30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

激闘 6

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 剣の一振りで、細剣に纏わりついていた紫電までも綺麗に消し去ってしまう剣姫。

「魔法もこれだけ使えるとは! ふふ……」

 薄く笑みを浮かべる剣姫に、雷撃を受けた影響は見えない。
 右手に持つ細剣も既に魔力付与済み。
 剣身は、むせるほどの紅蓮を纏っている。
 これまでで最高の魔力量だろう。
 準備は万端か。 

 けれど、それは俺も同じ。
 今の魔法で色々と理解できたこともある。
 つまり。
 ここからが本当の勝負!

「君のような冒険者がオルドウにいたとはな」

「……」

「アリマという名など聞いたこともなかったというのに」

 うん?
 どうして、その名を知っている?
 剣姫に告げた覚えはないぞ。

 アリマと名乗ったのは、キュベルリアの冒険者ギルドでヴァルターさんと手合わせした時だけ。

 ひょっとして、あの場にいたのか?
 なら、俺の剣を知っていたと?

「剣も魔法も称賛に値する」

「……」

「恐ろしい使い手だ」

「魔法を簡単に斬り裂くあなたの方が恐ろしいですよ」

「君にもできるだろ」

 確かに。
 剣に魔力を纏えば、俺にも斬ることは可能だ。
 ただ、剣姫のように巧みに対応できるとは思えない。

「魔力を纏った君の剣なら、斬れるはず」

「……」

「ただ、この剣はどうかな?」

「!?」

 言葉と共に、剣姫の刺突が飛んでくる。
 無拍子じゃない、通常の剣撃。

 とはいえ、奇襲に近い一撃だ。
 さらには、紅蓮の業火を纏った峻烈な魔力の剣。

 ギン!

 何とか弾くことはできた。
 が、剣身を打ち合わせただけで手が痺れている?

「うむ」

 軌道を逸らされた紅蓮の細剣。
 勢いを消すことなく空に円を描き、横薙ぎに変化した!
 そのまま、こっちの胴に向かって!

 ギン!

 痺れた手を振るい、真上からの打ち落としに成功。
 それでも、終わらない。
 下方に逸れた紅蓮が再変化、逆袈裟となって斬り上がってくる。

 この勢い。
 この角度。
 さらに、こちらの体勢。
 
 まともに受けるのは悪手だろう。
 ならば、後ろに跳躍回避。

 だというのに!
 剣姫も跳んだ!

 俺とほぼ同時に跳躍した剣姫。
 逆袈裟の一撃が迫ってくる!

「くっ!」

 斜めに斬り上がってくる紅蓮に、俺の剣を無理やり叩きつけ。

 キン!

 相手の勢いを僅かに削ぎ、こっちは紅蓮の剣を受けた反動を利用して、さらに半歩の後退。

 ブゥン!!

 眼前を紅蓮が通過。
 紙一重のところで避けることができた。

「……」

 再度後ろに跳躍するも、剣姫の追撃はない。
 逆袈裟を振り抜いた体勢で動きを止めている。

「……」


「これも避けきるか」

「ギリギリですよ」

 今のは本当に危なかった。
 速度と威力が上昇したのは分かっていたが、想像以上だったからな。

「うむ……」

 このレベルでは、些細なことでさえ命取りになる。
 防戦一方になってしまった今の攻防からも明らかだ。

「やはり面白い」

「……」

「君の剣とは、ゆっくり語り合いたいものだな」

 同感だ。

「が、剣を楽しめる状況でもない」

 それも同感。

「残念ながら、な」

「……」

 剣姫との戦いは恐ろしくも面白いものがある。
 思う存分、腕を試したい気持ちになってしまう。
 ずっと戦っていたい気持ちに……。

 けど今は、そんな場合じゃない。
 長く戦って消耗しちゃいけない。
 この後にも何かが起きる可能性があるのだから。

 早く決着をつけるべき!


「次で決めよう」

「……ええ」

 と?
 剣姫の発する空気が変わった?
 まだ上があるのか?

 途轍もないな!

 が、こちらもまだ強化できる。
 最高の強化を!

「……」

「……」

 よし。
 お互いに準備は整った。
 あとは攻撃するだけ。

「……」

「……」

 魔法か?
 剣か?

 剣姫は魔力で強化はできるものの、魔法自体は使えないようだ。
 そうすると、より有効なのは……。

 ほんの僅かな逡巡。
 数秒にも満たない時間。

「っ!」

 懸の先を取られた。

 地を蹴る剣姫。
 その一足で彼我の距離が消失!
 迫る剣姫!

 これは?
 剣質が違う?
 魔力の変質か?
 紅蓮が消え、彼女の髪色に似た青藍の剣身に?

 青藍の剣が凄まじい剣圧と共に襲いかかってくる!

 が、やることは同じ。
 懸の先、先の先をとることができずとも、後の先はとれる!

 こちらも跳躍だ。
 青藍の剣がこちらに届くより先に己の剣を打つ。

 相手の剣をいなすことなく、そのまま剣を!
 ただ、ひたすらに早く!
 最速の剣を!





*********************

懸の先をとる……相手が打とうと意識する直前を制すること。
先の先をとる……相手が構えた状態から、技を出そうと動き出す直前を制すること。
後の先をとる……相手が出した技が決まる直前を制すること。
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