30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

爆散

<イリアル視点>



「良しとしよう。欲には、きりなどないのだからな」

 ああ。
 俺もそう思うぞ。

「……」

 しっかし、今回の作戦は色々と想定外だった。

 あいつの剣と魔法が恐ろしいのは承知してるが、まさか新兵器まで飛び出すとはなぁ。

 ほんと何者だ?
 なんて、何度でも思っちまう。

 って、まあ、この新兵器魔道具があいつと関わりない可能性もあるけどよ。

 それでも。
 エンノアの民がこっちの前に姿を現し。
 かなりの活躍を見せ。

 遠目ながら、あいつの戦う姿も確認できた。
 かなりの情報を得ることもできた。

 で、俺もトゥオヴィ小隊も無事。

 冷静に考えりゃ、何の問題もねえ。
 想定以上の成果を得られたって事実があるだけだ。

 そう。
 魔眼をあいつに使えなかったことを除けば、最高なんじゃねえのか。



********************

<長老ゼミア視点>



「ゼミア様、素晴らしい威力です!」

「ふむ」

 コーキ殿からいただいたこのクロスボウという兵器。
 元々はテポレン山に巣くう魔物から身を護るためにと手渡されたものだ。

「以前とは比べ物になりません」

「そう、じゃな」

 その時は3挺だけ、矢も通常のものであったが。
 非力な者でも簡単に扱え、強弓にも勝る威力を誇るこの魔道具に我らがどれだけ助けられたことか。

 病から救ってもらった上に、食料の援助、魔道具の提供と、我々エンノアがコーキ殿から受けた恩の大きさは計り知れない。

 とても、とても容易く返せるものではないのじゃ。
 であるから、今回の参戦は我らの第一歩であると同時に、コーキ殿に恩を返す絶好の機会でもある。

「これなら、十分やれます」

「……」

 さらに、この流れは概ね預言に記された通り。
 わしが驚くほど、預言通りになっておる。
 ならば、ここで戦わずしてどうする。
 今さら地下に籠り安寧を求めて何になる。

 我らエンノアは流れに沿って動き、流れを損なわぬよう修正しつつ動くのみ。
 とはいえ……。

 預言の存在自体はエンノアに暮らす者なら誰もが知っておるが、その詳細を知るのは一部のみ。
 それゆえ、この動きを疑問に思う者も少なくはない。
 頭が痛いのう。


「ゼミア様?」

「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」
「「「「「「「……」」」」」」」

 新たに提供してもらった50挺のクロスボウと魔法の矢を手に持つ者たち、彼らを指揮するスぺリス。皆がわしの指示を待っておる。

「次の斉射は、いかがいたしましょう?」

「ふむ……」

 コーキ殿から矢数を控えるように言われてはいるものの。
 この流れ、この戦況は……。

 撃つべきじゃろうな。

「もう一度、斉射しようぞ」

「はっ! 皆、構えよ!」

 スぺリスの声に構えを取るエンノアの戦士。
 一糸乱れぬ動きに、この素早さ。
 訓練を続けた成果が出ておる。

「二射目、撃てぇ!!」

 号令と共に撃ち出された魔法の矢が、テポレンの蒼天に美しい弧を描き。

 ドン!!

 バーン!!

 ドガーン!!

 レザンジュ王軍の上方で爆散した。
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