30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

満足

<イリアル視点>



「イリアル、あれは何なのだ?」

 先陣から距離を取り、少し落ち着きを取り戻したトゥオヴィが尋ねてくる。

「よく分かりませんが……。魔道具の類でしょうかね」

「魔道具?」

 魔眼をもってしても魔道具の性能までは見抜けない。
 ましてや、この距離だ。
 状況の確認で手一杯なんだぜ。

 まっ、それでも、こうして戦況の推移を見守れるってのは悪くねえだろ。
 魔眼がなきゃ、細かいことなんざぁ全く分かんねえんだからよ。

「武器として使える魔道具、魔法を内包した魔道具、確かにそういう類は存在する。しかし、どれもこれも貴重な品でそう簡単に手に入るものではない。それを、あれほど?」

 さっきの斉射で矢の数は50を数えた。
 1射で複数の矢を撃てる魔道具だとしても、それなりの数をそろえる必要がある。
 十分恐ろしい数だ。

「逃亡続きのワディン騎士が手に入れることなどできるのか?」

「……」

「あり得ない」

 ああ、そうだよな。
 ちょっと信じられないよな。

「しかも、異常なまでの威力」

 それも、その通り。
 宝具に匹敵するような威力だった。

「あのような魔道具、噂にも耳にしたことがない」

「……」

「イリアルはどうだ? 聞いたことがあるか?」

「いえ」

 こっちも初耳で初見だよ。
 
「イリアルも……」

 ある程度情報を持っていた俺でも、こんな魔道具の存在は知らなかったんだ。
 トゥオヴィが知らないのも当然。
 おそらく、メルビンも知らねえだろう。ボスも……。

「とんでもないな」

「ええ。空中で爆裂する矢なんてね」

「防げるだろうか?」

「正面からの攻撃なら、防御も可能かもしれません」

 強固な盾か魔法壁があれば、少なくとも一撃は防げるだろう。
 が、数撃防ぎきれるかというと自信は持てない。

 その上、さっきの爆裂は単純なものじゃなかった。
 爆風が四方八方に拡がり、とんでもない威力を見せていた。
 あの爆裂が多数起こるとなると……。

 全方向の防御が必要になる、か。

「複数回撃たれても?」

「それは……簡単ではありませんね」

「……」

「ただ、あれだけ強力な魔道具です。矢数、弾数には限りがあるはずです」

 そうでないと、困る。
 あんなもん大量に使われたら堪ったもんじゃない。
 ちょっとした兵力差なんて、すぐひっくり返っちまう。

「先刻は結構な数を撃たれたぞ」

「2斉射で100撃程度ですよ」

「まだ終わりではないのでは?」

「どうでしょ? 奴らも今は沈黙してますしね。残数があるとしても、そう多くはないと思いますけど」

 常識的に考えて、発射用の魔道具も矢も大量に持っているはずがないんだ。

「だと良いが」

「ええ」

「……」

 まっ、この場で推測してもしょうがない。
 それより。

「もう少し様子を見たら、本隊に戻って千人長に報告した方がいいですね」

「魔道具には残数がないと言いながら、追撃は失敗すると見てるのだな」

 この流れは、そうなると思うぜ。

「ふふ、まあいい」

「……」

「今回は貴重な魔道具の情報を得られたのだからな」

 王軍は兵数で敵を大きく上回っている。
 この追撃が失敗に終わっても、情報を掴めれば十分。
 次、あるいは、その次の追撃で活かせばいいだけ。
 ってことか。

「良しとしよう」

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