30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

暗雲 1


 翌日。
 領境で別れていた領兵が合流し、さらにワディナート近郊に潜伏していた者たちも加わり大人数になったセレス様一行。予定通り、南部ワディン領トゥレイズに向けて出発することになった。

 人数が増えたこともあり、複数の集団に分かれて商人に扮することになった俺立ちの南部行だったが、こちらもエビルズピーク後の旅路と同様に大過なく進み……。

 拍子抜けするくらい楽な歩みの後に、トゥレイズまですぐという地点に到着することができた。


「これ、ちっと緩んでねえか?」

「ヴァーンもそう思うか」

「一目瞭然だろ」

 その通り。
 エビルズピーク、テポレンでは緊張感に満ちていた皆の雰囲気が、今は微塵も感じられない。

「まっ、ここまでは楽な旅だったから仕方ねえ面はあるけどよ」

「確かにな」

 とはいえ、まだ目的地に到着したわけじゃない。
 ここからトゥレイズまでの間に何が起こるか分からないんだ。
 油断はしない方がいい。

「隊長も分かってんだろうが、一応話しておくか」

「ああ」

 杞憂に終わるなら、それはそれでよし。
 何も起こらないのが最良なんだからな。

 そんな俺たちの心配が現実化してしまったのは、この日の午後のことだった。


「隊長! ローンドルヌ河周辺にレザンジュ王軍の兵たちが集まっております」




*************************

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>



「今日は楽しかったね」

「ええ、本当に」

「お昼もケーキも美味しかったし、いい買い物もできた。何より、ゆきちゃんも笑顔だからね。言うことなしだよ」

「……」

「かなは、また幸奈を困らせて」

「ええぇ、わたし変なこと言ってないよ。だよね、ゆきちゃん」

「……うん、変じゃないよ。ありがと、かなちゃん。それに、永理ちゃんも」

「ほっらあ!」

「……まあ、幸奈がいいなら私はいいんだけど」

「もう、永理ちゃん、かたすぎ! もっと笑顔だよ」

「かな……」


 今日は半日も出かけてしまった。
 幸奈さんの友達のかなさん、永理さんと一緒に昼食に買い物にお茶と。
 半日を満喫してしまった。

 本当に楽しくて素敵な時間。

「……」

 私には、友達と一緒に街で遊んだ経験がないから。
 知らなかった。
 こんなに素晴らしいことだったなんて……。

 だから、不安や焦りを忘れて、全て忘れて。
 この時間を心から楽しんで。

「……」

 いいのだろうか?
 この世界で私が、こんな思いをしても?

 コーキさんの言葉で、吹っ切れたと思っていたのに……。
 あまりに楽しすぎて、また考えてしまう。


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