30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

欲しかったもの

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



「私は幸せものだな」

「……」

「セレスのような娘を持てて、本当に幸せだ」

 幸せなのは、わたしの方です。
 お父様の温かい腕に抱かれて、こんな気持ちをもらって。

「それなのに、これまでは神娘として扱ってばかりで……。心から申し訳ないと思っている」

 お父様が謝ることじゃない。
 神娘が神娘として扱われるのは当然なのだから。

「セレスは神娘である前に私の娘だ」

「……」

「そんな簡単なことも分からずに私は!」

「……」

「愚かな父を許しておくれ」

 ああぁ……。

 わたしこそ。
 わたしの方こそ、もっと心を開くべきでした。
 神娘として閉じこもらず、色々と話すべきでした。

 そう思うのに、今も言葉が出てこない。
 初めて抱く感情に、心が乱れるばかりで……。

「セレス、命より大切な我が娘」

「……」

「愛しているよ」

「っ! わたしも!」

「セレス」

「わたしも愛しています!」

 言えた。
 やっと口に出せた。

「ありがとう」

「お父様……」

 嫌だ!
 離れたくない。
 この人を孤独にさせたくない!

 お父様は、わたしのお父様。
 この世にひとりだけのお父様。
 こんなにわたしのことを思ってくれる父親は、お父様だけなんだから。

 ……。

 ……。

 不思議。

 こんなに悲しいのに?
 どうして、こんなに嬉しいの?

 お父様の愛情は知っていた。
 どんな形であれ、確かに存在していると分かっていた。
 それなのに、今どうしてこんな気持ちを?

 っ!?
 頭が痛い!?

 でも、駄目。
 今は知られちゃ駄目。

 もう少しこのままでいたいから。
 だから、顔に出ないように耐えないと。
 目を瞑って我慢を。

「……」

「……」

 温かい。
 目を瞑ると余計に実感できる。
 お父様の腕の中、ほんとに気持ちがいい。

 頭は痛いけど。
 朦朧とするけど。

 そんなことより……。

 ……。

 ……。



 わたし……。

 わたしは……。

 そう……。

 わたしは、愛されたかった。
 お父様とお母様に愛されたかった。
 ふたりの愛情が欲しかった。

 ただそれだけ。
 わたしが欲しかったのはそれだけ。

 それだけなのに……。

 駄目だった。
 愛してもらえなかった。

 きっと、わたしがいけない子だったから。
 出来の悪い娘だったから。

 力を持っていないから。

 だから、愛してくれない。
 振り向いてくれない。

 いつもひとり。

 いつも……。

 いつも……寂しかった。

 ……。

 ……。

 ……。


 えっ!?
 何?

 今のは何?

 この信じられないような絶望感は?

 わたしは、お父様に愛されているのに!


「セレス、大丈夫かい?」

「お父様……」

 そうよ。
 わたしは、今も昔もお父様に愛されている。

 こんなにも深く愛されている。
 ずっともらい続けている。
 お父様から。

 欲しかったものを。
 何より欲しかったものを!

 ああ、光が!
 溢れてくる!

「……」

 駄目。
 また涙が!

 止まらない。


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