30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
490 / 1,640
第6章 移ろう魂編

対峙 2

 俺がおかしい?

「……そうかもしれないな。けど、もう大丈夫だ」

「ほんとかよ」

「ああ……ヴァーン、待たせたな」

「はっ、いっつも遅えんだよ」

 そうだな。
 日本でも、この世界でも。
 俺はいつも遅い。

「悪かった」

「……」


 この状況。
 話したいこと、聞きたいことはまだまだある。

 けど、そんな時間はないよな。
 今この時点では間に合ったものの。
 これからあの大惨事が起きるんだ。
 それを防ぐために、まず俺がすることは……。

 ヴァーンが対峙していたふたりの相手をすること。
 そこからだ。

「そのくらいでいいか?」

 ひとりが語りかけてきた。
 あの彼女が。

「……」

「このような場所で君に会うとはな」

「イリサヴィア様……」

 彼女がなぜここに?
 どうしてヴァーンと戦って?

「エリシティア様の館以来か。久しいな」

「……ええ」

 彼女がヴァーンとシアの命を?
 いや、さっき見たふたりの傷は剣の傷ではなかったような……。

「君との再会は慮外ではあるが、悪いことではない。ただ、君がその者の肩を持つのなら」

「……」

 剣姫がヴァーンとシアの命を奪ったのかどうかは分からない。
 ただ、この状況を引き起こしたのは彼女だ。

「排除するしかない」

「……そうですか」

 キュベルリアでは、剣姫に助けてもらった。
 その恩は忘れていない。
 正直、彼女に対しては好感も抱いていた。

 それでも……。

「やはり退く気はない、か?」

「事情は分かりませんが、これ以上彼に危害を加えるのなら見過ごすことはできません」

 それでも、今はやるしかない。

「危害……まあ、よかろう」

 とはいえ、これから起こるであろうことにも十分に注意を払う必要がある。

「……」

 前回のあの凄惨な現場には、多くの兵士の遺体の他に多くの魔物の遺骸もあった。
 今この現場にはブラッドウルフの死骸以外は、魔物の姿が見当たらない。
 つまり、この後に魔物の襲撃があるということだろう。

 魔物襲撃に備えつつ、剣姫と戦う。
 とんでもない剣気を放つこの剣豪と。

 どう考えても、簡単じゃないな。
 許されるのなら、避けたいものだ。

 が……。

 こうなっては、難しいだろう。

「イリサヴィア様は、退く気はないのですね?」

「うむ。そこに隠れている者を差し出すなら、争う必要はないが」

 そこに隠れ……。
 ああ、幸奈とシアとアルは後ろの茂みに隠れているのか。

「そいつはぁ、無理ってもんだぜ」

 その通り。

「ならば、こちらも仕事。退くことはできんな」

 仕事?
 依頼?

 ……なるほど。

 剣姫は冒険者だ。
 レザンジュから依頼を受けたってことか。

「まいる!」

 剣気がさらに膨れ上がった!
感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)