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第8章 南部動乱編
秘密兵器
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50挺のクロスボウと大量の魔法の矢。
これらは日本で購入し改造した物なのだが、これだけの数を手に入れるのはかなり大変だった。どうやっても、金銭的な問題は避けられないからだ。
前世の俺が暮らしていた20年後とは異なり、この時代ではクロスボウの入手自体は比較的簡単ではある。それでも50挺もの数を購入するとなると……。
今はまだ大学生の俺にとって、この負担は大きすぎる。
当然、すぐに支払えるはずもなく、ならばということで、異世界のあれこれを使って資金を工面することになってしまった。
こうした苦労の末、手に入れたクロスボウとその矢に現代日本の知識と魔法を融合した改造を施し、爆散する魔法の矢を作り出したというわけだ。
この改造魔法矢はテポレン山での戦いを前に急遽思ついたものじゃない。実は、前世の俺が考えていた構想を具現化した魔道具になる。そのため、構造も運用もしっかり考慮済み。すぐに実戦投入しても問題はなし、だと思いたい。いや、信じている。
そうは言っても、こちらの世界に現代の技術を持ち込むことに対して、少なくない抵抗を覚えるのも事実。
なので、最初は改造前のクロスボウ3挺をエンノアに提供しただけだった。
その品質と数なら大きな問題はないだろうから。
けど、今回は……。
言い訳できるものではないよな。
「……」
ローンドルヌ渡河のあたりから少しずつ準備をしてきた改造クロスボウ。
これまでも状況次第で実戦投入する気持ちはあったものの、幸か不幸か、その機会は訪れなかった。使用を避けても何とか切り抜けることができた。
ただ、今回は違う。
もう使用を迷う段階を越えている。
俺も覚悟を決めなきゃいけないだろう。
なら、これまでと同じ。
できることをするだけだ。
「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」
「「「「「「「「凄い!!」」」」」」」」
エンノアの皆が興奮している。
尋常ではないほどに。
「……」
今回彼らが協力してくれたのは俺への恩を返すため。
皆が口を揃えてそう言ってくれるものの、理由がそれだけじゃないことを今はもう理解している。
何百年もテポレン山とその地中での生活を余儀なくされたエンノアの民。彼らには理由があって当然なんだ。
それは、この様子からも明らか。
相当な思いが透けて見える。
「これで、エンノアも戦える」
「ああ、外に出れる」
「もう地上の民に侮られることもない」
「やっと、この時が」
「長年の夢が……」
「いや、まだだ」
「本番はここからだぞ」
今にも追撃を仕掛けそうな勢いだな。
けど、ちょっと待ってくれよ。
ここは冷静に動く場面なんだからな。
今回の戦い。
こちらの奇襲を待ち伏せられ、受け身となってしまった今の状況は想定外のもの。
魔法矢を使って上手く対処できたものの、想定外であることに変わりはない。
もちろん、ここからの追撃も想定にはない。
今のこの勢いで追撃すれば、目の前の王軍に大きな損害を与えることも可能かもしれないが、想定外に想定外を重ねることになってしまう。
戦には勢いも必要とはいえ、重要なのは大局だ。
局地的な勝利は、時に棘となり突き刺さるもの。
ならば、ここにある勝利は?
大局の好転につながるのか?
おそらく。
この後には、もっと大きな戦いが待っているだろう。
それに備えるべきでは?
