30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

急転 7

<セレスティーヌ視点>



『セレス、お前が私を助けに!?』

『お父様、私だけではありません。ここにいる皆の力を借りてお父様を助けることができたのです』

『……そうだな。皆のおかげだ。それでも、セレスが助けに来てくれた事実に変わりはない』

『……はい』

『このような勇敢な娘を持てたこと、私は誇りに思うぞ』

『お父様……』

『心から感謝するよ、セレス』

『……』

 嬉しい。
 お父様にこうしてまた会えたこと。
 お力になれたこと。

 そして、お父様に認めてもらえたこと。
 神娘ではなく、ひとりの娘として。

 そう、あの瞬間。
 私は間違いなく幸せを感じていた。
 今まで感じたことのない幸せを。

「……」

 私はいつも家族のみんなに可愛がってもらっていた。
 神娘として大切にもされてきた。
 神娘の力を褒められもした。

 でも、神娘ではない素のままの私はどうなのだろう?
 ただの娘としての私は?
 ひとりの女性としては?

 本当の私を見てもらえているのか?
 必要とされているのか?

 そんな疑問が頭から離れることはなかった。

 本当の私を分かってもらいたい。
 認めてもらいたい。

 そう願っていたのに、いつの間にか神娘の仮面を被り。
 それが日常のこととなってしまっていた。
 仮面を外すことのない時間が普通に……。

 そんな私のことを皆は褒め、これぞ真の神娘だと言って敬ってくれたけど。
 決してそれが嫌だったわけではないけれど。

 でも、私の中身は違う。
 違うから……。

 本当の私を認めてもらいたいという思いは、満たされることはなった。

 ユーナスあにさまに理解してもらうまでは。

「……」

 本当の私を知っているのはユーナスあにさま。
 そして、コーキさん……。

 えっ?
 コーキさん?

 どうして?
 どうして、コーキさんのことが今頭に浮かんだの?

 確かに、あの地下の世界で。
 極限状態で一緒に過ごしたけれど。

「……」

 コーキさん、ある程度は私のことを理解していると思う。
 でも、本当の私まで理解しているはずがない。

 だって、見せてないから。
 情けない私の本質を知らないのだから。

 それなのに、どうしてコーキさんの名前が?



『閣下、セレスティーヌ様。お話は後程に。まずは、ここからの脱出を!』

『うむ。今はワイルズの指示に従うとしよう。頼んだぞ』

『はっ』

 そうだ!
 ワイルズの言う通り、お父様と共に今は早く脱出しないと。
 瑠璃離宮の中で、ゆっくりなんてしてられない。
 まだ、救出作戦は終わっていないのよ!

 っ?
 終わっていない??

「……」

 救出作戦は成功したのでは?

 これは……?

 夢?
 私、夢の中にいるの?

「……」

 ただの夢?
 それとも、白昼夢?
 まさか、予知の夢?

 すると。

「何!?」

 目の前が一瞬で切り替わり、そこには。

『セレス様、無理はなさらないでください。そんなに祝福をお使いになると、お身体に障ります』

『私は大丈夫ですよ、シア』

『大丈夫ではありません。お顔の色も良くないです』

『……ここには治癒魔法を使える者が少ないのですから、できる者が頑張らないと』

『ですが……』


 私が喋っている。
 それを私が見ている。

 やっぱり夢なの?
 けど、この場面は……。


『あっ!?』

『セレス様、大丈夫ですか?』

『セレス様?』

『『『セレス様!?』』』


 これは……!
 思い出した!

 ここ、あの救出作戦の後だ。
 私は倒れてしまったんだ。

 それで、私は……。

 ……。

 ……。

 ……。



 暗い。
 とても暗い。

 何も見えない。
 何も感じない。

 気付いた時には、私はそんな空間にいた。

「……」

 暗いのに、どうしてか。
 不安を感じることはない。

 とても不思議な感覚が……。




******************




 毎日訪れている病室。
 俺の目に映る幸奈の姿には、やっぱり変わりはない。

「幸奈……」

 ベッドの上に横たわる幸奈。
 その表情はとても穏やかで、今にも目を覚ますのではないかと思ってしまう。

 けれど。

 ずっと、そう思うだけ。
 依然、幸奈の意識が戻ることはない。

「……」

 今は病室に武志の姿がない。
 今日の午前中、学校で用事があるそうだ。

 幸奈の両親も今はいない。
 いや、今だけじゃないな。
 ふたりがこの病室を訪れることなんて、ほとんどないのだから。
 実際、俺はこの部屋で幸奈の両親に会っていない。

「……」

 今回、武志と話をすることで知った事実。
 決して良好とは言えない両親と幸奈との複雑な関係。

 幸奈が今までどういった環境で暮らしてきたのかを初めて知った。

「はぁ……」

 俺は本当に何も知らなかったんだな。
 それに、知ろうともしていなかった。
 前回の人生でも、今回の人生でも……。

 ほんと、俺はどうしようもないな……。

「……」

 けど!
 遅くなったけど、今回はこうして知ることができた。
 なら、この人生では対処できる。
 解決策を一緒に考えることもできる。

 だから、目覚めてくれよ。
 なっ、幸奈。
 お願いだ!


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