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第7章 南部編
激流
しおりを挟む<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
「うぅ……」
負傷して後退したウラハムさん。
この嵐の中でもはっきりと分かるくらい酷い傷を負っている。
すぐに治療しないと!
でも、わたしに何ができるの?
薬は持っていないし。
魔法も使えない。
それに、スキルも。
祝福の力が使えれば、治療ができたのに!
今は何も……。
「……」
カーンゴルムまでは祝福が使えたから、まだみんなの役にも立てたけど。
今は護ってもらうだけ。
戦うことも治療することもできない。
知識も力もない。
何もできない。
ただのお荷物。
カーンゴルム近くのあの隠れ村で意識が戻ってから、ずっと使えない厄介者。
……恥ずかしい。
いつまでも力が使えない自分が情けない。
これで神娘だなんて!
「……」
考えたくなかった。
それだけは違うと思いたかった。
けどもう……その事実を認めないと。
神娘の力。
祝福と予知。
わたしは二度と使うことができないのかもしれない。
力を失ってしまったのかもしれない。
ローディン様からいただいた神娘の力を。
だから、この人もわたしを見て神娘じゃないと言ったんだ。
神娘としてのわたしは死んだと!
ああぁ……。
「ううぅ……」
ウラハムさん、真っ青な顔!
出血も止まらない。
早く治療しないと。
こんな状況なのに、わたしは自分のことばかり考えて……。
本当に、本当に情けない。
けど、今は自責より治療を!
自由に動けるのはわたしだけ。
わたしが治療するしかないのだから。
今できる最良のことを!
********************
豪雨で水かさが増し、激流と化したローンドルヌ河。
そんな河に飛び込むなんて正気の沙汰じゃない。
水中で人を探すなんて、できるとは思えない。
「……」
橋の上から荒れ狂う水流を見て、思わず躊躇してしまう。
が、それも一瞬のこと。
この河に、幸奈はユーフィリアと共に落ちてしまったんだ。
俺が助けないで、誰が助ける!
恐怖よりも格段に強いその思いに突き動かされるように欄干を蹴り。
空中へ!
「コーキ!」
「先生!」
ヴァーンとシアの声を背に、水面に激突。
そのまま激流の中へ沈み込む。
「ぐっ!」
ローンドルヌ河の水中は既に経験済み。
ただ、河の流れが先日とは比べ物にならない。
体は水中で弄ばれ、何度も回転を繰り返してしまう。
簡単には激流から逃れられない。
呼吸が苦しくなり、意識が飛びそうになる。
それでも!
身体強化を施し水魔法と風魔法を駆使することで、体の制御を取り戻し。
水中からの脱出に成功できた。
「はあ、はあ……」
水上に顔を出し、呼吸の確保も。
「はあ、はあ、はあ……」
ゴオォ、ゴゴゴォォ!
荒れ狂う水流が絶えず体の自由を奪おうとする中、何とか泳げてはいるものの……。
幸奈を探すどころか、自分が溺れないようにするだけで力を使い果たしてしまいそうだ。
「ごぼっ!」
顔面に襲い掛かる激流を避けきれず、水を飲んでしまうこともしばしば。
ゴオ、ゴオォ、ゴゴゴォォ!
気を抜くと、すぐに水中に引き込まれそうな乱流。
恐ろしい。
こんな状態で、幸奈を見つけることができるのか?
「くっ!」
ここで弱音を吐いてるどうする。
そんな暇があったら、探すんだ!
もっと魔力を使って!
その後。
何とかコツを掴むことに成功。
激流の中で体を上手く制御するためには途轍もない魔力の運用と集中が必要なんだが、徐々に慣れてきたようだ。
そんな体で探索を開始。
水上水中、さらには河底にも何度も潜り。
眼と魔力、使える全てを駆使しながら探し続けた。
なのに、見つからない。
ローンドルヌ大橋付近、落下付近を調べたけれど、幸奈の姿なんてどこにも!
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