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第8章 南部動乱編
複雑
いつまで経っても消えることのない違和感。
セレスとしての同一性の欠如。
自分の記憶に対する曖昧な感覚。
お父様に対する異常なほどの思い。
シアさん、アル君のことを呼び捨てにした時の奇妙な忌避感。
そして、コーキさんに関する記憶と感情。
何かがおかしい。
きっと、微妙に齟齬があるんだと思う。
「……」
何より。
あの時、あの瞬間。
コーキさんを絶対に失いたくないと、強烈に頭の中を過った思いは、決して神娘セレスティーヌのものじゃなかった。
「コーキさん……」
ふたりで話がしたい。
わたしの思いを伝えてみたい。
でも、今は……。
「……」
落ち着いたら話そう。
怖がってないで、話してみよう。
そうすれば、きっと……。
*******************
<イリアル視点>
「1万とはまあ、豪勢なことですねぇ」
テポレン山の麓に布陣した1万の将兵。
今にも山狩りを行いそうな熱を帯びた大軍が目の前に広がる眺めは圧巻だ。
「……」
「ワディナートにいる将軍の考えでしょうか?」
「うむ。あるいは、王家の意向かもしれぬ」
「確かに……」
「100程度の相手に1万の派遣だからな」
そうだよなぁ。
あの将軍の独断とも考えづらいよなぁ。
けど、ここまでの援軍を送るってことは。
「上は、是が非でも神娘を手に入れたいみたいですね」
さすがに1万は多すぎる。
ただ、これで、ほぼ決まりだろう。
戦闘における勝利はまず堅い。
敗北なんて、万に1つも起こりえない。
なのに、楽勝とは言い切れないってのが……。
テポレン山の山道は、言うまでもなく狭いもの。
1万の兵が広がって行軍できるような道など存在しない。
必然、隊列は縦に長くなってしまう。
となると、実際に接敵する兵数はそう多くない。
その状態であいつらの相手をするんだ。
あのバケモンにダブルヘッド、それに凄まじい魔道具を。
簡単じゃないわな。
まっ、大局は動かしようもねえけどよ。
「イリアル、どう思う?」
「まず勝てるでしょうけどね」
「問題は新兵器か?」
「ええ、あれは怖ろしいですよ。ただ、あの数での継戦能力を考えると」
「1万の相手ではない?」
「普通なら、その通りです」
「だが、今回は普通じゃない。1万でも簡単ではない。そう考えているのだな?」
「うーん、どうなんでしょ?」
どうにも、読み切れねえなぁ。
ややこしい局面だぜ。
「難しいか?」
「……」
結局は魔道具の数次第。
勝利は堅いだろうが、内容的には苦戦も楽勝も考えられる。
場合によっちゃあ、こっちが圧勝して、エンノアの惨敗という線も……。
そう。
エンノアの惨敗だ。
そいつぁ、困っちまうぞ。
はぁぁ。
厄介なことだぜ。
勝利が作戦の成功に繋がるとも限らないってよ。
面倒すぎるだろ。
なんで、俺ばかりこんな仕事を……。
とにかくだ。
あのバケモンが亡くなり、エンノアが惨敗するシナリオだけは避けなきゃいけねえ。
とはいえ、どこまで仕込めばいいものだか?
っとに、やってらんねえぜ。
セレスとしての同一性の欠如。
自分の記憶に対する曖昧な感覚。
お父様に対する異常なほどの思い。
シアさん、アル君のことを呼び捨てにした時の奇妙な忌避感。
そして、コーキさんに関する記憶と感情。
何かがおかしい。
きっと、微妙に齟齬があるんだと思う。
「……」
何より。
あの時、あの瞬間。
コーキさんを絶対に失いたくないと、強烈に頭の中を過った思いは、決して神娘セレスティーヌのものじゃなかった。
「コーキさん……」
ふたりで話がしたい。
わたしの思いを伝えてみたい。
でも、今は……。
「……」
落ち着いたら話そう。
怖がってないで、話してみよう。
そうすれば、きっと……。
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「1万とはまあ、豪勢なことですねぇ」
テポレン山の麓に布陣した1万の将兵。
今にも山狩りを行いそうな熱を帯びた大軍が目の前に広がる眺めは圧巻だ。
「……」
「ワディナートにいる将軍の考えでしょうか?」
「うむ。あるいは、王家の意向かもしれぬ」
「確かに……」
「100程度の相手に1万の派遣だからな」
そうだよなぁ。
あの将軍の独断とも考えづらいよなぁ。
けど、ここまでの援軍を送るってことは。
「上は、是が非でも神娘を手に入れたいみたいですね」
さすがに1万は多すぎる。
ただ、これで、ほぼ決まりだろう。
戦闘における勝利はまず堅い。
敗北なんて、万に1つも起こりえない。
なのに、楽勝とは言い切れないってのが……。
テポレン山の山道は、言うまでもなく狭いもの。
1万の兵が広がって行軍できるような道など存在しない。
必然、隊列は縦に長くなってしまう。
となると、実際に接敵する兵数はそう多くない。
その状態であいつらの相手をするんだ。
あのバケモンにダブルヘッド、それに凄まじい魔道具を。
簡単じゃないわな。
まっ、大局は動かしようもねえけどよ。
「イリアル、どう思う?」
「まず勝てるでしょうけどね」
「問題は新兵器か?」
「ええ、あれは怖ろしいですよ。ただ、あの数での継戦能力を考えると」
「1万の相手ではない?」
「普通なら、その通りです」
「だが、今回は普通じゃない。1万でも簡単ではない。そう考えているのだな?」
「うーん、どうなんでしょ?」
どうにも、読み切れねえなぁ。
ややこしい局面だぜ。
「難しいか?」
「……」
結局は魔道具の数次第。
勝利は堅いだろうが、内容的には苦戦も楽勝も考えられる。
場合によっちゃあ、こっちが圧勝して、エンノアの惨敗という線も……。
そう。
エンノアの惨敗だ。
そいつぁ、困っちまうぞ。
はぁぁ。
厄介なことだぜ。
勝利が作戦の成功に繋がるとも限らないってよ。
面倒すぎるだろ。
なんで、俺ばかりこんな仕事を……。
とにかくだ。
あのバケモンが亡くなり、エンノアが惨敗するシナリオだけは避けなきゃいけねえ。
とはいえ、どこまで仕込めばいいものだか?
っとに、やってらんねえぜ。
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