30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い 21

「止めろ! あいつらを止めるんだぁ!!」

「駄目です、止まりません! あぁぁ……」

 さらに剣を振るい続けると。
 敵先陣の後方、A地点付近に。

 ドーーン!!
 ドガーン!!

 放物線を描く魔法矢が舞い降りてきた。

 ドゴーーン!!

「「「「「「「「「「うぅぅ……」」」」」」」」」」

 降り注ぐ矢の数は少なめ。
 が、現状での援護射撃としては完璧だ。

 よし!

「ノワール、進めるぞ!」

「オン!」

 ノワールとともに、さらに敵陣の奥へ。

 ザン、ザシュッ!
 ザシュッ!
 シュッ!

「グオォォォ!!」



 俺とノワールが軽装歩兵部隊を斬り裂くこと数分。
 士気の高かった敵軍の喊声が完全に止み、歩兵たちが浮足立ってきたところで。

 ドッゴーーン!!!

 ダッ、ドーン!!!

 ドガーン!!

 ダーーン!!!

 地面を揺らすような爆発。
 轟音が左右の樹林から同時に響き渡る。

「「「「「「「「「「ううぅ……」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「ああぁ……」」」」」」」」」」

 樹林内から聞こえてくるのは無数のうめき声。

「左右の爆発は完璧だぞ、コーキ!」

 ヴァーンの声も弾んでいる。

「了解!」

 まさに最高のタイミング。
 ほんと、上手くいき過ぎて怖いくらいだ。


「くそっ! 退くな! 退くんじゃない!」

「「「「「「……」」」」」」

 左右の敵兵の状況。
 眼前の軽装歩兵の惨状。

 これはもう……。
 敵軽装歩兵部隊による速攻を防ぎ切ったと考えていいのでは?

「「「「「「……」」」」」」
「「「「「「ぅぅ……」」」」」」

 間違いない。
 この攻防はワディンの勝ちだ。

「敵に後ろを見せるなぁ! 留まれぇ!!」

「しかし!」

「我らには大軍が控えている! 少数の敵に怯える必要はない!」

「「「「「「……」」」」」」

「戦うんだ!」

「「「「「「……」」」」」」

 A地点付近に立っている歩兵はごく僅か。
 A地点の下方には先陣の残兵がいるものの、彼らの戦意は既に低く反応も鈍い。

 このまま下に攻め入って残兵を片付けるべきか?
 それとも、いったん自陣に退くべきか?

「……」

 残兵の下方には、当然のことながら無数の後発隊が控えている。
 騎馬隊も待機したまま動いていない。

 なら、やはりここは……。


「次陣の準備ができたぞ!」

「加勢が来る!」

「ああ」

「よーし! レザンジュの勇士よ、立ち上がれ!」

「「「「「「「おう!!!」」」」」」」

 戦意喪失気味だった歩兵部隊に活気?
 士気が戻っている。

「……」

 いくら大軍とはいえ、ここまで士気を保てるとは?
 どう考えても普通じゃない。

 指揮スキルや洗脳スキルでも使ってるのか?
 先発隊の隊長クラスにスキル持ちは見当たらなかったが……。

「「「「「「おおぉ!!」」」」」」

 ここで考えても意味がないな。
 そんなことより、今は。

「クウーン?」

 ああ、そうだ。
 まだ戻れそうにないぞ。

「やれるな、ノワール?」

「オン!」

 なら、もうひと暴れしよう。
 まずは、A地点すぐ下の残兵からだ。

「雷波!」

「オオーン!!」




 ザシュッ! シュッ!
 ザン! ドスッ!

 剣身が敵を斬り裂く音、ノワールの爪が敵を屠る音。
 それだけが耳に入ってくる。
 そんな時間がしばらく続いた後。

「「「「「「「ああぁぁ!!」」」」」」」

「「「「「「「おおぉぉ!!」」」」」」」

 突然、後方から悲鳴のような怒号のような喚声があがった。
 その驚声に剣を止め、坂上を振り返ると。
 ワディン、エンノアの本陣に……。

「敵兵!?」

「後ろ、後ろを見ろ! 王軍が後ろに!」

「王軍兵だぁ!」

 何!?

「進めぇ!!」

「「「「「「「おう!!」」」」」」」

「「「うわぁぁ!!」」」

「西から王軍が現れた!」

 西から?
 オルドウ方面から!?

「コーキ!!」

 走り寄ってくるヴァーンとアル。

「まずいぞ!」

「コーキさん、本陣の背後を攻められてる!」

 くっ!
 西の獣道から王軍が現れたのか!?


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