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第7章 南部編
ヒーロー 5
<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>
壬生兄が横柄で傲慢なのは権門である壬生家の長子だからというのが最たる理由だろう。でも、それだけじゃない。もうひとつ大きな要因がある。
それは、彼の使う異能。
妹の壬生女史が使う音の異能憂波に勝るとも劣らない異能を使えるという理由だ。
幸奈さんは、私は彼の異能を知っている。
和見家の地下室で15歳の幸奈さんが身に受けた異能の多くは妹によるものだったけれど、この兄からも異能を受けた経験があるから。
だから、私の頭の中にも彼の異能が刻まれている。
幸奈さんを襲ったおぞましい記憶として。
「災厄の惨重、昏み眩みて闇の中」
記憶通りの詠唱だ。
古野白さん、武上君!
「万物ともに絶望の地に墜ちよ! 万重禍!」
「!?」
「ちっ!?」
重い!
身体が真上から押されているような、押しつぶされるような感覚。
重力を扱う壬生兄の異能。
かなり距離をおいている私ですら感じてしまうのに、ふたりは?
「武上君、大丈夫?」
「ちっと身体が重いが問題ねえ。古野白はどうだ?」
「……少しなら動けるわ」
えっ?
ふたりとも動けるの?
地下室での幸奈さんは全く動けなかったのに。
「アレ、使ってんだろ?」
「使ってるわよ。使っててこれだから。恐ろしい異能よ」
「まっ、少しでも動けりゃ問題ねえって」
「ええ、そうね。でも、やっぱりこのアンチUPは未完成のプロトタイプだわ」
「そりゃ、試作品だかんな。けど、正義のヒーローには充分だぜ」
アンチUP?
「……任せたわよ、ヒーローさん」
「おう、任せとけ!」
凄い!
武上君がしっかりとした足取りで、壬生兄に近づいていく。
「おまえ、動けるのか?」
「当然!」
「くっ、なぜだ?」
「そんなの決まってらぁ。ヒーローだからだよ」
「……」
「あなたの異能調査は済んでるわ。ふふ、あんな詠唱は知らなかったけど」
「調査を……」
「研究所を甘く見ない方がいいって言ったでしょ」
「……」
「しっかしよぉ、いい年してあの詠唱、恥ずかしくねえのか」
「何っ!」
「オレなら、赤面ものだぜ」
「武上君……よく言えるわね」
「何でだ?」
「……」
色々な意味で普通じゃないのね、武上君。
「まっ、とにかく、恥ずかしい野郎だってこった」
「うるさい! その汚い口を閉じろ」
「口は閉じてもいいけどよ、その前にお縄頂戴だな」
「許さん、もう許さんぞ! ……極重禍!!」
えっ?
詠唱がない?
けど、さっき以上の重さ!
こんなの、記憶の中にない!
「っ!?」
古野白さんが膝をついてしまった。
武上君も、動きが止まっている。
「ふふ、ふはは! 私を虚仮にした代償はでかいだろ」
「……」
「武上君!」
「……問題ねえ」
「動けもしないのに、減らず口を」
「減らず口じゃねえぞ。こんなものはなぁ、正義のヒーローにゃ効かねえんだ!」
「……」
「……だぁぁぁぁぁ!!!」
両拳を突き上げて武上君が怒声を上げる。
まるで獣の咆哮のように凄まじい音量。
空気が震えている。
次の瞬間。
「おっらあ!!」
地面を蹴った?
壬生兄が横柄で傲慢なのは権門である壬生家の長子だからというのが最たる理由だろう。でも、それだけじゃない。もうひとつ大きな要因がある。
それは、彼の使う異能。
妹の壬生女史が使う音の異能憂波に勝るとも劣らない異能を使えるという理由だ。
幸奈さんは、私は彼の異能を知っている。
和見家の地下室で15歳の幸奈さんが身に受けた異能の多くは妹によるものだったけれど、この兄からも異能を受けた経験があるから。
だから、私の頭の中にも彼の異能が刻まれている。
幸奈さんを襲ったおぞましい記憶として。
「災厄の惨重、昏み眩みて闇の中」
記憶通りの詠唱だ。
古野白さん、武上君!
「万物ともに絶望の地に墜ちよ! 万重禍!」
「!?」
「ちっ!?」
重い!
身体が真上から押されているような、押しつぶされるような感覚。
重力を扱う壬生兄の異能。
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「ちっと身体が重いが問題ねえ。古野白はどうだ?」
「……少しなら動けるわ」
えっ?
ふたりとも動けるの?
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「アレ、使ってんだろ?」
「使ってるわよ。使っててこれだから。恐ろしい異能よ」
「まっ、少しでも動けりゃ問題ねえって」
「ええ、そうね。でも、やっぱりこのアンチUPは未完成のプロトタイプだわ」
「そりゃ、試作品だかんな。けど、正義のヒーローには充分だぜ」
アンチUP?
「……任せたわよ、ヒーローさん」
「おう、任せとけ!」
凄い!
武上君がしっかりとした足取りで、壬生兄に近づいていく。
「おまえ、動けるのか?」
「当然!」
「くっ、なぜだ?」
「そんなの決まってらぁ。ヒーローだからだよ」
「……」
「あなたの異能調査は済んでるわ。ふふ、あんな詠唱は知らなかったけど」
「調査を……」
「研究所を甘く見ない方がいいって言ったでしょ」
「……」
「しっかしよぉ、いい年してあの詠唱、恥ずかしくねえのか」
「何っ!」
「オレなら、赤面ものだぜ」
「武上君……よく言えるわね」
「何でだ?」
「……」
色々な意味で普通じゃないのね、武上君。
「まっ、とにかく、恥ずかしい野郎だってこった」
「うるさい! その汚い口を閉じろ」
「口は閉じてもいいけどよ、その前にお縄頂戴だな」
「許さん、もう許さんぞ! ……極重禍!!」
えっ?
詠唱がない?
けど、さっき以上の重さ!
こんなの、記憶の中にない!
「っ!?」
古野白さんが膝をついてしまった。
武上君も、動きが止まっている。
「ふふ、ふはは! 私を虚仮にした代償はでかいだろ」
「……」
「武上君!」
「……問題ねえ」
「動けもしないのに、減らず口を」
「減らず口じゃねえぞ。こんなものはなぁ、正義のヒーローにゃ効かねえんだ!」
「……」
「……だぁぁぁぁぁ!!!」
両拳を突き上げて武上君が怒声を上げる。
まるで獣の咆哮のように凄まじい音量。
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次の瞬間。
「おっらあ!!」
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