30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
538 / 1,640
第7章 南部編

折れない心 3

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>




 今の私に残された最後の手段!

「……」

 ローディン様、トトメリウス様。
 御二柱のしもべ。
 従順なる下僕。
 神娘たるセレスティーヌ・キルメニア・エル・ワディンに至尊の御神力をお貸しください!


 掛けまくもかしこき智時魔の大神、豊穣の大神
 かしこかしこみも白す
 諸々の禍事あらむをば祓へ給ひ清め給へ、救ひ給へ

 ……祝福!!


 心の中で唱えた瞬間。
 温かい光が身を包みこむ!

「……」

 間違いない、神娘の権能。
 祝福の神力。

 こちらの世界でも使える!
 私を助けてくれる!

 ああ、ローディン様、トトメリウス様……。


「なっ、これは! 壬生さん、どういうことだ?」

「……」

 御二柱の寵光が私を満たしてくれる。
 少しずつ痛みが消えていく。
 音が消えていく。

 ……。

 ……。


 まだ身体は重いけれど。
 もう、大丈夫。

 床から手を放し、汗で顔に張り付いた前髪を払い。
 ゆっくりと立ち上がる。

「幸奈、おまえ!?」

「!?」

 目を丸くして、開いた口が塞がらない和見の父。
 愕然とした面持ちで私を見つめる壬生さん。
 心なしか視線が泳いでいる。

「憂波は、まだ続いているわ! なのに、どうして??」

「……分かりません」

「分からないじゃないだろ、どういうことだ!」

「分からないものは分からない。それだけです、お父様」

「くっ!」

「仮に分かっていても、このような仕打ちをするに話すことなど何もありませんし」

 平気な顔でそう告げたものの、今の私にはそれほど余裕があるわけじゃない。
 身体にはまだ憂波の影響が残っているのだから。
 それに、心臓が早鐘を打ち始めている。

 祝福の影響で幸奈さんが目覚めてしまった。
 幸奈さんの恐怖がまた……。

 大丈夫。
 大丈夫だから、もう少しだけ我慢してね。
 私に任せて。


「……まさか、異能なのか?」

「それについては、もう話をしましたよね。ですが、お父様には最後にもう一度だけ」

「何だ?」

「私は異能を持っておりません」

「……」

「これは事実です。そして、これ以上は話すこともないです」

「……」

「ですから、今後は私に構わないでくださいね。お父様も壬生さんも」

「幸奈、おまえ!」

「では、失礼します」

「待て、待つんだ!!」

 私の腕に掴みかかる父の手を避け、扉へ。

「幸奈っ!」

「……」

 声を荒げる父。
 沈黙の壬生さん。
 そのふたりを部屋に残し。
 扉を開け、外へと足を踏み出す。

 さよなら、お父様。



 地下の冷気が汗をかいた身体に気持ちいい。

「……」

 嫌悪していたこの階段。
 達成感、爽快感と共に上ると、心地良さすら感じてしまう。
 と同時に、今までにない幸奈さんとの一体感も。

 こんなに疲れているのに身体はとっても軽い。
 幸奈さんの心も……。

 良かった。
 幸奈さんも喜んでいるのね。


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

病弱設定されているようです

との
恋愛
『あのようにご立派な家門にお産まれになられたのに⋯⋯お可哀想なご令嬢だそうですのよ』 なんて噂が流れているけれど、誰も会ったことがないミリー・ミッドランド侯爵令嬢。 ネグレクトなんて言葉はない時代に生まれ落ちて、前世の記憶を取り戻したら⋯⋯。 前世の記憶と共に無双します! 再開しました。完結まで続投です。 ーーーーーー 恋愛小説大賞27位、ありがとうございました(感謝) ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定。 完結確定、R15は念の為・・

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。