30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

中州 2

 橋上の戦いに加勢したいところだが、今は幸奈を優先すべき時。
 それなら、せめて。

「ヴァーン、これを使ってくれ。雷波を6発込めてある」

 以前セレス様に渡した魔道具の改良版。
 これ1つしか残っていない貴重な魔道具だ。

「なっ、雷波を! いいのか?」

「惜しんでる場合じゃないだろ」

「……助かるぜ!」

 範囲魔法の雷波を使えれば、有利に進めるはず。
 次は。

「ノワール」

 水が苦手なノワールにも少しだけ。

「ドライ!」

 濡れた全身を乾かし、さらに若干の防水も施してやる。
 この程度で嵐を克服はできないだろうけれど、動きやすくはなるはず。

「クウーン!」

 満足そうだな。

 さあ、最後の仕上げだ。
 後方にいるレザンジュ兵の密集に向けて。

「雷波!」
「雷波!」

「雷波!」
「雷波!」

 もう1発!

「雷波!」

 よし。
 これで、かなり削れたはず。

「じゃあ、行ってくる」




*************************

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



 上流から流されこの中州に上陸してきたマッドアリゲーターという魔物。
 その数は10体以上!

 時間が経てば、もっと多くの魔物がここにやって来るの?

「動きが鈍っているうちに片付けるとするか」

 重そうな体で今はほとんど動いていないマッドアリゲーター。
 でも……。
 この雨風の中で凶悪な魔物の姿を見たら、恐怖しか感じない。

 なのに、この兵士の顔に見えるのは余裕だけ。
 ユーフィリアさんも焦っていない。

 ……頼もしい。

「まっ、あいつらは陸じゃあ大したことねえんだけどよ」

 水中ほどは俊敏に動けない。
 そういうこと?

「あんた魔法使いだろ。先制は頼むぜ」

「……分かっている」

 ふたりがゆっくりと魔物に近づいて。
 これから攻撃が始まる、そんな時に。

「うっ、ううぅ……」

 わたしの隣で横になっている細身の兵士から声が!
 意識が戻ったの?

「ごほっ、ごほっ、ごぼぅ!」

 口から水を。
 さっきのわたしと同じだ。

「はあ、はあ……。こ、ここは!?」

 呆然とした表情。
 無理もない。

「私は……生きている?」

「ここはローンドルヌ河にある中洲です。あなたは意識を失っていたんです」

「助かった、のか?」

「はい」

「おっ、やっと目が覚めたかよ」

「イリアル、お前も無事だったか?」

「無事だったかじゃねえぞ。誰のせいでこうなったと思ってんだ」

「……すまん」

「っとに、気をつけろよ。おまえを失うわけにはいかねえんだからな」

「ああ、申し訳ない」

「分かったら、こっち来て手伝え。少しくらいは戦えんだろ」

「了解だ」

「あの、大丈夫ですか?」

 溺れて今まで意識を失っていたのに。

「……ああ」

 本当?
 もうひとりの兵士は鍛え上げられた体をしているけれど、こちらは華奢で細身。
 そんな彼が目覚めてすぐに戦うなんて。

「私も王軍のひとり。これくらいなら戦える」

「……」

「ん? 君……?」

 何?

「その白い髪、深紅の瞳は!?」

 あっ!?
 今は顔も髪も隠してなかったんだ。

「きさま、下がれ!」

 魔物と対峙していたユーフィリアさんがわたしの横に。

「お嬢様、こちらへ」

 わたしを庇って瘦身の彼と向き合ってくれる。

「まさか、ワディンの神娘……」

「っ!」

 知られてしまった!

「お嬢様に対して何を言っている!」

「そうだぜ、ウラハム。何言ってんだ?」

 こっちの男性は気づいていない。
 なのに、彼だけ?

「神娘はとっくに死んでんだぞ」

 えっ?

「……」

 わたしが死んだって、どういうこと?

「なら、今目の前にいるのは?」

「ちっ! ちゃんと視てみろ」

「そう、だな」

 細身の兵士が、ユーフィリアさん越しにわたしを見つめようとしてくる。
 その眼はどこか不思議な光を帯びて……。

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