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第6章 移ろう魂編
蒼鱗の天魔 1
つまり、今回の騒動は。
「おい、おい、誤解だったのかよ」
「……どういう意味だ?」
「ここにワディン領主はいないということです」
「……」
「……」
剣姫とメルビン、冒険者たちが固まっている。
全員が困惑している。
そりゃ、そうだろう。
「ならば、そこに隠れているのは?」
「ワディン領主ではないですね」
「まことか?」
「ええ、こんなことで嘘はつきません」
「……」
「……」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
剣姫もメルビンも。冒険者たちも。
こちらのワディンの者たちも。
皆が皆、複雑な表情。
とともに、空気が弛緩していく。
「ふふ、ははは……」
「なんだ、それ」
「無駄に緊張しちまったぜ」
「笑うしかねえな」
冒険者連中からは、呆れたような声ばかり。
「どうやら無駄な戦いをしたようですね、イリサヴィアさん」
「……」
さっきまでの一触即発の気配が嘘のように霧散している。
「あの死闘は何だったんだ! こっちは死にそうだったってのに……」
ヴァーンの口調も全く違う。
「仕掛けてきたのは、そっちだからな! 分かってんだろうな、剣姫さんよぉ!」
「……すまない」
「ちっ!」
「なるほど、なるほど。そういうことでしたら、もう戦う必要はありませんね」
「ああ、けどなぁ」
「分かってますよ。損害に対する補償はイリサヴィアさんが何とかしてくれます。ですよね?」
「……うむ」
「では、いったん我らはここを去るとしましょうか」
「いや。事実はどうあれ、剣で負けたことに変わりはない。私の命はこの者の手中にある」
まだそれを言うのか。
潔いと言えば、まあそうだが。
潔癖に過ぎる。
それに、そもそも剣で負けたわけじゃないだろ。
こっちは魔法も気も使ったんだから。
俺も剣で勝ったとは思っていない。
「ここで退いてくれるなら、私は何も言うつもりはありません。ヴァーンも、それでいいだろ?」
「おめえがそう言うなら、仕方ねえ。けど、補償はしろよ」
「……」
「勝者である私が許可したんです。いいですね?」
「……うむ」
不承不承ながらも頷いてくれたようだな。
ワディンの者たちも同様。
よーし、これで終了だ。
細々としたことは、まあ、それなりでいいだろ。
ふぅぅ……。
安堵の息を吐くと同時に身体の力が抜け。
左肩と左腕に痛みが!
治癒魔法と魔法薬で、しっかり治療しないとまずいな。
治療を必要とする者も多いことだし、まずは負傷者の治療から始めよう。
緩く微妙な雰囲気が漂う中。
完全に失念していた。
あの不安を。
だから、油断を!
そして……。
ドッシーン!!
轟音と地響き。
凄まじい衝撃に、頭の中が真っ白になる。
が、すぐに正気を取り戻し。
辺りを見渡す。
何だ?
何が起こった?
視界を遮る砂煙の奥。
メルビン率いる冒険者たちの背後。
そこにいたのは、巨大な魔物。
「ぎゃぁぁぁ!!」
そいつが、冒険者の身体に齧りついた!?
*********************
いない。
やっぱり、いない。
それの活動域であるエビルズピークのどこにも見つけることができない。
陽光が視界を確保してくれるこの時間が過ぎていく。
わざわざ、自身で狩りに出たというのに。
今日もまた。
「オオォ……」
暗闇の中でも、それの目に獲物が見えなくなることはない。
視界は若干悪くなるものの、獲物の姿を捉えることはできる。
ただ、ヒトは暗闇の中では活動しないという。
ならば、陽光を待つしか……。
「おい、おい、誤解だったのかよ」
「……どういう意味だ?」
「ここにワディン領主はいないということです」
「……」
「……」
剣姫とメルビン、冒険者たちが固まっている。
全員が困惑している。
そりゃ、そうだろう。
「ならば、そこに隠れているのは?」
「ワディン領主ではないですね」
「まことか?」
「ええ、こんなことで嘘はつきません」
「……」
「……」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
剣姫もメルビンも。冒険者たちも。
こちらのワディンの者たちも。
皆が皆、複雑な表情。
とともに、空気が弛緩していく。
「ふふ、ははは……」
「なんだ、それ」
「無駄に緊張しちまったぜ」
「笑うしかねえな」
冒険者連中からは、呆れたような声ばかり。
「どうやら無駄な戦いをしたようですね、イリサヴィアさん」
「……」
さっきまでの一触即発の気配が嘘のように霧散している。
「あの死闘は何だったんだ! こっちは死にそうだったってのに……」
ヴァーンの口調も全く違う。
「仕掛けてきたのは、そっちだからな! 分かってんだろうな、剣姫さんよぉ!」
「……すまない」
「ちっ!」
「なるほど、なるほど。そういうことでしたら、もう戦う必要はありませんね」
「ああ、けどなぁ」
「分かってますよ。損害に対する補償はイリサヴィアさんが何とかしてくれます。ですよね?」
「……うむ」
「では、いったん我らはここを去るとしましょうか」
「いや。事実はどうあれ、剣で負けたことに変わりはない。私の命はこの者の手中にある」
まだそれを言うのか。
潔いと言えば、まあそうだが。
潔癖に過ぎる。
それに、そもそも剣で負けたわけじゃないだろ。
こっちは魔法も気も使ったんだから。
俺も剣で勝ったとは思っていない。
「ここで退いてくれるなら、私は何も言うつもりはありません。ヴァーンも、それでいいだろ?」
「おめえがそう言うなら、仕方ねえ。けど、補償はしろよ」
「……」
「勝者である私が許可したんです。いいですね?」
「……うむ」
不承不承ながらも頷いてくれたようだな。
ワディンの者たちも同様。
よーし、これで終了だ。
細々としたことは、まあ、それなりでいいだろ。
ふぅぅ……。
安堵の息を吐くと同時に身体の力が抜け。
左肩と左腕に痛みが!
治癒魔法と魔法薬で、しっかり治療しないとまずいな。
治療を必要とする者も多いことだし、まずは負傷者の治療から始めよう。
緩く微妙な雰囲気が漂う中。
完全に失念していた。
あの不安を。
だから、油断を!
そして……。
ドッシーン!!
轟音と地響き。
凄まじい衝撃に、頭の中が真っ白になる。
が、すぐに正気を取り戻し。
辺りを見渡す。
何だ?
何が起こった?
視界を遮る砂煙の奥。
メルビン率いる冒険者たちの背後。
そこにいたのは、巨大な魔物。
「ぎゃぁぁぁ!!」
そいつが、冒険者の身体に齧りついた!?
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いない。
やっぱり、いない。
それの活動域であるエビルズピークのどこにも見つけることができない。
陽光が視界を確保してくれるこの時間が過ぎていく。
わざわざ、自身で狩りに出たというのに。
今日もまた。
「オオォ……」
暗闇の中でも、それの目に獲物が見えなくなることはない。
視界は若干悪くなるものの、獲物の姿を捉えることはできる。
ただ、ヒトは暗闇の中では活動しないという。
ならば、陽光を待つしか……。
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