30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

エビルズピーク 1

<ヴァーンベック視点>



「シア、ユーフィリア、いくぞ!」

 まずは、こっちの3人で。

「ファイヤーボール!」
「ファイヤーボール!」
「ファイヤーアロー!」

「ギャン!」
「ギャン!」
「ギャワン!」

 先制の魔法攻撃、成功だ。

「アイスアロー!」
「ストーンバレット!」
「ファイヤーボール!」
「ウォーターアロー!」

 少し遅れて、騎士たちの魔法も炸裂。
 連続での魔法攻撃に数頭のグレーウルフが倒れ、残りのやつらも動きが止まった。

 今回は詠唱する余裕があったからな。
 この初撃はほぼ完璧だろ。

 グレーウルフたちは、こちらを警戒するように距離を取っている。

 けどよ、魔法攻撃にその距離は意味ないんだぜ。

「シア!」

「うん!」

 一言で意思を疎通し、もう一撃。

「「ファイヤーボール!」」

 詠唱破棄で発動だ!

「「ギャン!」」

 よーし!
 ここまでは理想的な展開。
 なら、次は。

「かかれぇぇ!!」

 剣の出番。
 魔法の後は剣による攻撃だ。

 動きの止まっているグレーウルフに向けて騎士たちが突撃する!
 アルとディアナも、それに続く。

 俺とシア、ユーフィリアはセレスさんを守りながら、魔法の準備。
 俺が前に出てもいいんだが……。

 まっ、必要ねえか。

「ギャン!」
「キャン!」
「キャン!」

 そうしている間にも1頭、2頭と屠られている。
 魔法も必要なさそうだな。

 ん?
 セレスさん、顔色が悪いか?

「セレスさん、大丈夫ですか?」

「えっ、セレス様、お顔の色が?」

「……大丈夫です」

「セレス様!」

「少し気分が悪いだけですから」

「とても、そうは見えません」

「ほんとに平気。平気だから、シアさん」

 グレーウルフとの戦闘を見て気分が?
 今まで何度も戦闘を見てきたのに?

 ってことは。

「やはり、まだ調子が良くないようですね」

「いえ……」

「セレス様、大丈夫。もう終わります。ここに座ってください」

「ユーフィリアさん、ありがとう」

 まだまだ本調子には程遠いってことか。
 こいつぁ、無理させられねえな。

「セレス様、私たちがそばにいますから。どうか、楽にしてください」

「……はい」

 本調子じゃないと言っても、今回の戦闘程度なら問題はない。
 ただ、今後は……。
 気をつけねえと。


「ギャン!」
「キャン!」

「おお!」

「っ!!」

「ギャン!」
「キャン!」

 前線での戦闘は……すぐに終わりそうだな。

「ディアナさん、ここは任せてくれ!」

「大丈夫か?」

「あったりまえ!」

 アルも張り切ってる。

「これで終わりだぁ!!」

「ギャン!」

 最後の1頭はアルが倒しちまった。

「よーし!」

 ホント、こいつは今回の旅で随分成長したもんだ。
 もちろん、鍛錬の成果が出てるんだろうが。
 素質もあるんだよな。
 先が楽しみだぜ。



「セレスティーヌ様、無事掃討を完了いたしました」

「はい。お疲れ様です、隊長さん、皆さん」

 ルボルグ隊長の報告を聞くセレスさんの顔色は……。
 そう悪くねえ。
 この程度なら、まあ大丈夫だろう。

「はっ、ありがたきお言葉を」

「いえ、本当に感謝しております」

「……では、簡単に処理しますので、少しだけお待ちください」

「はい」

 さっさと片付けて、先に進むとするか。




*********************

<剣姫イリサヴィア視点>



 ミルトから山に入って2日。
 ワディン辺境伯の姿どころか、その足跡すらまだ見つけることができない。

 もちろん、広大なミルト山全てを調べることなど不可能なのだから、見落としている可能性も無いとは言えないが。

「……」

 辺境伯は本当にこの山にいるのだろうか?
 予測される有力なルートを調べても、痕跡ひとつ残っていないというのに?

 私がこの山に来ることになったのは、辺境伯がこの山を経由してワディン領に入るという情報が殿下のもとに届いたから。
 間違いのない情報だと聞いたからだ。

 ただ……。

 その間違いのない情報に誤りがあったら?

「……」

 まあ、いいだろう。
 こちらには支障のないことだ。

 今はミルトとエビルズピークの調査だけすればいい。
 そこに辺境伯がいれば好し。
 いないのなら、それは、そこまでの話。

 私はキュベルリアに戻るだけなのだから。

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