30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い  22

 戦闘が始まる前までは、オルドウ方面に敵の姿などなかった。
 気配も全く感じなかった。

 なのに……。

 完全に想定外だ。
 いや、俺のミスだ。

「くっ!」

 戦況は刻々と変化するもの。
 開戦から2刻以上経過しているのだから、気配のなかった西側に王軍が現れても不思議じゃない。

 そもそも、王軍がテポレン山を迂回し南の街道からオルドウ経由で現れる可能性は十分に考えられることだった。

 そう。
 おそらく数日前から、この挟撃は計画されていたんだろう。

 ……視野狭窄か。

 ここまでの戦い、策が嵌まり過ぎていた。
 それで調子に乗ってしまったと?

 情けない。
 が、今は悔やむより。

「援軍だ! 援軍が到着したぞ!」

「これで東西から挟み撃てる!」

 どう対処すべきかが問題だろ。

「いけるぞ!」

「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」

「進めぇ!!」

「「「「「「「おおう!!」」」」」」」

 敵、軽装歩兵隊から溢れ出る熱気。
 完全に勢いを取り戻している。

 それでも……。

「コーキ!?」

 西側の道は、東の山道よりさらに細くて険しい獣道。
 大軍で一斉に攻めることなど不可能事。
 横列は2人、3人でも厳しいはず。

 なら。

「こっちは俺とノワールで何とかする。ヴァーンとアルは陣に戻って西の王軍を頼む!」

 ヴァーンとアルが戻れば。
 ワディンの精鋭と魔道具隊がいれば、対処できる。

「おう!」
「分かった!」

「魔道具隊には西側に攻撃を集中するよう伝えてくれ。魔法矢の残量も今は気にする必要はないと」

「了解だ!」

「フォルディさん、念動力隊は10歩後退して待機。状況に応じて左右の樹林の爆弾を起動してください」

「分かりました!」

 東の山道と樹林の地中に設置した魔法爆弾の数はそれほど多くはない。
 無計画に使えばすぐに使い果たしてしまう程度だ。
 けれど、今は出し惜しみしている場合じゃない。
 魔法矢、魔法爆弾、何でも使ってこの状況を打開しなければ、先の戦いなど存在しないのだから。




「撃てぇ!!」

 ドーーン!!

 ドガーン!!

「「「「「うわぁ!!」」」」」

「な、何だ、これは!?」

「「「「「うぅぅぅ」」」」」

 坂上から聞こえてくる轟音。
 西側の王軍に対しては、魔道具隊の魔法矢が効力を発揮しているようだ。
 まっ、当然か。
 あの魔法矢を初めて受けて平気なわけがない。

「続けて構えぇ! 撃てぇ!!」

 ドーーン!!

 ドガーン!!

「「「「「ぎゃあぁぁ……」」」」」


 今現在。
 坂上の自陣では、魔道具隊、魔法隊、それにヴァーンやワディン騎士たちが西側の王軍に応戦している。

 東側山道の前線には俺とノワール。
 俺たちの後ろ、左右の樹林横にはワディン騎士に護られた念動力隊。

 現状は兵を三箇所に分散している状態。
 かなりアンバランスな状態だが。
 ぎりぎりの所で踏ん張れそうか?

「……」

 俺とノワール次第かもしれないな。
 士気の戻った軽装歩兵部隊をここで食い止めることができれば、状況も好転するはず。

 ただし、問題は敵の騎馬隊だ。
 今は動きを止めているあいつらが動き出すと厄介だぞ。

 どういう理由かは分からない。
 が、頼む。
 しばらくは、そのままでいてくれ。


「いけぇ、進めぇ!!」

「西に後れを取るなぁ!!」

「「「「「「「「「「「おおっ!!」」」」」」」」」」

 目の前に次々と湧いてくる王軍兵。
 ここまでかなりの敵兵を倒してきたというのに、この兵数だ。
 やはり、1万という数はとんでもない。

 けど、今の俺は退けないんだよ。
 だからな。
 ノワールとともに相手してやる。


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