30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

頭痛

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



 コウ、コ……カン……?

「……すみません、分からないです」

「では、梅という言葉は?」

「ウメ……」

 聞いたことがあるような?
 なんだか、心が温かくなるような?

 きっと、わたしはどこかでウメを……。

「あっ!」

「どうしました?」

 痛い!
 また酷い頭痛!

「セレス様?」

「だいじょ……」

 しっかり答えたいのに、声が出ない。
 目を開けているのが辛い。

「申し訳ありません」

「そん、な……」

 コーキさんは悪くない。
 わたしの記憶がおかしいだけだから。

「少し休みましょう」




 コーキさんとふたりで会話することなんて、それほどあったわけじゃない。
 そんな数少ない会話の機会。
 そのたびに頭痛が酷くなって、話が途中で終わってしまう。
 本当にもう……。

 もどかしい思いを感じながらも、南下は続き。
 わたしたちは無事にローンドルヌ河付近に到着することができた。
 そして、コーキさんは今。

「無事に対岸に渡れたのでしょうか?」

「先生なら大丈夫です」

「シアの言う通り。コーキなら問題ありませんって。本気を出せば、レザンジュ兵くらいひとりで相手できるような奴ですよ」

「コーキさんなら、やりかねないなぁ」

 ヴァーンさん、アル君、それはさすがに言いすぎなんじゃ。

「ノワールもそう思うだろ」

「クウーン」

 ノワールちゃんも……。

「セレス様、先生からの文もすぐに届くはずですから」

「ええ」

 コーキさんが対岸で情報を集めたら、魔法で形成した石に文を取り付けてこちらの岸まで投擲してくれることになっている。それをワディンの斥候が受け取り、この村に届けてくれると。

「ほんと、コーキならではの連絡手段だぜ」

「文を付けた石であの川幅を越えるほどの遠投なんて、さすがだよなぁ」

 渡河直後に大橋を渡って戻って来ると、王軍兵に疑われる。
 なので、こういう伝達手段を取ることになったらしい。
 
「その文を読めば、王軍の動向を知ることができるのか?」

「コーキならちゃんと調べてくれてんだろ」

「そう……だな」

 コーキさんのことをよく知らなかったディアナさん。
 頭痛のせいで、わたしがコーキさんと話をするのを快く思っていないけど、それでもコーキさんのことを信頼し始めている。

 ここにいる皆がコーキさんに期待してるんだ。
 期待と希望で、空気が和らいでいるのが良く分かる。

「おっ、来たんじゃねえか」

 ヴァーンさんの声で、皆の視線が部屋の入り口に。
 すると。

「セレスティーヌ様、文が届きました」

 ルボルグ隊長が文を持って現れた。



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