30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い 31

「これは、魔物たちの声か?」
「ああ、間違いない。魔物だ!」

 王軍兵たちも気づいたようだ。

「よし!」
「いいぞ!」

 が、兵たちの顔には驚きも恐れもない。
 それどころか。

「時が来たぞ!」
「ああ、ここからが勝負だ!」
「そうだ、ここからだ!」

 衰えていた士気が戻っている。

「進軍だぁ! 進めぇ!」

「「「「「「「おおぉぉ!」」」」」」」

 後退していた王軍歩兵隊の顔には、溢れんばかりの闘志。
 ということは、やはり……。

「騎馬隊もだ。歩兵隊に続けぇ!!」

 くっ!
 勢いを取り戻した上に騎馬隊まで?
 ずっと沈黙していたというのに、ここで出るのか?

「「「「「「「おおう!!」」」」」」」

 まずい!
 何としてもここで止めなければ!





 ザン、ザン、ザシュッ!

「雷波!」

「「「「「ドーン!!」」」」」
「「「「「ドゴーン!!」」」」」

「「「「「ぎゃぁぁ!」」」」」
「「「「「ああぁぁ!」」」」」

 俺の剣と魔法、ノワールの剛爪に牙、さらに魔法矢。
 怒涛のような攻撃を受け、悲鳴と叫声と怒号が入り混じる前線。

 なのに、止まらない。

 ザン、ザン、ザン!

 ガリッ! ガシュッ!

「オオォォ!!」

「「「「「うわぁぁ!」」」」」

 完全に狂乱状態と化している。
 それでも、王軍の勢いに陰りは見えない。
 身に負う傷など気にもせず、まるで死兵のように攻め寄せてくる。

 おかしい。
 あり得ない。
 仮に魔物の襲来が王軍の誘導だとしても、ここまで狂気じみた攻めは……。

 やはり、何らかの魔道具?
 それとも、スキルを使っている?

「いけぇ!」
「「「「「おう!!」」」」」

 キン、キン、ザシュッ!!

「っ!」

 こうなるともう……。
 完全には防ぎきれない。

 なら、いったんB地点まで退いて、爆弾を使うべき?
 それとも……。

 ザン、ザシュッ!

 逡巡しながら剣を振るっていると。

「「「グゥギャァァ!!」」」
「「「グゥオォォォ!!」」」

 後ろから咆哮!

「「「グルゥオォォ!!」」」

 ついに魔物が姿を現した!
 しかも、多種の魔物が一斉に!

「「「「「オオォォ!!」」」」」

 ウルフ系が多いのか?

 っ!
 ブラッドウルフも!

「「「「「グオォォォ!!」」」」」

 ブラッドウルフを先頭に魔物の一団が駆け上がってくる。
 王軍には目もくれず、本陣前へ進んでいる。
 凄まじい勢いの突進だ!

「撃てぇ!!」

 ドン!
 ドゴン!
 ドガン!!

 そこに放たれた魔法矢。

「「「ファイヤーボール!」」」
「「「ファイヤーアロー!」」」

 さらに、魔法攻撃も。
 魔物の群れに炸裂!

「「「アアァァ!!」」」
「「「オオォォ!!」」」

 が……。

 格下のウルフ系を数頭を倒したのみ。
 ブラッドウルフには大して効いていない。
 やはり、対人用兵器じゃ威力が足りないのか?

 ……まずいぞ。

 本陣を護るワディン騎士は少数、飛び道具の効果も期待ほどではない。
 こうなると、対処は簡単じゃないだろう。

 長くはもたない可能性も……。

 なら、すぐにでも援護に向かうべき。
 ただ、こっちも。

「進めぇぇ!」

「「「「「「「おう!!」」」」」」」

 手が離せない。
 すぐには離脱できない。

 どうする?
 どうすればいい?


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