30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

<ヴァーンベック視点>



 コーキも剣姫も怪物も、そろって気配を消すことができる。
 なら、この近くで皆が気配を消して戦っている可能性も?

「……」

 しゃあねえな。
 地道に周りを探すか。

 で、どこから調べればいい?
 何かヒントは?

 コーキが怪物と対峙していた場所は、確かこの辺りだったよな。

 まあ……。

 当たり前だが、目の前にコーキがいるわけもねえ。
 転がっているのは魔物の死骸ばかり。

 ならばということで坂上に歩を進めても、魔物の死骸とレザンジュ兵の亡骸以外は目に入ってこない。
 坂を越え、昨日休憩した空き地まで調べても結果は同じだった。

 コーキの気配なんて、微塵も感じることができないまま。
 ただ時間だけが過ぎていく。



「駄目だな」

「もう、この近辺には誰もいないんじゃねえの?」

 思ったことがつい口に出てしまう。
 返事をする相手もいないのに。

「……」

 完全に潮時だろ。 
 仕方ねえな。
 シアの待っている野営地に戻るとしよう。

 空き地を出て、坂を下り、コーキと剣姫が怪物と戦っていた場所を通り過ぎた、その時。
 

 ん……?
 何だ、ありゃ?

「……」

 渦、なのか?

 空中に渦?
 こんな渦初めて見たが……。

 間違いねえ、拳大の渦だ。
 しっかし、こんなものが空中に?

 いったい何が?

 って、まじいぞ!

 渦がうねる様に拡大し、周りの空間が歪み始めている!
 周りの空間を喰らい尽くそうとしている。

「……」

 距離を置くべきか?
 そうだな。
 安全な場所から様子を眺めた方がいい。


 少し離れた地点で立ち止まったまま、100を数える間渦を見続けたところ。
 突然、渦の中に赤い光が?

 と、次の瞬間。
 眩いほどの赤光が渦の中から溢れ出てきた!

 ィィィィン!!

 溢れ出す赤光のあとに、間髪を入れず奇妙な音が聞こえ。
 これでもかというくらいに渦が膨張!

「ちっ!」

 こいつは、マズい!
 後ろに数歩駆け、地面に伏せる。

 と同時に。

 パリィィィィン!!

 激しい破裂音!
 爆風が俺の頭上を通り過ぎていく!
 
「……」

 すると。
 すぐに赤光が消え、爆風が去り、渦も消えてしまった。

 エビルズピークに静寂が戻ってくる。

 俺の身体に異状はない。
 問題ねえ。

 けど、今のは?

 ゆっくりと起き上がり、渦のあった場所を確認。
 そんな俺の目に入ってきたのは……!?


「コーキ!!」




**********************




 赤銅色の空が崩れ、鉄錆の大地が崩壊していく!
 エビルズマリスの創った異界が崩れ落ちていく!!

「イリサヴィア様!」

「アリマ!」

 お互いに注意を促し。
 身体強化した足で鉄錆色の地面を強く踏みしめる。
 衝撃に備える。

 さらに。

「ストーンウォール!」

「ストーンウォール!」

「ストーンウォール!」

「ストーンウォール!」

 石の壁で四方を固めてやる。

 やれることはやった。
 あとは、幸運を祈るばかり。

 と……。

 空と大地が崩れ落ちていく中。
 赤く濁った空気が凄まじい奔流となって渦を巻き。
 上空に集まっている。
 その空間がとんでもない勢いで歪み。

 そして……。

 爆発!!

「っ!?」

「くっ!?」

 爆発の衝撃を受け、身体に力が入ってしまう。
 いや、緊張で力が入っているのか。

「……」

「……」

 異界の崩壊。
 空も大地も崩れ去ってしまった。

 なのに、俺と剣姫は地面を踏みしめたまま。
 大地は、足下にしっかりと存在している。

「アリマ?」

「……」

 爆発により吹き荒れた砂塵が落ち着き、世界には視界が戻ってきた。
 すると、そこに存在したのは……。

 緑と茶色!

 赤じゃない。
 青々と茂った木々と、茶色い土砂が俺たちの目の中に!

 普通の山に大地。
 ここは……エビルズピーク?


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