今後のことですが」
「ディアナさん、その話は後にしませんか」
「いや、可能な時に話だけでもしておいた方がいい」
「セレス様は本調子ではないのですよ」
「……」
「後にしましょう」
シアさんがわたしの体調を気遣って、話を止めてくれる。
でも。
「シアさん、わたしは平気です」
「ですが」
「大丈夫ですから。ディアナさん、話してください」
「……はい。実は問題がありまして」
「問題とは何でしょうか?」
「この村の安全性です。今はまだ安全ですが、それもいつまで保つか分かりません。レザンジュ側も動き出していますので」
「……」
「ですので、できるだけ早くワディンに向けて移動していただければと」
「いつ出発すれば?」
「明日にでも」
ディアナさんの話によると、眠ったままの状態でもわたしを移動させるべきだと考えていたらしい。こうして意識が戻ったのなら、なおさらということだ。
「セレス様……」
シアさんをはじめ、全員がわたしの言葉を待っている。
「分かりました。明日、ここを発ちましょう」
まだ知識も情報も曖昧な状態で、事を判断するなんてできないわたし。
それなら、皆さんが良いと考えていることに従うだけ。
「ディアナさん、出発はセレス様の明日の容態次第ですよ」
「もちろんだ、シア殿」
わたしの体調次第ではあるけれど、明日の朝にこの村を発って故郷であるワディンの地へと出発することが決定した。
******************
幸奈の病室を初めて訪れた日。
不甲斐なくて、情けなくて、心が痛くて……。
どうしようもなく、自分のことが嫌になったあの日。
あの日以来、自分を許せないまま。
それでも、毎日幸奈のもとに通っている。
「……」
そんな俺の目の前にいる幸奈。
初日から全く変化は見られず。
目を覚ます素振りもない。
だから……。
俺は自分にできる全ての治療を試し、あとはただ。
ただ、幸奈のそばで座っているだけ。
「兄さん、どうしたんだ?」
「ああ、少し考え事をな」
幸奈の病室では、武志とふたりになることが多い。
必然、武志と話をする時間も多くなる。
なので、武志とは色々な話をした。
お互いの知らないことも。
とにかく、たくさんの話を……。
そのおかげか、ここ数日で武志との距離はかなり縮まったと思う。
疎遠だった数年の時間も少しは取り戻すことができたかな。
「身体、大丈夫なのか?」
「問題ない。武志こそ、無理しすぎるなよ」
「それ、こっちのセリフだって」
「……」
とにかく、日本での俺は病室と自室で過ごすばかり。
ただ時間だけが過ぎていく日々だ。
あちらの世界、ウィルさんの方はというと……。
病室を訪れる合間に一度だけカーンゴルムに戻り、ウィルさんに護衛契約の解除を許してもらった。
急用ができたので今すぐオルドウに戻りたいと話をしたところ、詳しい事情も聞かず快く許可してくれたウィルさん。
突然のことだったのに、こちらの心配までしてくれた。
オルドウの夕連亭に戻るまで護衛をする約束だったのに……。
本当にありがたい。
そして、申し訳ない。
けど、今は。
今は幸奈のもとを離れたくないんだ!
あなたにおすすめの小説
ひだまりのFランク冒険者
みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。
そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。
そんな中
冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。
その名は、リルド。
彼は、特に何もない感じに毎日
「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。
この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達より強いジョブを手に入れて無双する!
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。
ネット小説やファンタジー小説が好きな少年、洲河 慱(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りに雑談をしていると突然魔法陣が現れて光に包まれて…
幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は【勇者】【賢者】【剣聖】【聖女】という素晴らしいジョブを手に入れたけど、僕はそれ以上のジョブと多彩なスキルを手に入れた。
王宮からは、過去の勇者パーティと同じジョブを持つ幼馴染達が世界を救うのが掟と言われた。
なら僕は、夢にまで見たこの異世界で好きに生きる事を選び、幼馴染達とは別に行動する事に決めた。
自分のジョブとスキルを駆使して無双する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?」で、慱が本来の力を手に入れた場合のもう1つのパラレルストーリー。
11月14日にHOT男性向け1位になりました。
応援、ありがとうございます!
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。