30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

異なる世界 17

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>




「さあ」

 戸惑う私の目の前で扉が開け放たれ。

「お入りなさい」

 感情のこもっていない声が降ってくる。
 すぐそこには、やはり感情の見えない無機質な表情で私を見つめる壬生さん。

「こちらへいらして」

「……」

 恐怖は消えていない。
 それどころか震えは大きくなっている。

 顔は下がり、俯いてしまう。

 なのに、壬生さんの声に誘われ足が進んでいく。
 まるで幸奈さんの足が意思を持つように。

「こんばんは、幸奈さん」

「……」

「顔を上げてくださいな」

 また、壬生さんの言われるまま。
 顔を上げると。

「ふふ」

 目に入ってきたのは、冷たく笑う彼女の顔。
 その後ろには、父が苛立った様子で立っている。

「手間をかけさせおって」

「良いじゃありませんか。こうして来てくれたのですから」

「……」

「何の問題もありませんわ。可愛い幸奈さんと、また一緒に時を過ごせると思うと、それだけでもう、ふふふ」

 頬を緩ませているのに、目は冷たいまま。
 感情がまったく浮かんでいない氷の微笑。

「……」

 怖い。
 気持ちが悪い。

「……では、お願いできますかな」

「もちろんです」

 私に近づいてくる。
 彼女が私に。

 いや!
 来ないで!

「!?」

 幸奈さんが暴れている。
 逃げようとしている。

 決着をつけたいのに、身体が言うことを聞いてくれない。
 私の思考が幸奈さんの恐怖に覆い尽くされ……。

 だめ!
 このままじゃ!

 足よりも自由になる手に力を入れ。
 手が真っ白になるくらい握りしめ。
 爪で手のひらを傷つける。
 血が流れるほど、力を込めて!

 すると。

「……嫌です」

 やっと声が出せた。

「やめて、ください」

 絞り出せた。

「壬生さん、お父様!」

 ここで拒否を。
 何としても抗わないと!

「……困りましたわ、和見さん?」

「幸奈、いつまで子供みたいなことを言ってる! 立場をわきまえろ!」

「……」

 立場を?

「自分の存在価値を考えれば分かるはずだ」

 幸奈さんの?
 いえ、私の存在価値?

「全ては異能のため、和見家のため」

 異能。
 私より異能。

「……」

 分かっていた。
 幸奈さんも私も理解していた。
 けれど、震える娘を前にして、こんなこと平気で口にするなんて!

 言葉にできない感情が、恐怖を消し去っていく。

「……嫌です」

「おまえ!」

「異能なんて知りません!」

「なっ!!」

 父が怒りで震えている。

「はぁ~、どうしましょ?」

「……壬生さん、異能を!」

「……」

「こいつの言葉など気にせず、力の行使を!」




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