30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

四半刻 5

「ストーンウォール!!」

 最速で魔法を展開。
 石の壁を現出させる。

 ギシッ!

 間に合ったか?
 
 ギシ、ギシ!

 紙一重だったが、間に合った!
 が、出来は不完全で不十分。
 急ごしらえにすぎない。

 そんな石壁を喰らい尽くそうとする光の奔流。

 ギシ、ギシ!

 壁がきしみ。
 光に圧され。
 悲鳴を上げ続けている。

「保たないぞ!」

「分かってます」

 この石の壁では防ぎきれない。
 それでも、時間は稼いだ。

 時間があるなら。
 石壁を追加すればいい。

「ストーンウォール!」

 2枚目の壁が姿を現す。
 それとほぼ同時に。

 バリン!

 1枚目の壁が決壊。

「……」

 ギリギリだった。
 少しでも遅れていたら、光に飲み込まれていただろう。

「防いだ、のか?」

「ええ、もう大丈夫です」

 あいつのブレスは続いているが、こちらもまだまだ壁を作り出せるからな。

「……さすがだ」

「いえ」

 今回は本当に危なかった。
 まさに首の皮一枚、薄氷のような石壁防御だった。

 とはいえ防げたのだから、結果としては悪くない。

「……アリマ、そろそろ」

 軋む壁の音がうるさくて、聞き取りづらいな。

「何でしょう?」

「その、下ろしてもらえないか?」

「あっ、そうですね」

 ここまでくれば心配もない。
 胸に抱えていた剣姫を、ゆっくりと地面に。

「イリサヴィア様、身体の方は?」

「少し影響は残っている……とはいえ、この程度なら平気だろう」

「剣撃も?」

「問題ない」

 目眩に吐き気と、酷い症状だったが。
 咆哮の影響は、やはり一過性のようだ。

「ブレスが消えたら、もう一度あの首を攻めましょう」

「うむ」

「残り時間はわずかです」

「時間との勝負か」

「そうなりますね」

 俺たちに残された時間は10分程度。
 その時間内に倒さなければならない。

 もちろん、半刻経過してもあいつが消えない可能性もあるが……。
 それは、それで好都合だ。

「ブレスが弱まってきたぞ」

「ええ」

 もうすぐ終わる。

「……」

「……」

「グルルゥゥ……」

 ブレスが消えた!

「いきますよ!」

「うむ」

 石壁を消し、エビルズマリスのもとへ。
 まずは。

「雷撃!」

 躱された?
 あっちも回復済み?

 ならば、当たるまでやるだけ。
 今は魔力を惜しんでいる場面じゃない。

「雷撃!」

「雷撃!」

 当たれ!

「雷撃!」

「雷撃!」

 当たってくれ!

「雷撃!」

「グルゥゥ!」

 当たった!

 よし。
 これで、いける。

「イリサヴィア様」

「承知!」

 動きを止めたあいつの首元に剣姫が襲い掛かる。
 首に突き立ったままの剣に腕を伸ばし、そして……。

「ぐっ!?」

 背中に衝撃!
 何だ?

「うっ!?」

 剣姫の背中にも!


「グルゥ……」

 思いもよらぬ背中への衝撃。
 次いで起こったのは上半身が痺れるような感覚。

 これは……。

 俺の雷撃に似ている。
 いったい何が?

「……」

 俺の前にいる剣姫の背中には小さな光が激突していた。
 ということは、俺の背中にも同じ光が当たったと?

 あの光は。
 規模はかなり小さいけれど、あいつのブレス?
 雷撃のようなブレス!

 俺たちの前で動きを止めているあいつがブレスを?
 そもそも口を開いていないあいつが?

 あり得ない!
 
 なら、どうして?

「……」

 振り返った俺の目に入ってきたのは。

「グルルゥゥ!」

 分身!
 悪意の雫、エビルズドロップ!

 今まで見た分身の半分程度の大きさのそれが、背後に立っている!

 あいつ、まだ分身を作り出せたのか?
 しかも、ブレスを撃てる分身を?

 信じがたい。
 けれど、そう考えるしか……。

「アリマ?」

「分身です」

「……のようだな」

 まずは、あの小さな分身を倒す!
 そして、時間内に本体を!


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