30年待たされた異世界転移

明之 想

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第6章 移ろう魂編

蒼鱗の天魔 9

「コーキ、何考えてんだ!」

「ん? どうした、ヴァーン?」

「どうしたじゃねえ。考えんのは後にしろよ。もう、ここを出るんだぜ」

「……」

「早くテポレンに入ってワディンに抜けねえとな」

「……ああ」

 そうだな。
 今ここで考えていても事態が変わるわけじゃない。
 先を急いだ方がいい。


「メルビン、戻る前に素材を集めようぜ」

「このまま戻るなんて勿体ねえぞ」

 ワディン側が出発の準備を終えようとしていたところ、冒険者側では素材採取の話が。

「ギルドに届ける証拠も必要だしよ。それに、こんな貴重な魔物素材捨てられねえわ」

「こいつぁ、高く売れるぜ!」

 冒険者たちは、謎魔物の素材を持ち帰りたいようだ。
 まあ、当然か。
 あの蒼い鱗なんて、とんでもなく貴重な素材だろうからな。

「イリサヴィアさん、魔物素材の権利は討ち取ったあなたにあるのですが?」

「うむ。好きにするといい」

「では、お言葉に甘えて。お前ら、手早く剥ぎ取れよ」

「「「「「「「おう!」」」」」」」

 謎魔物の体に取り付き、鱗を剥がし始める冒険者たち。

「外れねえぞ」
「やっぱ、硬え」
「どうすんだ、これ?」

 魔力を纏っていない剣で、あの魔物の鱗を切り取るのは難しいよな。

「ワディンの皆さんは素材は不要ですかね?」

「それは……隊長?」

「「「「「隊長?」」」」」

「こっちの魔物の権利は我々ではなく、彼にありますので」

「ああ、そうでしたね」

 もう1頭の魔物については、俺に権利があるようだ。

「だってよ、どうする?」

「……ヴァーンは早くここを去りたいんじゃないのか?」

「まあな。ここは何つうか、嫌ぁな空気が漂ってるからよ」

 確かに。
 全て終わったはずなのに、なぜか不快な感じがする。

「とはいえだ。とんでもねえ素材だからなぁ。……少しならいいんじゃねえか」

「……」

 捨てるには惜しい素材ではあるよな。
 時間があるなら、手に入れた方がいいのかもしれない。

「分かった。それなら、少し貰っておこう。皆さんも良ければ、どうぞ」

「良いのですか?」

「ええ、もちろんです」

 とどめを刺したのは俺だが、それも皆の助力あってのもの。
 分けるのは当然だ。

「では、我々も少しだけ。皆、急ぐように!」

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 隊長の言葉を受けて、魔物の遺骸に群がる騎士たち。
 さっそく鱗の剥ぎ取りを始めている。

 と、その時。

「うぐっ!」

 鈍い悲鳴がワディン騎士のひとりから!

「何だ!」

「どうした?」

 騎士の身体からはおびただしい出血!?
 そこに!!

「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」

 突如現れた、途方もない気配!
 ワディンの騎士たちの背後に現れたそれは?

「グゥルオオォォォ!!!」

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

「「「「「「「なっ!!」」」」」」」

 荒々しい咆哮に大地が揺れる!
 エビルズピークが震える!
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