30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

慣れ

 エビルズピークの悪意と悪意の雫。
 5頭相手の戦闘は、かなり手のかかる戦いだった。
 分身が4頭に増えたというのもあるが、それ以上に本体の動きが厄介だったからだ。
 これまでの単調な攻撃から一変、多彩な攻撃を見せるやつには本当に苦労した。

 それでも、戦い続けること四半刻。
 何とか分身だけは全頭倒すことができた。

 ただ……。

 本体の攻撃を受けた剣姫が負傷を。

「うっ!」

「大丈夫ですか?」

 剣姫の右脚。
 浅くない裂傷を負っている。

「治癒魔法を使います」

「いや、戦闘中は魔力を温存した方がいい」

「ですが」

 これまで戦闘中に魔力切れに陥ったことはない。
 今回もまだ余裕がある。

「回復薬を使えば問題ないからな」

「……」

「大丈夫。心配無用」

「……分かりました。あいつを引きつけておきますので、その隙に治療してください」

「うむ」

 回復薬があれば治療はできるだろう。
 けど、あの深い傷だ。
 表面上は癒えても、すぐに完治とはならないはず。

 それに。
 今手元には中級と低級の回復薬しか残っていない。
 どこまで回復できるのか?



「グゥオォォ!」

「!?」

 飛翔していた化け物が、赤銅色の空から襲撃してくる。
 狙いは俺じゃない。
 剣姫だ。

「オオォォォ!」

 させるか!

「雷撃!」

「雷撃!」

 雷撃で牽制し、剣姫を庇うようにして対峙。

「グルゥ!」

 あいつは雷撃を避け、10メートルほど上空へ。
 大きく翼を広げ、こっちを見下ろしている。

「……」

 赤銅色の空に留まるあいつに、再襲撃の気配は見えない。
 地上を悠然と眺めるのみ。

 滞空を続けるつもりか?

「グルゥゥ……」

 あの竜もどき。
 やはり、驚くほど動きが良くなってる。

 空を翔る速さ、身のこなし、攻撃の精度。
 すべてが以前とは異なる水準だ。

 レベルもステータスも変わっていないが、戦闘に慣れ、熟練度が上がったってことだろうな。

「グルゥ……」

 実際、今回は俺の雷撃を何度も躱わしている。
 剣姫にも傷を与えて。

「……」

 錆色の地から離れ、上空に待機するエビルズピークの悪意。
 分身を失ってなお、焦りを見せていない。
 欠片も……。

「グルゥゥ」

 甘く見ていたな。
 あの堅牢な防御を突破することだけを考えて、あいつの攻撃を軽視していた。
 いつまでも同じ戦い方だと、高をくくっていた。

 前回まで、あいつの攻撃には変化など見られなかったから……。

 が、今回は違う。
 まったく違う。

「……」

 となると、この先はますます大変になってくる。
 防御だけでも手を焼いていたというのに、さらに動きまで加わったら。

 戦闘慣れ、増える分身……。

 厄介極まりない。




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