30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
572 / 1,578
第7章 南部編

焦燥

しおりを挟む
<剣姫イリサヴィア視点>



 コーキに会いたいという思い。
 これは郷愁?
 いや、それ以上の何かかもしれないな。

 そのコーキがもし……。

 アリマと同一人物だというなら。
 私はコーキと一緒にいたことになる。

 異界でずっと一緒に。
 コーキと共に密度の高い時間を過ごしたことに……。

「……」

 けれど、アリマは違う。
 何と言っても、髪色が違う。
 これは決定的。
 たとえ名前が同じであろうとも、髪色という事実を変えることはできないのだから。

 私の持つラピタルの偽宝。
 姿を変えるこの宝具をアリマが持っていれば話は別だが……。


「では、彼の何が気になるのです?」

「……髪色」

「ああ、それは私も気になってましたよ」

「どういうことだ?」

「私がオルドウで彼に会った時とは、髪色が違うような気がしまして」

 何だと!

「アリマは、アリマの髪は何色だった?」

「確か、黒髪?」

「っ!?」

「以前のことなので記憶は曖昧ですが、黒だったような……」

 アリマが黒髪!
 ここでは茶色の髪だったアリマが!




**********************

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>



「ゆきちゃん、この後カフェに行かない」

「今日はちょっと……」

「もう、いつもそればっかり」

「……ごめんなさい」

「こら。やめなさい。幸奈が困ってるでしょ」

「だってぇ」


 ここは幸奈さんが通う大学の一室。
 私に話しかけてくれたのは、幸奈さんの友人のふたり。
 大学生の仮面を被った幸奈さんが、大学生活の一環として捉えているふたりだ。
 ただ、表面的な付き合いに終始する幸奈さんに対し、相手のふたりは少なからず好意を抱いているように思える。

「だってじゃない」

「え~」

「……」

 彼女たちについては、もちろん知識として知っている。
 それでも、実際に会ってみると戸惑うことが多い。

「え~でもないでしょ。幸奈は忙しいんだから」

「うぅぅ……」

 幸奈さんの知識から、こうなることは分かっていた。
 だから、なるべく接触は避けようと思っていたのだけれど。
 今日はどうしても避けることができなくて……。

「私とふたりじゃ、嫌なわけ?」

「えっ、違う! ふたりでも嬉しいよ!」

「……」

「でもさ、ゆきちゃんともカフェ行きたいんだよぉ。分かるでしょ」

「……まあね」

 そう言って私を見つめるふたり。
 そんな顔をされると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
 彼女たちふたりに対しても、幸奈さんに対しても。

「……本当にごめんなさい。次は、行けると思うから」

 だからつい、こんなことを言ってしまった。

「ホント?」

「……ええ」

 後悔しても、もう遅い。

「やったぁ、約束だよ。どこ行こうかなぁ~~」

「……」

 けど、こんなに喜んでくれるなら。
 少し頑張ればいい、かな。

 そうね。
 私が頑張ればいい。
 正体を知られないように、仮面がはがれないように。
 気をつければ大丈夫。

 和見の父や壬生さんに比べれば、これくらい平気だ。

「……」

 父と壬生さん。
 あの夜以来、何も言ってこない。
 不自然なくらい沈黙している。

 このまま何もなく、事が終わってくれればいいのだけれど……。

 もし何か良くないことが起きるのなら。
 私がこの世界にいる間にしてほしい。

 自分で蒔いた種は自分で刈り取りたいから。
 幸奈さんに任せるわけにはいかないのだから。

「……」

 でも、私はいつまでここにいるのだろう?

 幸奈さんの姿のまま。
 コーキさんも戻ってこない、この世界で?

 もし、このままコーキさんが戻って来なかったら……。

 私はひとり。
 本当の私を誰も知らない世界で、ひとり生きていく。

 義務も責任も放棄して、ひとりで。
 全てを捨てて、全てに捨てられて……。

 そんな!
 想像するだけで、とんでもない不安が押し寄せてくる!

 誰にも知られない孤独。
 誰にも話せない孤独。
 何もできない私。
 世界に見捨てられた私。

 痛い。
 胸が痛い。

「……」

「……」

「……」

 違う!
 そんなわけないわ!

 コーキさんは、きっと戻って来る。
 トトメリウス様もローディン様も私を見捨てたりしない。

 私はワディンに戻ることができる。
 神娘として、ワディンへ。
 みんなのもとへ必ず!

 だから、不安になっちゃ駄目。
 そんなこと考えちゃ駄目。

 自分を信じて、コーキさんを信じて、トトメリウス様とローディン様を信じて!
 私は頑張るだけ!

「……」

 けど、コーキさんがここまで戻って来ないのは?
 やっぱり、何かあったんじゃ?
 あちらの世界のコーキさんに、幸奈さんに何かが?

 そう考えると、今度は胸の違う部分が苦しくなる。
 心が痛くなる。

 痛いのに、やっぱり私は何もできない。
 この世界から出られない。

 ああ、また考えてしまう。
 駄目なのに。

 これまで数えきれないくらい感じてきた孤独感、焦燥感。
 無駄だと分かっていても感じてしまう。

 ほんと、無駄なのに。
 ばかだな、私……。


「どうしたの、ゆきちゃん? 嫌なことでもあった?」

「えっ?」

「幸奈が秘密主義なのは知っているけど、気が向いたらいつでも話してくれればいいよ。友達なんだしね」


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...