30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山 1

<アル視点>



 おれたちから少し離れた場所で、コーキさんと3人が顔を寄せ合っている。

「…………」

「…………」

 何か話しているようだ。
 が、声を落としたのだろう。
 よく聞こえない。

「…………」

「…………」

「はい。では、それで」

「了解です」

 話が終えたコーキさんが小走りで戻って来た。

「皆さん、安心してください。彼らはテポレン山に住んでいる私の知人ですので」

「知人?」
「こんな場所に?」
「ホントかよ?」

「テポレン山に人が住めんのか?」
「信じられない……」

 騎士たちが驚いている。
 姉さんもヴァーンさんも、もちろんおれも。

 だって、テポレン山に人が住んでるなんて!
 それも、フォルディさんが!

 こんな話、驚かない方がおかしいだろ。

「ルボルグ隊長、セレス様、こちらの事情を少々話しても良いでしょうか?」

「コーキ殿、問題はないのですね?」

「はい、信用に値する方々です」

「そういうことでしたら……セレスティーヌ様?」

「……コーキさんにお任せします」

「ありがとうございます。では、少しお待ちください」

 コーキさんが、再び3人のもとへ。

「…………」

「…………」

「……!?」

「……ですが、黒と白……」

「いや……」

「…………」

「しかし……」

「…………」

「…………」

「分かりました」

「では、それで進めましょう」

「お願いします」

「サキュルス、おじいさ……長老に報告を」

「はい、急ぎご意向を伺ってまいります」

 良く分からないけれど、話がまとまったみたいだ。




「ということで、エンノアの方々のお世話になるわけですが、これはあくまでも彼らの好意によるものですので」

 コーキさんが硬い表情で、おれたちに語りかけてくる。

「しっかり理解して行動してください」

 そんなの当然だろ。
 おれたちやワディン騎士に、わざわざ言うことか?
 まっ、コーキさんらしいけどさ。

「それと、もう1つ」

「コーキ殿、何でしょう?」

「……これから訪れる場所についてです」

「と言いますと?」

「ルボルグ隊長やワディンの皆さんを案内する休憩所は、特殊な地に存在しています」

 特殊?
 テポレン山ってだけで十分特殊だけど?

「エンノアの方にとっては非常に重要な、秘密の居住地とも言える場所です」

「そいつぁ、隠れ里みたいなもんか?」

「ああ」

「……ホントかよ」

 ヴァーンさんの問いに頷くコーキさん。

「信じがたい話だが、コーキがそう言うなら間違いねえんだろうな」

 特殊で秘密の隠れ里がテポレン山に実在する。
 その事実に、皆がざわめいている。

 おれもワクワクしてきた!

「そのような場所に我々を案内していただけるのですか?」

「ええ。ですので、この先のことは口外無用でお願いします」

「おう、了解だ」

「我々も了解です」

 ヴァーンさんも騎士たちも、全員が秘密厳守を約束している。
 けど、それ以上に。
 みんなが興味津々といった表情。

 そうだよな。
 そうなるよなぁ。

「くれぐれもお願いしますよ」

「「「「「「「はっ!」」」」」」」

 コーキさんの念押しに力強く頷くワディン騎士たち。
 おれも、これでもかというくらい頷いてしまった。

「それでは、フォルディさん」

「はい」

 今まで黙っていたフォルディさんが一歩前に。

「皆さん、これから案内する場所はとっても面白い場所にありますけど、驚かないでくださいね」

 いやいや。
 そう言われると、高まっていた期待がさらに膨らむだけだぞ。

「では、まいりましょう」

「……」

 フォルディさんとコーキさんを先頭に、皆が歩き出す。
 ゆっくりだけど、足が軽い。
 これまでの疲れが消えたかのようだ。

 でも……。
 やっぱり、セレス様だけは変わらないか。


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