30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い 42

 なら、ここでさらにもう一発。
 といきたいところだが、威力増加タイプは2つしか設置していない。

 威力増の特別製爆弾は仕掛けが難しいため、この短時間での量産ができなかったんだ。

 ただし、通常型は本陣近くにも設置済み。
 それは、フォルディさんも理解している。 
 もちろん、発動のタイミングも。
 だから、こうなる。

「起動!」

 ドーン!
 ドガーーン!

「起動!」

 ドガン!
 ドゴーン!

 増加タイプと比べると寂しく感じるものの、決して威力が低いわけじゃない。
 実際、王軍の混乱に拍車がかかっているからな。

 さて、ここまでの発動はほぼ想定通り。
 次は第二弾。これが仕上げの一発になるかもしれない。

 あれを使う時がきたようだ。

「……」

「……」

 迷いを断ち切るように、素早い動作で収納から球形物体を取り出し。
 ソフトボール大のそれを片手に坂を下る。
 5歩10歩と下り続け、最適と思われる場所へ。

 ここでいいだろう。

 球形物体を右手に持ち直し。
 魔力を込め、大きく振りかぶって……投擲!

 強化済みの俺の腕から放たれた球体が蒼天を翔け、敵本陣に吸い込まれていく。
 王軍兵の密集する本陣の中央を貫いた。
 瞬間。

 ドッゴォォォーーーン!!!

 巻き起こる爆風と爆音。
 威力増加タイプを越える大爆発だ。

「「「「「「「「うぎゃあぁぁ!!」」」」」」」」
「「「「「「「「ああぁぁぁ!!」」」」」」」」

 今投擲した物体は接触発動型の超高威力爆弾になる。
 念動発動型とは異なり扱いが難しいため、魔力で爆弾をコーティングできる者以外は使えない。ワディン、エンノア軍で使えるのは俺のみ。もちろん、剣姫なら使えるだろうが。

 そんな大爆発と衝撃波を受けた王軍兵が無事なわけがない。

「「「「「「「「ぅぅぅ……」」」」」」」」
「「「「「「「「ぁぁぁ……」」」」」」」」

 爆風によって砂煙が吹き荒れる中、多くの者は倒れ伏し。
 難を逃れた者も呆然と立ち尽くすばかり。
 
 やはり、凄まじいまでの殺傷力……。


「今の魔法爆弾、とんでもねえぞ」

「コーキさんの魔道具はどれも特別だけど、この爆発は恐ろしいぐらいだな」

 坂を下り傍らにやって来たヴァーンとアルの顔には恐怖が浮かんでいる。
 それも当然、か。

「……」

 正直、こいつは使いたくなかった。
 魔法矢と設置爆弾を使っておきながら、今さらだとは思うが……。
 できることなら使わずに戦いを終えたかった。 
 けど、出し惜しみして戦に敗れるなんて本末転倒だろ。

 護るべき者を護れない選択なんて、許せるわけがない。
 優先順位は間違えちゃいけない。

 だったら、最後の切り札として使うだけ。


「もう一発いっとくか?」

「どうする、コーキさん?」

「……」

 現状は……。
 先陣は壊滅、中陣も瓦解し潰走している。
 本陣も爆撃を受け、崩れつつある。
 切り札を使うまでもない。

「爆弾は必要ないだろ」

「まあな。けどよ、とどめは必要だぜ」

「分かってる」

 ここまで近づけば、完全に射程圏内。
 魔法で十分だ。

「雷撃!」
「雷撃!」
「雷撃!」

 さっきは敵の本陣前までしか届かなかった雷撃が本陣に突き刺さる。

「雷撃!」
「雷撃!」
「雷撃!」

「「「ぎゃあぁ!!」」」

「雷撃!」
「雷撃!」
「雷撃!」

「「「ああぁ!!」」」

「駄目だ。もう駄目だ!!」
「逃げるぞ!」
「ああ、逃げるんだ!!」
「退却だぁ!!」

 レザンジュ本隊の軍としての機能が完全に停止してしまった。


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