「……」
ここで退けば、魔法矢についてはごまかせるかもしれない。
物量に限りがあると誤解させることも。
それに何より。
王軍が混乱状態にある今なら、敵に知られることなく地下に戻ることができる。
やはり、一度地下に戻り今後の策をねった方がいい。
「エンノアの皆さん、もう十分です。ここで退いてください」
「コーキ殿は?」
そう問い返すゼミアさん。
こちらの意図を汲み取ってくれている様子。
「ここで殿を務めた後、エンノアに戻ります」
「……」
「今が潮時です。皆さんは戻ってください」
その後、エンノアの民、ワディン騎士と順次撤退を続け、残るは30名余り。
眼前の王軍は、いまだ混乱状態から完全には脱していない。
逃走を始める兵も見える。
なんとか無事に終えることができそうだな。
ただ、問題は……。
「セレス様、もう戻ってください」
幸奈が地下へ戻ってくれないことだ。
これらは日本で購入し改造した物なのだが、これだけの数を手に入れるのはかなり大変だった。どうやっても、金銭的な問題は避けられないからだ。
前世の俺が暮らしていた20年後とは異なり、この時代ではクロスボウの入手自体は比較的簡単ではある。それでも50挺もの数を購入するとなると……。
今はまだ大学生の俺にとって、この負担は大きすぎる。
当然、すぐに支払えるはずもなく、ならばということで、異世界のあれこれを使って資金を工面することになってしまった。
こうした苦労の末、手に入れたクロスボウとその矢に現代日本の知識と魔法を融合した改造を施し、爆散する魔法の矢を作り出したというわけだ。
この改造魔法矢はテポレン山での戦いを前に急遽思ついたものじゃない。実は、前世の俺が考えていた構想を具現化した魔道具になる。そのため、構造も運用もしっかり考慮済み。すぐに実戦投入しても問題はなし、だと思いたい。いや、信じている。
そうは言っても、こちらの世界に現代の技術を持ち込むことに対して、少なくない抵抗を覚えるのも事実。
なので、最初は改造前のクロスボウ3挺をエンノアに提供しただけだった。
その品質と数なら大きな問題はないだろうから。
けど、今回は……。
言い訳できるものではないよな。
「……」
ローンドルヌ渡河のあたりから少しずつ準備をしてきた改造クロスボウ。
これまでも状況次第で実戦投入する気持ちはあったものの、幸か不幸か、その機会は訪れなかった。使用を避けても何とか切り抜けることができた。
ただ、今回は違う。
もう使用を迷う段階を越えている。
俺も覚悟を決めなきゃいけないだろう。
なら、これまでと同じ。
できることをするだけだ。
「「「「「「「「おお!!」」」」」」」」
「「「「「「「「凄い!!」」」」」」」」
エンノアの皆が興奮している。
尋常ではないほどに。
「……」
今回彼らが協力してくれたのは俺への恩を返すため。
皆が口を揃えてそう言ってくれるものの、理由がそれだけじゃないことを今はもう理解している。
何百年もテポレン山とその地中での生活を余儀なくされたエンノアの民。彼らには理由があって当然なんだ。
それは、この様子からも明らか。
相当な思いが透けて見える。
「これで、エンノアも戦える」
「ああ、外に出れる」
「もう地上の民に侮られることもない」
「やっと、この時が」
「長年の夢が……」
「いや、まだだ」
「本番はここからだぞ」
今にも追撃を仕掛けそうな勢いだな。
けど、ちょっと待ってくれよ。
ここは冷静に動く場面なんだからな。
今回の戦い。
こちらの奇襲を待ち伏せられ、受け身となってしまった今の状況は想定外のもの。
魔法矢を使って上手く対処できたものの、想定外であることに変わりはない。
もちろん、ここからの追撃も想定にはない。
今のこの勢いで追撃すれば、目の前の王軍に大きな損害を与えることも可能かもしれないが、想定外に想定外を重ねることになってしまう。
戦には勢いも必要とはいえ、重要なのは大局だ。
局地的な勝利は、時に棘となり突き刺さるもの。
ならば、ここにある勝利は?
大局の好転につながるのか?
おそらく。
この後には、もっと大きな戦いが待っているだろう。
それに備えるべきでは?
「……」
ここで退けば、魔法矢についてはごまかせるかもしれない。
物量に限りがあると誤解させることも。
それに何より。
王軍が混乱状態にある今なら、敵に知られることなく地下に戻ることができる。
やはり、一度地下に戻り今後の策をねった方がいい。
「エンノアの皆さん、もう十分です。ここで退いてください」
「コーキ殿は?」
そう問い返すゼミアさん。
こちらの意図を汲み取ってくれている様子。
「ここで殿を務めた後、エンノアに戻ります」
「……」
「今が潮時です。皆さんは戻ってください」
その後、エンノアの民、ワディン騎士と順次撤退を続け、残るは30名余り。
眼前の王軍は、いまだ混乱状態から完全には脱していない。
逃走を始める兵も見える。
なんとか無事に終えることができそうだな。
ただ、問題は……。
「セレス様、もう戻ってください」
幸奈が地下へ戻ってくれないことだ。
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