30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山 4

<長老ゼミア視点>



「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

 まるで事前に取り決めていたように、皆が口を噤んだまま。
 言葉を発しようともしない。

「……」

 その気持ち、よく理解できる。
 じゃが、ここが一族の正念場。
 我らエンノアにとっては、特に読心を宿す者にとっては、意志を示すことにこそ意味がある。
 それこそが道を拓くのじゃ。

「フォルディ、おぬしはどう考える」

「……エンノアの民の命は非常に大切なものだと思います」

「ふむ」

「ですが……」

 フォルディの返答を、皆が固唾をのんで待っておる。

「エンノアの悲願は民の命に勝る」

「「「「……」」」」

「それは……それは、皆も理解しているでしょう」

「ふむ」

「しかも、今回は預言通り。黒と白が揃いました」

「……」

「今こそが預言の時かと」

「ならば?」

「わたしはコーキさんと共に歩みたいと考えています」

「「「「!!」」」」

「レザンジュを敵に回しても、ということじゃな?」

「はい。預言通り、我らには勝利が約束されているはずですから」

「ふむ」

 よくぞ、口にした。

「スぺリス、サキュルス、ゲオ、ミレン。おぬしらはどうじゃ?」

「私も……コーキ殿と歩むべきかと」

 スぺリスも心を決めたか。

「私もです」

 サキュルス、ゲオ、ミレンも頷いておる。

「ならば、好し!」

 あとは皆に伝えるだけ。
 それも問題はない。

「エンノアの民全てを広場に集めるのじゃ」

「「「「「はっ!」」」」」

 今も昔も広場で我らを見守ってくださる神像。
 トトメリウス様が我らの未来を照らしてくれるであろう。






「皆の衆、ここまでの経緯は今話した通りだ」

「「「「「「「「……」」」」」」」」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「「「「「「「「……」」」」」」」」
「「「「「「「「……」」」」」」」」

 言葉にならぬざわめきばかりが耳に入ってくる。
 皆、声に出してはいないものの思うところがあるのだろう。

 当然じゃな。
 このような大事。
 皆にとっては生まれて初めてのことであろうから。

 無論、わしにとっても……。

「……」

「……」


 広場の中央にそびえ立つ美しき神像、エンノアの守り神トトメリウス様。
 いつもと同様、我らを見守ってくださっておる。
 ただ、そのお姿はいつにも増して神々しく。
 穏やかながらも尽きることのない慈悲の御心を映し出しているように思えてならぬ。

 エンノアの者が今のトトメリウス様を目にすれば、何かを感じ取れるはずじゃが……。


「どうする?」
「俺は……」
「私は……」

「ゼミア様のお言葉なら……」
「そうだな」
「でも……」

 ふむ、少しは声も出始めたか。
 ならば、先に進めよう。


「……遥か昔、我らエンノアの多くは各地で要職についておった。我らの力がまつりごとに役立てられておった」

「「「「「「「「……」」」」」」」」
「「「「「「「「……」」」」」」」」

「政に関わっておらぬ者もそれぞれの地で幸せに暮らしておった。だが、我らが力を発揮するにつれ、我らを利用していた者共がこの力を恐れるようになり……。次第に疎まれるようになっていった」

「そうだ……」
「ご先祖様は苦しんで……」

「ふむ。皆も知っての通り、その後エンノアは街を追われることになる」


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