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第7章 南部編
異なる世界 15
<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>
「姉さん、父さんと何かあったのか?」
「……どうして、そう思うの?」
「さっきの夕食、明らかにおかしかっただろ。あんな父さん見たことないからさ」
「……」
確かに、夕食の席での父の態度は普通じゃなかった。
武志君が気づくのも当然かもしれない。
「何かあるなら言ってくれよ」
「……」
ただ、父の様子がいつもと違ったとはいえ、昨夜のことがあるのだから納得はできる。
むしろ穏やかなくらい。
私にはそう見える。
でも、事情を知らない武志君は違う。
不審に思うのも尤もだ。
「姉さんを助けるって言っただろ。だからさ、何かあるなら話してほしい」
「……ありがと」
武志君の気持ちは嬉しい。
心からそう思う。
けど、無理なの。
幸奈さんのこの秘密は話しちゃいけない。
話すことができない。
幸奈さん本人が、これだけは知られたくないと思っているのだから。
「だったら?」
「何もないわ」
「本当に?」
「本当よ。お父様……仕事で何かあったのじゃないかしら?」
「……ならいいけど」
「私のことより、武志は明日早いんでしょ。もう寝た方がいいわよ」
「姉さん……」
「ほんとに平気。問題ないから、気にせず休んで」
「……分かった。でも、何かあったら、絶対言ってくれよ」
「うん、ありがと」
「じゃあ、お休み」
「お休みなさい」
武志君が去り、部屋の中には私ひとり。
今は何も問題はない。
このまま夜が過ぎてくれれば今日も終わる。
昨夜の影響など何もなく。
けど……。
夕食の場での父の視線。
和見の父親がこのまま何も行動を起こさないなんて考えられない。
きっと何かがある。
ただし、それが今夜とは限らないから。
「……」
大丈夫。
昨日の今日なのよ。
今夜は何も起こらないはず。
この不安は、ただの杞憂。
と、思っていたのに。
玄関から来客を告げるチャイム音が!?
「……」
まだ聞き慣れない電子音。
音が心を圧迫する!
あっという間に嫌な予感が心を埋め尽くしてしまう!
その予感に引きずられるように、窓から外を眺めると。
「……」
やっぱり……。
夜の闇を背に、黒衣の女性がそこに佇んでいた。
「壬生さん!」
彼女の姿が目に入った途端、胸の奥から重く暗い感情が込み上げてくる。
悪寒が走る。
「っ!」
彼女の黒衣、黒い髪、黒い目。
黒、黒、黒!
近づきたくない。
あの黒に近づかれたくない。
そんな思いだけが頭の中を占めて……。
「!?」
見た!
今こっちを見た。
あの無機質な目で私のことを。
こわい!
身体が震えだす。
止まらない……。
だめ!
幸奈さん、見ちゃだめ。
負けちゃだめ。
そう思うのに、体は動かない。
こちらを見つめる彼女から目を逸らせない。
何の感情も映していない無機質な目。
私に異能を使う時に見せる仄暗い目。
「……」
いや!
あの異能は嫌!
彼女の異能はもう!
私の中で幸奈さんが叫び出す。
その感情が私を飲み込んでいく。
思考が奪われていく。
止められない。
昨夜、ようやく解放されたと思ったのに……。
また……。
……。
……。
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