30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

黒都カーンゴルム 4

<ヴァルター視点>



「話さないなら、このまま憂鬱な薔薇の拠点に行くまでのこと」

「それは、ちょっと……」

「だったら、喋ればいい」

「その……あんたが……」

「何?」

「あんたが、カーンゴルムで何をしてるのかと思って」

「……」

「ホントなんだって。今回は私の独断で、パーティーは関係ないから」

 信じがたいな。

「幻影のヴァルターがカーンゴルムで何もせずに長期滞在しているから、それで気になって……」

 憂鬱な薔薇のメンバーが、そんな理由で?

「ほんとに、ホントだから」

 簡単に信じられる内容じゃないが、嘘を言っているようにも見えない。

「それだけか?」

「……」

 やはり、薔薇のリーダーシャリエルンと話をした方が良さそうだ。




********************

<レザンジュ王国第一王子アイスタージウス視点>



「トゥレイズ城塞の征圧が完了しました」

 想定通りだな。

「神娘セレスティーヌについては、現在捜索中です」

「……」

 セレスティーヌの生存は嬉しい誤算だったが、まさかトゥレイズから逃してしまうとは……。

 が、生きているなら大きな問題じゃない。
 手に入れればいいだけ。
 簡単なことだ。

「ただ、近い内に見つけ出すことも可能かと」

「ふむ。近い内とは?」

「はっ、10日以内には可能との報告がありました」

「10日……」

 ワディナートとトゥレイズを落とした今、残すは神娘だけ。
 ならば、すぐに片が付くということであろう。

 それにだ。
 トゥレイズでの報告で10日以内と言うことなら、今頃は既に捕えている可能性もある。

 神娘が我が手に。
 ふっ、悪くないな。


「南部方面については、今後ワディナートとトゥレイズの統治に専念することになりそうです」

「陛下のお考えか?」

「はい」

「……」

 これで、南部問題はほぼ終わったと見ていい。
 もう憂いはない。

 ふふ。
 何もないな。

「下がって良いぞ」

「はっ」

 頭を下げたまま、勅任官が部屋を出て行く。
 残ったのは私と腹心のみ。

「殿下、これで整いましたな」

「南部はな。宮はどうだ?」

「無論、終えております」

「うむ」

「こちらについては、心配は無用です」

「……」

 長く続けてきた準備も全て終わり、これで先に進める。
 ようやくだ。
 本当に長かった。

「ただ、エリシティア様が」

「あやつのことは、捨て置けばよい」

 いまだキュベルリアに健在のエリシティア。
 誤算と言えば誤算だが、それももう大きな問題ではない。

「ですな」

「うむ。今はもう全てが整ったと考えてよいだろう」

 時は今か。

「「殿下!」」

「「御決断を!」」

「……」

 これまでのことを考えると、万感の思いが込み上げてくる。
 抑えきれないその感情の中に、ただひとつ……。

 もし可能なら、避けることができるなら。
 この手段だけは。

「……」

 今さらだな。
 そう、詮無きことだ。

「ふふ」

「殿下?」

「ああ、何でもない」

 私の中にもまだこんな心が存在する、か。

「それでは?」

 だが、それもここまで。
 ここでお別れ。

「……決行だ。5日後に決行する!」

 過去の私とも、今とも決別!

「万端、怠るなよ」

「「「ははっ!」」」




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