30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
442 / 1,640
第6章 移ろう魂編

急転 10

<セレスティーヌ視点>



 何も見えない、何も感じない……。

 何もない空間。

 そんな場所にいきなり現れた光!

 優しそう。
 それに、とっても落ち着く。
 まるで、親しい人みたいな光。

 でも、悲しそう……。

 初めてみる光なのに、はっきりと感じることができる。
 不思議な感覚。

 だから、私は光に向かって。
 ゆっくりと進み……。

 すると、その光もこちらに向かって動き出し。
 私と重なって……。

 ……。

 ……。





「……」

 温かい……?

 暑い?
 眩しい?

 これ……。

 明るい日差しに意識が浮上してくる。
 でも、目がなかなか開かない。

 瞼が重い。
 体が重い。
 上手く動かない。

「……」

 どうしたのかしら?

 私は……?

「……」

 あっ!?
 そうだ!

 お父様の救出作戦の後。
 みんなの治療を終えて。
 部屋に戻った私はそこで!

 意識を失ってしまったのね。
 それで、そのまま眠ってしまった……。

「……」

 ああぁ!
 恥ずかしい。

 祝福はたくさん使ったけれど、そんなことで意識を失うなんて。
 みんなには平気だと言っていたのに。

 確かに、祝福をこんなに使ったのは初めて。
 それでも、まさかこんなことになるなんて想像もしていなかった。

「……」

 私は、自分の身体のことも分かっていないんだ。

 本当に恥ずかしいし、情けない。
 不甲斐ない。

 けど、今はそれより。

 みんなの容態を確認する必要がある。
 それに、お父様。
 お父様は?

 早く起きて!
 目を開かないと!

「……」

 えっ!?

 重い瞼を開き、体に力を入れて起き上がった私の目に入ってきたのは……。

 初めて見る眺め!

「……」

 見知らぬ壁に、見知らぬ天井、見知らぬ窓……。

「……」

 壁と天井は今まで見たことがないくらい真白で綺麗。
 窓は信じられないくらい透き通っている。

 それに、ふかふかの布団にベッド。

 この部屋は?
 いったい?

「……」

 こんな部屋の記憶なんてない。
 何より、私が倒れた部屋じゃないから……。

 どういうこと?
 ここはどこなの?

「……誰かいませんか?」

 返事はない。
 誰もいない?

 こんな部屋にひとり。
 見知らぬ場所に、私ひとり。

 ひとり……。

「……」

 この状況に、つい思い出してしまう。
 テポレン山で彷徨っていた時のことを。
 ディアナやユーフィリアと離れひとりで山中を歩いていた、あの時を。

「っ!?」

 急に不安な気持ちが心の中に生まれてきた。
 不安で怖くて、押しつぶされそうな……。

 でも。
 外に行けば誰かいるはず。
 この部屋から出れば、問題ない。
 ひとりじゃない!

 そう思うと、少し楽に……。


「……」

 この部屋?

 初めて見る部屋。

 少し狭いけれど、白くて綺麗。
 清潔で明るい部屋。

 外から日が差しているのに、天井の照明も光っている。
 照明の魔道具は見たことのない形。

「……」

 とても柔らかいベッド。
 今身に着けている服も初めて見るもの。

 初めて。
 未知の部屋。

 なのに、なぜか……。

 知っている?

 どうして?

 ……。

 ……。


 ああ!
 そうだ。

 予知。
 予知で見た部屋!

 あの部屋なんだわ。

 ということは、ここは予知で見た世界!
 本当に?

「……」

 なぜ私がこの予知の部屋にいるのか分からない。
 まだ信じきれない。

 けど、ここには……。

 コーキさんがいるはず。
 ここが予知の場所なら、きっとコーキさんが!

「……」

 一緒に旅に出れなかったコーキさん。
 隠れ里にいないはずのコーキさん。

 私の傍にいるはずがない。
 ただ、ここは予知の場所!

 そんなことを考えた次の瞬間。

 ガチャッ!

「あっ!」

 扉の開く音!
 息がとまってしまう。

「……」

 姿を現したのは……。

「っ!?」

 初めて見る服装。
 髪色も違う。

 けど……。

 コーキさんだ。
 間違いない。

 ああぁ。
 やっぱり会えた!

「コーキさん!?」

 驚いたような表情のコーキさん。
 私も同じく驚いている。

「……」

 私が意識を失う前。

 コーキさんは、あの村にいなかった。
 村の存在も知らないはず。

 それなのに、なぜ私のそばにいるの?

 予知通りだけど。
 嬉しいけれど。
 信じられない。

 まさか、夢?
 私はまた夢を見ている?

 違う。
 そんなはずない!
 
 だけど。

「……コーキさんが、どうして?」




***********************




「私は、テポレン山であなたに助けてもらったセレスです」

「……」

 セレス様?
 今目の前にいる幸奈がセレス様?

「……」

 いや、何を考えてるんだ俺は。
 幸奈がセレス様だなんて、あり得ないだろ。

「コーキさん……」

 俺の目に映る姿は幸奈そのもの。
 それに、幸奈はずっとここで眠っていたんだ。
 そもそも、セレス様がこの世界に来る手段なんてない。

「……」

 ただ、この幸奈はセレス様の名前を知っている。
 テポレン山を知っている。
 幸奈が知るはずのない知識を持っている。

 なら……。

 あり得るのか?
 そんなことが?


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。