30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

止まれ!

 ほんの僅かな緩み。
 ただ、極限の場においては致命的。

 剣先がずれ。

 キン!

 走った剣身は、一方の剣を弾いたのみ。
 斬り裂けていない。
 カウンターで敵を倒すどころじゃない。

 その上、もう一方の剣が眼前に。

「やめてぇ!」

 バランスを崩しながらも、首と顔を振るように傾ける。

 シュン!

 風切り音を立て剣身が通過。
 顔の皮膚一枚のところを。

「……」

 一筋の傷を頬に受けてしまった。
 が、それだけのこと。
 あの体勢で躱せれば十分だ。

 なんて、安心してる場合じゃない。
 最前弾いた剣がまた迫りつつある。
 今避けたばかりの剣も再び襲ってくるだろう。

「だめぇ! 止まって!」

 とはいえ、もう足もとは修正済み。
 ならば、打ち砕けばいい。

「止まれぇぇ!!!」

 幸奈の叫びと共に走らせた剣。
 そこに。

「……!?」

 敵の剣が来ない。
 1振りだけじゃない。
 両剣士の剣がやって来ない!

 それどころか。

「……」

 俺の剣の先には、驚愕の光景が広がっていた。

「お願い、止まって……」

 幸奈の言葉通り。

 敵の剣が力を失くし。
 剣身が宙に静止。

「……」
「……」

 2本の剣が完全に止まり、剣士も動きを止めてしまった。

「えっ!?」
「なっ!?」
「!?」

 アルとシアは驚愕の表情。
 幸奈自身も戸惑いを見せている。

 当然、俺も。

「うっ……」
「うぅ……」

 俺の目の前で静止している剣士2人も、さすがに平静ではいられない。
 今まで何があっても無言、無表情だった彼らの表情が崩れているのだから、一目瞭然だ。

 現場にいる全員が喪心状態。
 動ける俺たちまでが、何が起こったのか理解できず固まっている。

「なっ、何が!?」

 困惑の声が上がったのは、15メートルほど離れた茂みの中。
 そうか。
 地魔法使いは茂みに隠れていたんだな。

 俺も混乱中だが、それでもここは。
 やつから仕留めてやろう。

「雷撃!」

 放たれた紫電が地を這うように接近するも、地魔法使いは気づいていない。
 こうなると、的中は必然。

「ぎゃあぁぁ!!」

 地魔法使いが茂みから姿を現し、苦悶の表情で地面に倒れ伏した。

「コーキさん!」
「先生!」

 途端に、皆に言葉が戻ってくる。

「何をしたんですか?」

 俺にも分からない。
 幸奈の言葉と同時に、敵の剣士2人が動きを止めたという事実以外は。

 ただ今は、考えるより始末が先。

「……」

 魔法でぬかるみを固め、さらに土を放出することで足もとを隆起させる。
 よし、これで脱出成功だな。

「……」
「……」

 こっちは体勢を整えられたが、剣士2人は依然動けない。
 剣を振るおうとした体勢のまま固まっている状態だ。

「……」
「……」

 彼らの連携攻撃は敵ながら素晴らしいものだった。
 エビルズピーク以降に遭遇したレザンジュ兵の中では、最も手強い相手だった。

 その上、さっき見せていた動揺も顔から消し既に能面に戻っている。
 ほんと、恐ろしい敵だよ。

 とはいえ、ここまでだ。

「コーキさん、捕らえて尋問した方がいい」

「連れて行きましょう」

「……」

 尋問も1つの手ではある。
 が、無駄だろうな。
 こいつらが口を割るとは思えない。
 それに捕虜にするとはいえ、地下を見せるべきじゃないだろ。


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