30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

未熟

 剣姫の魔力が内部に込められたドゥエリンガー。
 その魔剣が空間の歪みを斬り裂く。
 が、結果はこれまで同様。

 歪みにダメージを与えることはできなかった。

「この歪み、どうしようもないな」

「ええ」

 歪みがあるとはいえ、所詮は空間。
 斬り裂けないことも想定内だ。

 それより。

「イリサヴィア様、もう現れます。備えてください」

「うむ」

 剣姫が俺の隣に戻り、態勢を整える。
 その直後。
 空間の歪みが消え。

「グゥオオォォォ!」

 鉄錆色の大地に登場するエビルズピークの悪意。
 引き連れる分身は4頭。
 悪意の雫の数に変化はない。

 よし!
 分身数が同じということは、スキルレベルに変化がないってこと。
 つまり、あいつ自身も進化していないはず。

「進化なし、か?」

「だと思います」

「うむ。ならば、作戦通り」

「ええ、分身から倒しましょう!」




**********************

<剣姫イリサヴィア視点>



 上手くいかないものだな。
 本当に……。

 レザンジュに来てからというもの、事はまったく想定通りに運ばない。
 私の思惑から外れてばかり。
 事はあちらへこちらへと動き回っている。

 ミルト、エビルズピーク、そしてこの異界。

「……」

 油断などしていない。
 自分ではそう思っていたのだが。

 慢心か……。

 ミッドレミルト山脈の異状調査、ワディン辺境伯の探索。
 その成否は別にして、困苦が待ち受けているなど想像もしていなかった。
 私が手を焼くなんて考えもしなかった。

 まったく……。
 自分の力量を過信していたんだな。

「……」

 どれだけ周りに称賛されようと、もてはやされようと、私は変わらぬ。
 自己をしっかり理解し、管理できる。
 ずっと、そう考えていた。
 自信があった。

 だというのに。
 気付かぬうちに、自惚れていたと。
 そういうこと、か。

 はは……。
 情けない。

「……」

 が、今回のことで良く分かった。
 己の未熟さを理解できた。

 これまでの私は、運が良かっただけ。
 ただそれだけ、ということが。

 ある意味、吹っ切れたと思う。
 だから。

 心身ともに一から鍛え直す!
 初心に戻ってやり直す!

 そう心に決めた。

 ただ問題は。
 ここから出ることができるのだろうか?

 エビルズピークの悪意とアリマが呼んでいるドラゴンのような魔物。
 その魔物が創りだした異界から脱出を?
 そのために奴を打倒することが?
 可能なのか?

「……」

 ふっ、格好の悪いことだな。

 つい数日前までは過信していた己の力。
 それを、今は信じることができない。

 なんと弱く脆い心よ。
 気概のなさよ。

 度し難い。
 不明を恥じるばかりだ。

 それでも……。

 己の未熟さと共に、心の弱さも知ることができた。
 ならば、進める。
 私はまだ先に進むことができる。

 そのためにも、ここを出なければいけない。
 キュベリッツに帰り。
 オズのもとへ。

「……」

 今は雑念を捨て、あいつを倒すことだけを考えるべき。
 それに専念するのみ。

 そのための方策はアリマと相談済み。
 あいつの制約、弱点についても心許ないながら目星はついている。
 こちらの攻撃力も、魔力付与の改善により上がっているはず。

 まだまだ足りないものは多いが、これで勝負できる!
 この手駒で倒す!
 進化する前に倒しきる!

「……」

 アリマが言うには、ここからの2回が勝負とのこと。

 冒険者アリマ……。
 不思議な男だな。


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