30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

嵐のローンドルヌ大橋 1

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



 ヴァーンさんの意見は?

「第二報を受け取ってから考えたいところですが、嵐が止む前の決行となるとゆっくりしてられませんしねぇ」

 その通りだと思う。
 今は雨風ともに激しいけれど、いつまで続くかは分からないのだから。

「なので、一応街道を南下して、大橋の様子を確認しつつ最終決定といったところでしょうか」

「渡河するにしてもやめるにしても、今すぐ村を出て南下すると?」
 
「ええ」

 そうかぁ。
 ヴァーンさんも、そういう風に考えるんだ。

「アル君は?」

「ヴァーンさんの方針がいいと思います」

「……」

 アル君、本当に考えたの?
 あやしいけど、ヴァーンさんに賛成と言うなら、それでいい。

 では、最後に。

「シアさんは?」

「わたしは……」

 嵐の中、外に出たくないのは分かっている。
 ただ、今は大事な話だから。

「セレス様に従います!」

「外は嵐ですよ?」

「……平気です、問題ありません」

 あんなに雷を怖がっていたのに。

「わたしはいつもセレス様の傍にいますから」

「シアさん」

 これまでも、ずっと傍にいてくれたシアさん。
 気持ちはよく分かっている。
 それでも、やっぱり……こんなに嬉しくなってしまう。

「さすが、シアだぜ」

「ほんと、やる時はやるよな、姉さん」

「もう! からかわないで、ふたりとも! 外に出るだけなんだから」

「嵐が怖い姉さんにとっては一大事だろ」

「だから、やめなさい、アル。ここには、みんないるのよ」

「隠しても外に出ればバレるんだから無駄だって」

「……」

 仲がいいからこそのアル君の言葉。
 でも、ここはやめてあげて。

「シアさん、大丈夫です。外では、わたしがずっと傍にいますよ。嵐からも守りますからね」

 しっかりと手を握って、心を込めて。

「セレス様、それは、その……ありがとうございます」

「はは、立場逆転だな」

「ヴァーン……」

「って、時間もねえのに、脱線しまくりじゃねえか」

 そうだった。
 今はゆっくり話している時間はないんだ。
 先に進めなきゃ。

「では、皆さん、今後の方針ですが」

 わたしの考えは。

「今から南に向かい、道中で斥候からの報告を受ける。その報告次第で渡河の最終決定をくだす。これでいかがでしょう?」

「私はセレス様に従うのみです」

「もちろん、私も従います」

「私も」

「おれも」

「俺も従いますよ。まあ、同じ考えなんですけどね」

「セレスティーヌ様、ここにおらぬ騎士たちも思いは同じですので」

 みんなが信用してくれる。
 神娘の力を使えないわたしを。

「……」

 本当にありがたいことだと思う。


「しっかし、こんな時にコーキの考えを聞ければ心強いんだけどなぁ」

「コーキさん対岸にいるんだから仕方ないって。文の投擲も難しいし、橋を渡って戻って来るのも……って、今なら戻れるんじゃ?」

「そうか! 王軍がいねえなら大橋を渡れるぞ」

「ひょっとすると、もう橋を渡ってるかもしれない。で、南下中に合流とか」

「だったら、鬼に金棒じゃねえか。けどよ、あいつ抜けてるとこあるからなぁ。気づいてない可能性もあり得るぞ」

「確かに……」

 また脱線している。
 時間がないと言いながら、みんな心のどこかでホッとしてるんだろうな。
 王軍がローンドルヌから姿を消したという事実は、ほんとに大きいことだから。





「本当に誰もいない」

「……ああ」

「これはもう、簡単に渡河できそうだなぁ」

「かもしれねえ」

 ローンドルヌ大橋は前方100歩の位置。
 ここからは大橋の全容が見渡せる。

 その橋の上には、アル君とヴァーンさんの言うように、レザンジュ兵は1人も見えない。
 ひと安心だ。

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